守護者は眠る
Episode5
5
『ちなみにここはさっき言った色民が住む村に行く為に通る門の1つだ。』
「なるほど、だからただの人間を寄せ付けないようにしてるんだ。」
と、納得するものの再び疑問。
「あれ、それならここには神様はいないの?…それとも色民主が神様なのかな。」
『主サマは主サマであって神じゃねェよ。………お前ら人間の言うような神なんぞ存在しない。』
ふん、と彼は鼻で笑った。
それなら全国にある神社はなんなのか?神など存在しないというなら意味のない建造物ということになる。
「ねぇ、僕たち人間のいうような神様って何なんだろう?」
僕の言葉に彼は少し考えるようにして空を見上げた。
『………………どっかの人間は言った。
“人間の玩具さ”』
「…………。」
結局、そんなことを答えた彼だったが、その横顔は微笑みを浮かべながらも何故だろう、僕には哀しげでそして寂しげに見えた。
彼はその顔のまま、また、口を開いた。
『世の中よ
道こそなけれ
思ひ入る
山の奥にも
鹿ぞ鳴くなる…。』
首を傾げ、不思議そうな顔をすると彼は僕の頭に手を置いた。
『世の中というものは逃れる道がないものだ。この山奥に逃れてきたものの、この山奥でも辛いことがあったのか鹿が鳴いているではないか。…そういう意味の、詩だ』
それ以降、両者とも一切の無言のまま暗んでゆく空を二人で見上げていた。
人間の玩具。
確かにそうかもしれない。
人間にとって都合の良いもの、神。
……確かに、そうかもしれない。
『帰るか。』
彼はそういって僕の頭をぐしゃぐしゃかき混ぜた。
帰りはゆっくり速度を落として、“初心者向け”的な感じで送ってくれた。
「明日も来るから、またお話聞かせて!」
『おう、待ってる。』
人の子を送り届け、神社に戻ると鳥居に寄りかかる影があった。
いつもはこちらから声をかけるのだが、今日先に声を発したのはあちらだった。
『神は人間の玩具、か。随分上手い喩と言えよう。仮にも我ら…』
『…云。』
俺は相手の言葉を遮り、名を呼んだ。
『怒鳴るな呶鳴るな。哀しきかな悲しきかな。理解し、受け止めているからこその。』
云はふっ、と笑って屋根の上へ姿を消した。
『……怒鳴ってはおらんっ。』
もう何もいない屋根なのに、そちらへ向かってふんと鼻を鳴らしたのであった。
「ただいまー…ってお父さん、帰って来てたんだ。何やってるの?」
「…どう思う?」
「いつものパターンだね。潔く外で寝たら?」
爪先でつんつんと転がっている父の背をつつく。
「…一緒に寝てあげるよ!を期待してたんだが。」
「無駄な期待は傷にしみるね。じゃ、おやすみ。」
そう言ってギリギリの隙間を通り、リビングへ向かった。
「飯くらいくわせてくれないのかなぁ?!」
父の声が虚しく廊下に響いた。
ちなみに父は仕事で基本遅くに帰る。仕事が何なのかは知らない。
で、たまにこんな感じで…つまり玄関とリビングの間の廊下でうつ伏せになって転がっている。
「母さん、父さんが少し気の毒。…あと、邪魔(こっちが本音だ)。」
「お帰り。お父さんはね…自業自得だから。……………て言う事で外で寝ろ、茜。」
「うぐ…ぅ」
いつも間にか僕の後ろにコソコソ付いてきていたらしい父を母は容赦なく蹴飛ばした。
父と母は同業者らしい。で、母の方が偉い人なんだとさ。
今日は一通りのやるべき事を済ませ、ベッドにダイブした。
かなり疲れていたおかげで目を閉じ、闇が訪れると僕はすぐに深い眠りに落ちていった。
『ちなみにここはさっき言った色民が住む村に行く為に通る門の1つだ。』
