追放された私を拾ったのは魔王だった為、仕方なく嫁になってあげた私はラグナロクにてスローライフを送りたいと思います

永遠ノ宮

第十六話 アヌビス様の一目惚れ

今日は朝の早くからアヌビス様がエジプト祭の総司会を放置して屋敷に来ています。
 テトととても大事な話をしているようで、私はお茶と洋菓子を出し、部屋をでようとしたら、


「アリア様、よろしければアリア様にも相談したく……」

「私にですか?私でお役に立てるのでしたら是非!」

「アヌビス、アリアは多分スパルタだぞ?」

「なんか言った?テー、ト?」

「いや、アリアは物凄く頼りになるぞ!って言っただけだよ?怖いなー、朝からアリアは!もっとスマイルスマイル!」


 テトがスパルタと言ったのを聞いてないフリをして私はテトに威圧をかけてからアヌビス様のお話を聞き出す。


「つまりアヌビス様は一目惚れをしたといいことですか?」

「えぇ、そうなのですよ。ただ、彼女は口を開いてくれなくて、私の話を聞いてはくれるのですが無反応。基本的にずっと寝ていて、表情一つ変えないのです!」

「アヌビス、アハハハハハ!お前それ嫌われてるって!アハハハハハ!ぐーたらでポーカーフェイスだなんて無視されてるだけじゃねーのか?アハハハハハ!痛っ!!」

「テトはすこし黙ってなさい?!次、変なこと言ったら私は今日からヨルお兄様の部屋に移るからね?!……それで、その人を私とテトに見て欲しいと言うことですか?でも、相手は猫の姿をした獣神なのですよね?」


 そう、アヌビス様が一目惚れをしたのは、猫の耳に尻尾を生やした半分人間の獣神と言われる神に近い人間のお方だそうなのです。
 テトは大笑いしていたけど、私からしてみたら、嫌われてるというより相手はアヌビス様に好意があるからこそなのでは?と思うのだけど……。


「アヌビス…、恋というのは難しい。俺は最初、アリアに疑われていた、変態、怪しい、キモい、不審者と!」

「変態と怪しいはあっているけど、その後の二つは私は知らないわよ?」

「だが俺は、アリアを欲しい、アリアがいい!と言う思いからアリアのファーストキスを奪うと同時に心も奪うことに成功したのだ!だから、アヌビス!お前も男を磨いて大胆に彼女にアピールをし、心を奪ってしまえばいいのだ!」

「ファーストキスのことは言わなくていいのテト!!でも、たしかにテトの言うことは一理あるというか的を完璧に射抜いているわ。アヌビス様、私達はできる限り協力します!一度、私とテトでエジプトに行きますので紹介してもらっていいですか?」

「それはもう是非!ということでテト様、今日は昼から飲み明かしましょう!」

「よかろうアヌビス!さぁ、宴だー!」

「手配するわ……。アヌビス様?酔い過ぎでエジプトに帰れないということはない程度にしてくださいね?」

「はい!大丈夫でございます、アリア様!」

 
 このままの状態から、テトとアヌビス様は昼からお酒とおつまみなどで飲み明かし、夜遅くまで宴は続き……、


「では、エジプトに帰ります。明日にでもお越しください」

「はい!明日にでもお伺いしますね!」


ーー次の日


「ようこそアリア様、テト様!」

「昼前にすいませんね。テトが起きなくて」

「俺は起きていたが身体が起き上がらなかったのだ!」

「それを寝てたっていうのよ!」

「テト様の異世界転送術は素晴らしいですね!完璧に地点を定めて飛んでこれるのですから」

「だろだろ?もっとほめよアヌビスよ!」


 テトは酔が冷めていないのかご機嫌すぎて私はテトをアヌビス様に任せて、例の一目惚れ相手を見に行った。
 いない。私はものすごく長い間、ピラミッド内を探し回った。
 けど、獣神らしき女性はどこにもいない。


「アヌビス様、どちらにお相手は?」

「私の部屋にいますので、今から行きましょう」


 そう言って歩いていくアヌビス様の後ろを私とテトはついていきアヌビス様のお部屋の前についた。 
 アヌビス様は扉をあけ、彼女が紹介したいと言った女性です!といって指をさした先にいたのは、


「アヌビス様!それは大きな猫娘の焼き物です!」

「アヌビス最高すぎるよ!アハハハハハ!焼き物に恋をするなんて!アハハハハハ!」


 そう、アヌビス様が一目惚れをした相手はまさかの猫娘の焼き物だったのです。
 私は驚き、テトは大笑い。
 アヌビス様は腰を抜かしてしまい微妙な空気が流れだした。


「アヌビス様、焼き物は話しませんし、動きません。もちろん表情も一つ変えません。何で焼き物に恋をしたのですか?!」

「いや、数日前に市場で売っていて、綺麗な方だと思ってつい」

「いやそれでもアヌビス様?市場で人間の売り買いは犯罪で売っていませんよ?!エジプト王国の王様なのでしょ?!」

「いやそれはだな、こうでこうで……」


 アヌビス様は色々と言い訳をしているが、紛れもなく焼き物だという事実に変わりはない。
 私とテトで必死に説得をし、アヌビス様も理解をしてくれた。
 ラグナロクに帰ってから、私とテトはアヌビス様のことで少し話をした。


「アヌビスのあれには驚かされたね!最高だったよ!」

「色々と複雑だけどね……」

「ただ、好きになるというのは悪いことじゃない!」

「それはそうなのだけど……ほんとあれはビックリよ」


 アヌビス様、いい大人で王様なのですからもっとしっかりしてくださいと私はラグナロクから心配の言葉をかけた。

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