未知日々 (ミチヒビ)

goro

退院



◇退院◇








「混合式・連鎖風蝶」


風霧が口にした瞬間。
振り下ろした刀から無数の黒蝶が如月の放つ臨輪衝光を包み込む。


光に秘められた威力は計り知れない。
だが、黒蝶はそれすらを包み込み、絞りきるように光を四散させた。


「………………」




如月は飛び去る竜を見続けた後、ギロリと隣にいる風霧を睨み付けた。


「どういうことか、説明してくれるよな?」


如月の腕に通った光の輪が今だ回転を続けている。


「あー………………」


風霧は刀を上に放り投げ、その瞬間に刃は収まり一つになっていた刀は二つのアクセサリーに戻る。
そして、ソレを掴みとった風霧は口を開いて言った。




「悪い、気まぐれで逃がした」


ドン!!
如月が躊躇なく拳を振り下ろし、すると回避された拳は地面に突きつけられる。


「新、お前なぁー…」
「悪かった悪かった。今度アイツらが来たら俺が叩き斬るから」


へらへらと笑いながら空を見上げる風霧。


「………ただ」
「?」
「真意を確かめるまでは…………てな」








その意味不振な言葉。
如月はその風霧が見せた表情に首を傾げるのだった。


















「…………何で」


竜に乗るゾンビ使いの少女は風霧の行動に疑問を浮かべるしか出来なかった。


あの最後に見せた技。
強大な威力を秘めた如月光夜の一撃を凌駕する力がアレにはあった。


「……………神の力」




風霧が言った言葉。
もし、あれが本当だとしたら。












その神の力を操る、風霧 新とは一体何者なのか?


















次の朝、病院玄関前にて、


「退院って、早くない?」


田中 桜は口元をひきつらせる。
目の前には、包帯が取れた腕を動かす如月の姿が、


「骨折なんてしてなかったんだろ」
「いや、それでもおかしいでしょ」
「あ、そう言えば。お前が言ってた奴、出たぞ」
「え?」


如月は口元を緩ませ、声を落としながら口を動かす。




「お化けだよ。まぁ、あれはお化けっていうよりもゾンビだったけどな」
「え、そ、そうなんだ。ははは………」


……………………………………………。




「あ、後ろにゾンビが」
「いやあああああああああああああああああ!!」








この日、桜の悲鳴が病院内全体に響き渡ることとなる。







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