「なるほど、だからただの人間を寄せ付けないようにしてるんだ。」
と、納得するものの再び疑問。
「あれ、それならここには神様はいないの?…それとも色民主が神様なのかな。」
『主サマは主サマであって神じゃねェよ。………お前ら人間の言うような神なんぞ存在しない。』
ふん、と彼は鼻で笑った。
それなら全国にある神社はなんなのか?神など存在しないというなら意味のない建造物ということになる。
「ねぇ、僕たち人間のいうような神様って何なんだろう?」
僕の言葉に彼は少し考えるようにして空を見上げた。
『………………どっかの人間は言った。
“人間の玩具さ”』
「…………。」
結局、そんなことを答えた彼だったが、その横顔は微笑みを浮かべながらも何故だろう、僕には哀しげでそして寂しげに見えた。
彼はその顔のまま、また、口を開いた。
『世の中よ
道こそなけれ
思ひ入る
山の奥にも
鹿ぞ鳴くなる…。』
首を傾げ、不思議そうな顔をすると彼は僕の頭に手を置いた。
『世の中というものは逃れる道がないものだ。この山奥に逃れてきたものの、この山奥でも辛いことがあったのか鹿が鳴いているではないか。…そういう意味の、詩だ』
それ以降、両者とも一切の無言のまま暗んでゆく空を二人で見上げていた。
人間の玩具。
確かにそうかもしれない。
人間にとって都合の良いもの、神。
……確かに、そうかもしれない。
『帰るか。』
彼はそういって僕の頭をぐしゃぐしゃかき混ぜた。
帰りはゆっくり速度を落として、“初心者向け”的な感じで送ってくれた。
「明日も来るから、またお話聞かせて!」
『おう、待ってる。』
人の子を送り届け、神社に戻ると鳥居に寄りかかる影があった。
いつもはこちらから声をかけるのだが、今日先に声を発したのはあちらだった。
『神は人間の玩具、か。随分上手い喩と言えよう。仮にも我ら…』
『…云。』
俺は相手の言葉を遮り、名を呼んだ。
『怒鳴るな呶鳴るな。哀しきかな悲しきかな。理解し、受け止めているからこその。』
云はふっ、と笑って屋根の上へ姿を消した。
『……怒鳴ってはおらんっ。』
もう何もいない屋根なのに、そちらへ向かってふんと鼻を鳴らしたのであった。
「ただいまー…ってお父さん、帰って来てたんだ。何やってるの?」
「…どう思う?」
「いつものパターンだね。潔く外で寝たら?」
爪先でつんつんと転がっている父の背をつつく。
「…一緒に寝てあげるよ!を期待してたんだが。」
「無駄な期待は傷にしみるね。じゃ、おやすみ。」
そう言ってギリギリの隙間を通り、リビングへ向かった。
「飯くらいくわせてくれないのかなぁ?!」
父の声が虚しく廊下に響いた。
ちなみに父は仕事で基本遅くに帰る。仕事が何なのかは知らない。
で、たまにこんな感じで…つまり玄関とリビングの間の廊下でうつ伏せになって転がっている。
「母さん、父さんが少し気の毒。…あと、邪魔(こっちが本音だ)。」
「お帰り。お父さんはね…自業自得だから。……………て言う事で外で寝ろ、茜。」
「うぐ…ぅ」
いつも間にか僕の後ろにコソコソ付いてきていたらしい父を母は容赦なく蹴飛ばした。
父と母は同業者らしい。で、母の方が偉い人なんだとさ。
今日は一通りのやるべき事を済ませ、ベッドにダイブした。
かなり疲れていたおかげで目を閉じ、闇が訪れると僕はすぐに深い眠りに落ちていった。
コメント
キズミ ズミ
世界観がイマイチ分からないけど、言葉選びと文章のセンスに光るものを感じる。
頑張ってください!