未知日々 (ミチヒビ)

goro





◇謎◇




光夜は不機嫌な表情を浮かべている。




今、光夜がいるのは自分の家のリビングだ。
家の中には、光夜の他に呑気にコップに入ったお茶を飲んでいる新と、リビングの向かいにある部屋で未だ敷いた布団で眠っている桜がいる。


あの後、新に神社から離れるように言われ気絶した桜を背負い帰ってきてから、十分は経っていた。


「で?」


光夜は新に眉をピクピクさせながら睨む。


「ん?」
「ん?じゃねえよ、全く………。何なんだよ、あの蛇は?後、お前の腰ついてるアクセサリーも」


本当ならあの場で、直ぐにでも聞きたかったのだが、あの時は直ぐ側で桜が気絶していたし、場の空気てきに尋ねづらかったので、しぶしぶ我慢するしかなかったのだ。




新はそんな光夜の表情に、ああ、さっきの……、と口からコップを放し、テーブルに両腰に付けたアクセサリーを置き、


「あの蛇については俺も知らねぇよ。ここの人間じゃねえからな……。後、こいつは俺の相棒みたいな物だよ」


そう言いながらアクセサリーに指をさした。




相棒?と光夜は首を傾げ、アクセサリーを凝視した。


アクセサリーは厚さ三センチぐらいの鉄の五角形の形をしており、アクセサリーと言える代物か?と疑いたくなるものだった。だが二つのアクセサリーの中心には、ひときわ綺麗な玉が付いており片方は黒で、もう片方は白といったものだった。


黒い刀が出てきた事を踏まえても、ただのアクセサリーじゃない。光夜はテーブルに乗ったアクセサリーに息を呑んだ。
しかしここで光夜は、新が『相棒』という言葉を言う前に言った言葉を思い出す。






……あの蛇については俺も知らねぇよ。ここの人間じゃねえからな……












……………………………………




「っ、てか、知らねぇで倒したわけ!?」


ああ、と新はそんな驚く事かという眼差しを送る。


「だって、あのままだと食われてたぞ、お前」
「うッ………」




確かに、あれは間違いなく新に助けてもらわなければ、今頃、光夜はここにはいなかっただろう。


「思い出したくねぇ……」


うーん、と嫌な光景を思い出す光夜。


「まぁ、そんなことはさておき…」


すると、新はそう言った瞬間、表情が変えた。その顔からは、今までの呑気な表情など微塵も感じられない。


光夜は、まるで重石を担いだような重圧感を感じた。


「あの箱について、わかったことがある」
「わかった……こと?」
「ああ、だが話す前に……あの箱は何かしら力があるのは、俺が来たことでわかってるよな?」
「あ、ああ……」


頷いた光夜は、ポケットからあの箱を取り出し、テーブルに置く。


「そして、あの蛇はお前だけを狙っていたのもわかるよな?」


…………え?光夜は一瞬、頭の中が空白になるかと思った。あの時はたまたま自分が的になったのかと思っていた分、衝撃が強かったのだ。


唾を呑み込む光夜は全身から脂汗が出た気がした。




あっちゃー……気がついてなかったのね……、と新は内心ドジったと思った。


「ま、まぁ、もしかしたらって話だよ。もしかしたらってな」
「……ああ…」


光夜は、何やら誤魔化されたんじゃね?と思ったがなんとなく、新の言葉を信じた。


良かったぁ……、と心の中でホッとする新。そして、気づかれないように息を吐いた新は、話を戻す。


「じゃあ、ここからが本題だ。………あの蛇を操ってた奴が落とした壺を俺が拾おうとした時、あいつはその壺を、『レギア』って言いやがった」
「レギア?」
「ああ……。だけど、あの壺の名前かっていうと違うみたいだった」


新はあの時、レギアか?と言われた事を思い出す。




その場に静寂が漂った。






そして、少しすると新がその静寂を破り、


「今から言うのは、俺の仮説だが…」












テーブルに乗った光夜が置いた箱を掴み、新は言った。


















「俺の予想だと、あの壺とこの箱は『レギア』って言葉に関連があるものだと思う」


光夜は目を見開き、新から箱に視線を変え、あの時の大きな蛇を思い出す。


「それって…………、この箱もあの蛇みたいなやつを……」
「さぁな……。でも、あの壺と同じか、それ以上の物だろうな。(じゃなかったら俺が呼び出された事も説明がいかねぇしな…)」
「え?」
「あ、いや、何でねぇよ」


新は苦笑いをして、光夜から視線を時計に変えた。


時間は今、六時を過ぎていた。






すると、その時。








「う……うーん……」




部屋の奥から、桜の声が聞こえて来た。


光夜は急いで桜が寝る部屋へと向かい、新はそんな光夜の背中を見て、口元を緩めた。






「桜!」


そう叫びながら光夜が部屋に足を踏み入れると桜は、布団から体を起こし、目をこすりながら欠伸をしていた。


だが、ここで光夜の動きが止まる。
光夜は、ある所に視線を向けてしまった。






それは、汗をかいたせいで髪の毛が濡れ、のか頬がほんのり赤くなっている桜の顔ではなく…、






桜の首から下の部分。










半袖のワイシャツの上のボタンが三つ取れたことにより、微かにピンク色の何かが見えている所を……






光夜は、確実にダラダラと全身から脂汗を出した。




「あれ、光夜?」




一方、桜はそんな光夜に気づいた。そして、制服のまま眠っていたのが暑かったのか蝶々結びをしたネクタイに指をかけはずそうとする。


そのせいで、ある部分がより強調される。




光夜は一歩、二歩と後ろに下がっていく。どうか気づかないように、と願いながら。




だが、光夜の願いもむなしく……




「ここって、光夜の……………………………」




桜は辺りを見渡し光夜の家だと判断すると、何気に視線を下向け、今の自分の状態を見た桜はバッと手で胸の部分を隠し、顔を赤くしながら光夜を見た。




光夜自身わかっていないだろうが、今の光夜の顔は、真っ赤に染まっていた。


















「光夜の変態ィィィィィィィィ!!!!」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
















この日、断末魔のような叫びが光夜の家から響き渡った。







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