パーティー追放されたのでパーティー結成してみたら

永遠ノ宮

フィルテンプとカイン

「カイン……すいませんでしたわ。SSランク勇者たる私が簡単に不意をつかれてしまいましたわ……」


 アルメークスネークを抹消し、フィルテンプも現世に帰ってきた日の夜に、俺はフィルテンプから謝罪を受けた。
 怒っていないし、フィルテンプが現世に帰ってきたことが何よりも嬉しくて、だから謝罪なんていらなかった。
 フィルテンプは、このネックレス素敵ですわね……。と、ネックレスを月に当てながら目を輝かせる。
 今はこうして温かい雰囲気を保てているが、ユミソファは寝たきりで魔力枯渇が治っていない。
 ナズナちゃんはユミソファにつききりだ。 
 しかも、アルメークスネークを倒した今も森は消えることなく霧も少し残っている。
 まだ何かあるんではないか、そう俺は考えている。
  

「カイン、あなたを酒場で見たときに私はすぐに声かけましたわ。なぜだかわかります?」

「そういえば何故だったんだ?SSランク勇者のお前が俺みたいなEランクなんかと」

「覚えてないのですのね。……孤児院にいたときのことを」


 孤児院。俺はその言葉に引っかかった。
 俺は生まれてすぐに両親に孤児院に引き渡されたそうだ。
 孤児院にいた時の記憶は、俺が五歳くらいの時からしか覚えていない。
 ただ、孤児院はみんな名前がわからない子や、あえて伏せられている特別な子が多くいた。
 でも、フィルテンプのことを俺は知らない。ただあの街の孤児院は一つしかないとなると俺はフィルテンプと孤児院で一緒だったことになる。
 

「私はあなたのことをカイ兄、カイ兄と呼んで後ろをよくつけていましたわ、妹のように……」

「おい!まて!あの時の二つ下の女の子って……フィルテンプだったのか?!でも、あの時……髪の毛って短かったじゃないか……」

「それくらい伸びたら変わりますわよ!しかも、私はあなたと同じ十九歳ですわ!ですからお酒も飲みますわ!」

「同い歳!同い歳なのか?!でも、お前はいなくなったじゃねーか」

「私はいなくなったわ。なぜなら私はネメシス家の特別な一人、両親が戦に負け亡くなり孤児院にはいった。けど、叔母様が私を探しだしてくれたおかげで私はネメシスに戻りましたわ」


 それで俺の前から居なくなったのか。
 二年くらいしか一緒にいなかったし、名前も知らない、歳もはっきりとわからない、そんなんだと一緒に長く居たとしても居なくなった時にそこまでの寂しさもない。
 だから、忘れていた。
 フィルテンプは俺が名前も知らないが妹のように可愛がっていた女の子だ、でもなんで今頃?と俺は思った


「私は兄のように思っていたあなたをあの酒場で見つけましたわ。大きくなってもあなたはとてもカッコよくて孤児院にいた頃の勇敢な後ろ姿は変わっていませんでしわ。だからすぐわかりましたわ。でも、あなたは私を見ても何も気づきませんでしたわ」

「それはすまなかった……。て、ん?まさかお前、それで拗ねて俺に今までボロクソな態度とっていたのか?!」

「そうですわよ!気づかないあなたのせいですわ!自分を責め、あの世橋を渡りなさいな!」

「悪いことをしたと思うがそれを言われると謝る気がすせるぞ!」

「そんなことはもうどうでもいいですわ!」

「いいのかよ!」

「私はまた、大好きな兄のような存在なあなたを、カイ兄……と呼んで、後ろをついていきたいたけですわ!」


 色々と理解はできた。
 兄的存在だった俺を見つけ、俺のパーティーにはいって、また俺の後ろを歩いてついていきたかった、昔のように。
 じゃあ、これは覚えているのかな?俺が夜、モンスターに囲まれてしまったフィルテンプを助けた後に俺がしたことを。
 俺はその時したことをフィルテンプにしてみた。  
 それは、正面から静かに抱きしめることだった。


「カ!カイ兄!なにしてるのですの?!」

「お前が夜、一人で散歩に行ってモンスターに囲まれた時あったろ?あの時俺がお前を見つけ出して手を引いて、必死に逃げ切ったあとにこうして泣いてるお前を抱きしめて落ち着かしただろ?」

「なんだ……覚えているじゃないのですの……。もう少しこのまましていてくれます?落ち着きますの、久しぶりのこの匂い……。……カイン、あなたのことをまたカイ兄と呼んでもよろしいですの?」  

「匂って……。それはさっき普通にお前呼んでたじゃないか?だからいいよ……またあの時みたいに呼べば」


 俺は過去の懐かしさに浸り、フィルテンプを軽い力で抱きしめながら孤児院に居たときによく一緒に歌った歌を口ずさんでみた。


「空に、光る星は、君の笑顔のようで、僕は……」

「僕は君を見つめてた。そんなあなたを私はみつめかえすの、太陽に暑い情熱に満ちたあなたを……」

「懐かしいな……。本当によく歌ったよな」

「いい歌だねー!うん、実にいい歌だね!カイン、ネメシス六世!」


 その時、男が俺達の座っていた大岩の上から見下ろしながら森中にその声を響かせた。
 俺とフィルテンプはその男を見て思わず立ち上がった。
 それは俺のよく知っている憎い男だったからだ。


「懐かしいね、カイン!そして、僕のみぞおちを殴ったお嬢様」

「なんでお前がここにいるんだ!カマン!」


 そいつは俺をパーティーから追い出したカマンだった。

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