追放された私を拾ったのは魔王だった為、仕方なく嫁になってあげた私はラグナロクにてスローライフを送りたいと思います

永遠ノ宮

第十九話 御師匠との記憶

私は夢を見ました。
 懐かしい、大切な人との思い出の夢です……。
 御師匠様……。


ーー六年前


「おい!もっと働けやこのクソ奴隷が!女で歳も低いからって休もうとしてんじゃねーよ!」  

「すいません、すいません……。本当にすいません……」

「何が貴族のアリア家の娘だ!奴隷に元貴族とか関係ないしな!奴隷はただの奴隷!死ぬまで使われたおせばいいんだよ!」


 私は一歳で両親を事故でなくし、家庭は崩壊、私は行く宛もなくなり奴隷として王国の街商人の家に連れてこれる。
 奴隷はただの奴隷……、ただの言う事を聞く道具に過ぎない。
 私はボロボロ、殴られて、蹴られて、ムチで叩かれて、ご飯を抜きされて、寝かしてもらえない日がよくあった。
 私はその生活から抜け出して見返してやりたかった。
 私のためではなく、侮辱され続けている家族のためにだった。
 五年間奴隷として働き、十歳になった頃、私が外で洗濯をしていると、


「あなたがアリア・スカーレットね?私は王宮に仕える薬師のマザー・テレサ・サルタムよ。あなたのお父様とお母様には良くしてもらって……、あなた傷だからけじゃないの!綺麗な顔に傷なんて……、治してあげましょう!お薬を……」

「すいません……、お父様とお母様を知っている仲のお方であっても、今は私は奴隷です。貴方のような王宮に仕える方にこのような事をしていただくのは……。お金もありませんし」

「何を言ってるの!怪我したら身分とかそんなの関係ないのよ?助け合わなければ人はすぐだめになるのよ?お金なんてものは所詮ただの金貨よ?人への愛情や、友情なんかはお金で買えないもの」


 この人はすごく心が綺麗で、世界一人を愛している人なんだと私は思った。
 私のお父様とお母様を知る仲でも、もう居ない人の娘に恩を売る意味はない、ましてや私は奴隷で人間の底辺に値すると言われてきた。
 でも、そんなの関係なしに、人は皆同じ、愛情や友情や人との関わりはお金では買えない。それは、当たり前のことだけど……それを本当に堂々と言う人は初めてだった。
 私はこの人の様になりたいと思った。
 この時点で、もう私がステルス能力である治癒の加護を使えることは把握していた。 
 だから一か八かの賭けにでてみた。


「マザー・テレサさん……。私は他人にここまで隠してきましたが、治癒の加護を、つまりステルスを持つ人間です。世界で五人もいないステルス使いです……。ですから!下っ端からでもいいです!私を王宮にいれてもらえないですか!」

「ステルス云々関係なしに、貴方がそう思うのであれば私は貴方を王宮に連れていきましょう!ですが、一つだけ……」

「何かあるのですか?」

「失礼します。王宮から来たマザー・テレサ・サルタム薬師です。貴方の奴隷として働いている、この可愛い娘を王宮に連れて行くことになりましたので挨拶を」

「あ?薬師だと?薬師だか知らんがそいつは俺の奴隷だ!俺の道具だ!」

「なるほど……。あなたはこの子を道具と……。落ちるところまで落ちた人間もいるものですね、残念です。道具を使わずにまずは自分で全てできるようになってからおっしゃいなさいな!」


 その言葉に私を道具として扱ってきた街商人のおじさんは何も言い返せなくなった。
 私はマザーに手を引かれて王宮にはいり、王様へ直々に挨拶をし、王宮入を承諾してもらい、御師匠様のお服もいただいた。
 私は御師匠の横につき、次の日からはすぐに治療舎での病人や怪我人の治療の手伝いに励んだ。
 臓器の損傷や、外の大きな傷などの、薬では治せない部分は私のステルス、病気や感染症などは御師匠の調合薬で治すと言った連携プレイでたくさんの患者を治した。


「なんで……。なんでーー!!御師匠様ーー!!うわぁぁぁああ!」


 御師匠は私が王宮に入って三年が経ち、私が聖女へと昇進した次の日に、事故で亡くなった。
 御師匠は隣の国が地震にあい、その地震ででた怪我人の治療に行った。それは、私が昇進を発表される一日前に出国で、御師匠は私の昇進を目にせず亡くなった。
 本震だと思われていたのが実は違い、御師匠が隣国について二日後に本震はおき、津波に飲まれた。
 遺体が見つかり、王宮に帰ってきたときには、御師匠の身体には傷、傷、傷、顔はグシャグシャだった。
 私は泣き崩れた。一番の御師匠で尊敬する方に昇進を見てもらえず、そして、こんなに早く事故でお別れになるなんて思わなかった。その気持ちがこみ上げてきて私は一週間、泣き続けて部屋から出られなかった。
 そして、それから三年後のつい最近、私は王国を追放された。
 それでも嫌ではなかった。
 御師匠のおかげで私は王宮にていい仕事と、楽しい時間を過ごしたからだ。
 御師匠の死は辛かったけど、御師匠おかげで今私はラグナロクにて幸せなゆっくりと時間、人生、スローライフをおくれています。 
 だから、私は……、


「アリア、どんな夢を見ているの?泣いちゃって、かわいいね本当に君は。アハハ!」

「マザー……。ありがとうございました……。」

「君の御師匠の夢か……。僕もあの人に感謝しなきゃいけないね」


 アリアがラグナロクに来てから、マザー・テレサ・サルタムの名前は凄まじい勢いで世界中に知られていった。
 マザー・テレサ・サルタムは人の鏡、人間の神様だと。

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