神様に異世界召喚されました!ミスられた勇者として。

にゃしゃ

❹『俺……??』

「ほらぁぁぁ!! 言っただろおおおおおおくそおおおおおヤバいんじゃねーのこれっっえうぇうぇえうえええええ!」

 怒鳴ったもののサンイロウシェン……?だっけ。こいつの血液は吐きそうなほど臭い……人間のような鉄臭さは一切無く、ゲロのような硫黄のような、なんとも言えない匂いが漂っていた。

「僕としたことが一日二回もミスっちゃったぁ……こいつの血取るのめんどいんだよなぁくっそぉ……しかも臭いし、見た目きしょ過ぎるし……」
 
 ハルは天井を見上げながら口を尖らせつぶやく。

 どうやらあの絶望顔は、血の採取がめんどくさいからであって、俺の心配ではなく自分の心配だったようだ。
 勘弁してくれ10歳児よ。(※年齢不詳。背から読み取った個人の偏見です。)

「なんとかなるんだろうなぁ……?」

 奥から沸き立つ怒りを抑えているからか、唸るようなかすれた声が出た。

「ん~ごめん! 瓶の中身をこんなにこぼした事無いから分かんないやぁ~! なんとかなるっしょ!」

 神はもうにっこり顏になっている。

「俺の人生がかかってるんだz――」
「――ダッシュカラカラ草の繊維汁~♪」

 俺の言葉を遮り、ハルは残りの液体を入れて行く。

「僕の唾液~!これでおーわりっ!」

 お前の唾液も瓶に入れてたのか……なんだか一人で唾液を採取している姿を想像すると大変そうだなと思った。

「じゃぁね!快適な現世lifeを~!」

「え!? もう転送!? いや、良い事なんだけど急過ぎない!? てか、魔族の血あんなあったけど大丈――」

――パンッ

と、ハルは手を合わせた。
 どうやら俺の言葉はスルーされたようだ。

 円陣から強い白い光が放たれ、俺は顏をしかめながら目を瞑る。
あのヤロー……自分勝手に……。

 俺は円陣の光が強まる中、とある気付きをした。
神頼みしても願いが叶わないのは、神が身勝手だからだということを。

「現世へ戻っても一生、神には拝みたくねぇな……」

 これがこの異世界に残す最後の言葉となった……


と思いたかったが、すぐさま結果は出た。

「ごめん! なんだか戻れないっぽいw」

 目を開けるとあのガキが手を合わせにんまり微笑んでいた。
 困ったように眉を顰めているが俺の不幸を楽しんでいるようにも見える。

「なんでいるのかな??????」

 俺も皮肉の微笑み返しながらガキの頭をつかむ。つい、その手に力がこもる。

「痛てーよ! 神にそんなことしていいと思ってんのかよ!!」

「んだと!? お前なんぞが神と認定されてたまるか!! まず、あの血は――」

 ふいに視界に入った人影に目線がいった。

「――なんだったんだ……よ」

 語尾は力なく口から滑り落ちた。
 変な冷たい汗が流れる。俺の息遣いの荒さ、ギュっと奥歯を噛みしめる音が脳に響く。

 それもそのはず、

 そこにはガキの頭をつかむネコミミの男性が立っていたのだから。

「は? 俺……? ウソ……だろ」

 あまりにも現実離れしていて状況が上手く呑み込めない。
 視覚的には、俺の頭にネコミミがある。

 恐る恐る耳のはしを触り、感触がある事を手先に受け止める。

――もふもふで気持ちいい……

ってそれどころではない!!! ネコミミってなんだよ!!! せめて角とかもっとカッコいい奴が良かった。

 恐ろしい事に、触れた時にミミの皮膚や毛と指先が擦れる音までもがしっかりと聞こえてきた。
 神経までもが繋がっているようだ。

そう、
 まぎれもない事実として、かわいいネコミミが俺の頭から生えてきたようだ。

「あっはは。ごめんね」

ごめんねと言いながらも、悪びれた様子や慌てた様子はなく、軽く笑うハル。
この次元まで来れば、どうやら腹が立つより無の感情になるらしい。

「ハル、どういうことか説明してもらおうか?」

「ん~推測できることから言うと、サンイロウシェンの血液を多めに魔法陣に乗せちゃったせいでネコミミ生えちゃったのかなぁ~?あいつ、ネコミミ魔族だからさw」

「おまっ――」

「――それと、魔族の力が具象化ちゃってるからもう現世には戻れないかもしんないっ!」
 
 あどけない顏をしながらも、この状況を楽しんでいるようだ。
 ちくしょう……バカにしやがって。

 困った困った果てしなく困る案件だ。

 神に投げかける言葉を考えながら、息を静かに口から吸いこむ。

「お前神だろ……何とかしろよ……」

喉から押し上げるようにやっとの事で声を絞り出す。

 忘れることはないだろう。こいつはこの世界の神なのだ。この異世界に関してはプロとも呼べる存在がネコミミ解除ができないはずはない。
 このネコミミさえなければ俺は元通りの生活に……

「むーり!w神にだって出来ないことくらいありますよーだ!」

「ンッッ!? お前にならなんとか出来るだろ!!!」

「う~ん」
 
 ハルは顏をしかめながら考えている。

 え? 悩むとこ!? ネコミミにされちゃった俺の言い分間違ってないよね!?
 
「よーし! 君には、」

次のハルからの一言は信じられないものだった。

コメント

  • にゃしゃ

    ありがとうございます( ´罒`*)✧"

    0
コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品