パーティー追放されたのでパーティー結成してみたら

永遠ノ宮

一撃奥義「十字炎一刀」

「アハハハハハ!ホルスとネメシスがまさか人間に本気で力を貸すとわ!誤算誤算!でも、死ぬのはお前たち全員だー!「終焉の夜(ジ・アークナイト)」。さぁ、終焉の刻だ!」


 終焉の夜、その魔法技はランバード神の使う魔法技の中で一番魔力を要する最強の奥義。
 輝く星空が、一瞬にして混沌の黒の世界に陥り、厚く広げった黒雲を切り裂くようにしてランバード神の使い魔、デビルアッカーが無数に現世に舞い降りてくる。
 そして、ヴァンパイアバードに向かってデビルアッカーが集まりだす。
 デビルアッカーは次々にヴァンパイアバードに吸収され、みるみるうちにヴァンパイアバードは鬼へと姿を変えていく。


「あれって……確か……」

「ナズナさんの考えている通り、凶鬼神「山吹鬼」だよ。まさか本当に神話通りにランバード神が吸収してたわね」

「正体あらわしましたわ……カイ兄、まだたまらないですの?」

「もう少しだ!ホルス、ネメシス、頼みがある!…………頼んだぞ」

「さぁ!最後の審判だ!」


 鬼へと変わり果てたヴァンパイアバードの声は、とても重低音で、まさに闇の中で身を潜めし真の怪物を強く脳に焼き付ける恐ろしい声だった。
 

「最後の審……」

「今だーー!連れて行けーー!」


 ヴァンパイアバードが、「最後の審判(ジャッジメント)」を使うことを俺は呼んでいた。
 だから俺は、横にいたフィルテンプには聞こえない声で、ホルスとネメシスにこう頼んだ──「最後の審判(ジャッジメント)が来る時に全員連れて退いてくれ。フィルテンプのみを残して」と。


「バカな……!なぜ先をよめた……カイン!」

「簡単な話だ……お前が使う強魔法技の最後の審判は、単体攻撃魔法とも全体攻撃魔法ともなる。つまり、誰も攻撃を仕掛けていない今、全体攻撃魔法に切り替えて瞬殺できるチャンス!だけどな、そんな強魔法技にも有効範囲があることを見破られたら終わりだよな!ヴァンパイアバード!」

「お前……!そこまで見破って……!だが、俺に攻撃を与えるには、防衛魔法を破らなくてはいけない。勝ち目はないぞ!」

「それはどうかな!「鬼神封陣(ナイトメアインディ)」!!」


 ホルス神の肩に乗り宙を浮いているルータによる封陣が決まり、ヴァンパイアバードは動けなくなる。
 そこへ、すかさず連続攻撃魔法の呪文詠唱を唱えながら、高速で突っ込んでいくナズナちゃん。


「防衛魔法を割るならこれくらいで十分ですですよ!「双剣龍神の雷」!!」

「防衛魔法を……消し飛ばすだと!となると最後は……!!」

「待たせたな!クソ神様!お前はここで無き者になる!うおおおお!!行くぞ!フィルテンプ!」

「私達は絶対に生きて帰りますわ!」


 俺とフィルテンプは長い距離を強化魔法によって強化されたスピードで走っていく。
 フィルテンプは強化されたスピードでも俺の半分も出ていない。
 俺は裏ステータスによって足の速さは、元から人間離れしている。そこに強化魔法を使えば、フィルテンプがおいていかれるのは目に見えた。
 そこで俺は、少し走って勢いをつけた状態でフィルテンプをお姫様抱っこで持ち上げ、地割れが起きる強さで地面を蹴って飛んだ。


「なぜそこまでの足の速さと、跳躍力を持っているのだキサマ……!」

「お前が最初の方に言ったの、忘れたのか?俺は、裏ステータスのみチート級に生まれつきぶっとんでる、つまり俺は!裏ステータスをフル活用することによって、最弱から最強へと生まれ変わるんだよ!」

「そして!私とカイ兄の2人の力は、混ざり合うことにより神をも超越する聖なる力へと変わる!ホルスとネメシス……2体の神が、ディーバの反乱を終わらせた時のように、この技で全てを終わらせるわ!」

「やめろーー!!」


『くらえ!「十字炎一刀」!!うぉぉぉおおお!!』


 俺とフィルテンプは、空中で体制を変えて横並びになり、ヴァンパイアバードよりも遥か高く飛び上がっていた。
 地上から700mほど飛び上がった俺とフィルテンプは、2刀の重なる大太刀を握りしめ、青と赤の2つの炎は刃を全て包みこみ、その凄まじい魔力の存在を見せつけている。
 剣を強く握りしめた俺とフィルテンプは700mの高さから一気に降下し、大きく振り上げた剣は、勢いと共に炎が何倍にも燃え盛る。
 ヴァンパイアバードは、目を大きく見開き、口を大きく開けながら震えだす。
 そして、俺とフィルテンプは大きく炎を上げる大太刀を振り下ろし、ヴァンパイアバードを一刀両断した。
 刃を包み込んでいた青と赤の2つの炎はヴァンパイアバードに移り、ヴァンパイアバードは2つの炎に蝕まれながら消滅していく。
 消滅していく姿は神秘そのものだった。 
 青と赤の2つの炎が燃え盛る中、蛍の光に似た発光体が次々に天空へと登っていく。
 俺達7人は、その光景を目にしながら、長かった強敵との戦いに終わりが告げられたことに肩を落とした。
 緊迫感と、なんとも言えない死との距離の近さで、肩には力が入ったままだったからだ。
 そして、全員が地面に降り、尻をつけて座り込むと、ホルスとネメシスも大きな巨体で腰を下ろした。


「終わった……!勝ったーー!!」

『よっしゃぁーー!!』


 俺達は、勝利に歓喜を上げた。
 すると、聞き覚えのない女の子の透き通る声が聞こえてくる。


「負けた負けたよ。むぅ!カインとネメシス強すぎー!しかも、ホルスとネメシスが、ホンマに出てくるのはいけないよー!」


 壊れた大岩の瓦礫に座る見たことのない女の子の姿を目にした俺達は全員で目を合わせ、誰?と凝視した。

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