守護者は眠る
Episode7
2
『おー?大丈夫かァ?』
大丈夫な訳がない。
(急に抱えるなし………………。)
僕は昨日同様、鳥居の前で地面とにらめっこしていた。爪は短く切ってきたので今日は湿った土は入ってこない。
『よォ、云。』
彼が誰かに声をかけた。誰だろうと彼が手を振る方向に顔を上げた。
『何やら機嫌は直ったらしい。………ふむ、何やら再び連れて参ったらしい。』
(うわぁ、もっと怪しいヒトだ………。)
話し方は彼以上に古臭い……何言ってるのかわからないし。
服装とお面が彼同様で、髪も同じくして黒髪ストレート。彼より長めではあるが。…性別は女の人だろう。少し声が低めの女性、みたいな。
あまりにじっと見過ぎていたせいか、彼女は僕の方へ向きを変えると、興味深そうに近付いて来た。
『…やや。一昨日だったか、大木の切り株の傍で長く立ち尽くしているのを見た。昨日もここで話していたな。』
(ひっ……話しかけられた…っ!)
『…ふむ。私と話すのは恐いか。私に話しかけられたのが怖いか。』
(このヒトも心を読むのかよ…?!)
『そう、読む。それを詠もうか?歌は唄わぬが詩は詠む。』
(まじで何言ってるの…?!)
冷や汗が頬を伝い、湿った土の上に落ちて、消えた。
『まじ…まじか…ふむ。いつの時代かの人が言った。“ほんに男猫を抱いて見ぬ、まじな心を知りながら”…と。』
そろそろ限界を感じてこちらのやり取りを面白そうに見ている彼に目で助けを求めた。
『俺と話しているわけじゃねェんだ。そろそろ勘弁してやれ。』
流石だ、すぐに僕が言わんとしている事に気が付いた彼が笑いながら言うと、彼女は2、3歩ほど僕から離れてくれた。
『ふむ…遊びはここまでにしてやろう。というか癖になってしまっていてな…言葉遊びが。』
「遊びなの?!」
…随分とたちが悪い趣味だ。
『おや、やっと声が聞けたな。聴けたし、利けたぞ。』
……………本当に癖らしい。全く耐性のついていない僕にとっては少し…いや、とても迷惑以外のナニモノでもない。
ゲッソリして、ニの句が継げない僕をさて置いて怪しい彼女はヒラヒラと手を振る。
『では、また話そう。今日は用がある。』
「あっ、ハイ。」
ついつい返事をしたけど、悪いがもう話したくはない…。
森の奥へ消えていった彼女を見送ると彼は行くぞ、と僕を呼んだ。
やっと立ち上がって名前を聞こうと思っていたのを思い出す。
「あ、うん。…待って、その前に名前…教えて欲しい。僕はミハル!」
僕は地面にしゃがみ込み、“瑞玄”と指で書いてみせた。
一瞬不思議そうにした彼はいつもの笑顔を見せ、隣にしゃがんで言う。
『そうか、ミハル…瑞玄な!俺はカヤだ、漢字は………こう。』
と、同じようにして、僕の名前の隣に“乎”と書いてくれた。
カヤ………乎………………!
僕は嬉しくて、何度も彼の名前を心で繰り返し言ったのだった。
『おー?大丈夫かァ?』
大丈夫な訳がない。
(急に抱えるなし………………。)
僕は昨日同様、鳥居の前で地面とにらめっこしていた。爪は短く切ってきたので今日は湿った土は入ってこない。
『よォ、云。』
彼が誰かに声をかけた。誰だろうと彼が手を振る方向に顔を上げた。
『何やら機嫌は直ったらしい。………ふむ、何やら再び連れて参ったらしい。』
(うわぁ、もっと怪しいヒトだ………。)
話し方は彼以上に古臭い……何言ってるのかわからないし。
服装とお面が彼同様で、髪も同じくして黒髪ストレート。彼より長めではあるが。…性別は女の人だろう。少し声が低めの女性、みたいな。
あまりにじっと見過ぎていたせいか、彼女は僕の方へ向きを変えると、興味深そうに近付いて来た。
『…やや。一昨日だったか、大木の切り株の傍で長く立ち尽くしているのを見た。昨日もここで話していたな。』
(ひっ……話しかけられた…っ!)
『…ふむ。私と話すのは恐いか。私に話しかけられたのが怖いか。』
(このヒトも心を読むのかよ…?!)
『そう、読む。それを詠もうか?歌は唄わぬが詩は詠む。』
(まじで何言ってるの…?!)
冷や汗が頬を伝い、湿った土の上に落ちて、消えた。
『まじ…まじか…ふむ。いつの時代かの人が言った。“ほんに男猫を抱いて見ぬ、まじな心を知りながら”…と。』
そろそろ限界を感じてこちらのやり取りを面白そうに見ている彼に目で助けを求めた。
『俺と話しているわけじゃねェんだ。そろそろ勘弁してやれ。』
流石だ、すぐに僕が言わんとしている事に気が付いた彼が笑いながら言うと、彼女は2、3歩ほど僕から離れてくれた。
『ふむ…遊びはここまでにしてやろう。というか癖になってしまっていてな…言葉遊びが。』
「遊びなの?!」
…随分とたちが悪い趣味だ。
『おや、やっと声が聞けたな。聴けたし、利けたぞ。』
……………本当に癖らしい。全く耐性のついていない僕にとっては少し…いや、とても迷惑以外のナニモノでもない。
ゲッソリして、ニの句が継げない僕をさて置いて怪しい彼女はヒラヒラと手を振る。
『では、また話そう。今日は用がある。』
「あっ、ハイ。」
ついつい返事をしたけど、悪いがもう話したくはない…。
森の奥へ消えていった彼女を見送ると彼は行くぞ、と僕を呼んだ。
やっと立ち上がって名前を聞こうと思っていたのを思い出す。
「あ、うん。…待って、その前に名前…教えて欲しい。僕はミハル!」
僕は地面にしゃがみ込み、“瑞玄”と指で書いてみせた。
一瞬不思議そうにした彼はいつもの笑顔を見せ、隣にしゃがんで言う。
『そうか、ミハル…瑞玄な!俺はカヤだ、漢字は………こう。』
と、同じようにして、僕の名前の隣に“乎”と書いてくれた。
カヤ………乎………………!
僕は嬉しくて、何度も彼の名前を心で繰り返し言ったのだった。
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