天才過ぎて世間から嫌われた男が、異世界にて無双するらしい。
第137話 久しぶりの存在。
ーーーーーー
「とりあえず、ゆっくりと座って話がしたい。俺についてきてくれ!! 」
  俺は佐山浩志に促されるがままに、湖の畔にある一軒の小さな家に招かれた。
ーーどうやらここが、彼の居住地である事は、容易に想像が出来る。
  俺はそんな湖の様子がよく見える窓際のリビングにあるソファに腰掛けると、一つため息をついた。
  それはまるで、ここ一年位の疲れを全て吐いて捨てたかの様な重たい物である。
  そんな俺の様子を横目に、兄はキッチンの方から現れて温かいコーヒーを俺に渡した。
  それからテーブルを挟んで俺の対面にある椅子に座ると、彼はゆっくりと口を開いた。
「久しぶりだな、雄二。」
  彼の声は、安心と哀愁が混在する様な、非常に不安定な口調である。
ーーそんな兄の話し方から、俺は再会した喜びと、俺が死んでしまった悲しみを一遍に抱いている事がすぐに伝わった。
  そこで俺は、彼に笑顔を見せながらこう答えた。
「兄貴、久しぶり!! やっと会えたね!! 」
  俺の言葉を聞いた兄は、苦笑いを浮かべた後でそれに頷く。
  それから暫く、沈黙が続いたのだ。
  話したい事は沢山ある筈なのに、言葉が出てこない。
  それは、久々に会う事への気まずさではない。
  しかし、どうしても躊躇をしてしまうのだ。
ーーお互いが死んでしまっているという事実から......。
  そんな微妙な空気感を嫌悪したのか、兄は空元気の様なたどたどしい喋り方で、俺にこう問い掛けた。
「暫く会う事がなかったが、元気にしてたのか?! 」
  それを聞いた俺は、一瞬体をビクッとさせた後で、
「お、おう!! 優花とも仲良くやっていたよ!! 」
と、兄を安心させる為に彼女の名前を口にした。
  それに対して浩志は、少し切ない表情を浮かべる。
「そうか。それは良かったよ......。あの日、あの瞬間に、俺はお前たちの兄ではなくなってしまったんだからな......。」
  俺は、兄のそんな言葉を切っ掛けに、今までの記憶が全て蘇るのだった。
  兄が『時空の歪み』に包まれて消えて行ったあの日の事も鮮明に......。
ーーあれ......?
  あの日、俺は兄と......。
  そんな事を考えているうちに、俺は無意識にテーブルにもたれ込み、嗚咽を漏らして泣いていた。
  兄が居なくなってからずっと抱えていた気持ちを......。
ーー苦しかった。
ーー辛かった。
  だからこそ、今は安心している。
「俺は、兄貴が居なくなってから、ずっと一人だった。優花と話せる様になったのも、ほんの最近の話だ。それに、今、やっと思い出したよ。兄貴とあの日、あの場所で『約束』した事を......。」
  それを聞いた兄は、遠くに映る湖を見つめながら、蚊の鳴くような声でこう言ったのだった。
「今まで、ごめんな......。俺のせいで......。」
  俺はそんな彼の謝罪を聞くと、涙を拭いながら顔を上げ、
「謝らなくていいんだ。だって、兄貴は俺よりもずっと辛い思いをして居たのは、よく知っているから......。」
と、笑顔で口にした。
  異世界での兄の苦労は、森山葉月から聞いていたから......。
  浩志はそれに対して、少しだけ驚いた顔をする。
「まさかとは思うが、お前......。」
  俺はそんな兄の質問に大きく頷いた。
「そうだよ。俺は、兄貴と同じ道を辿ったんだ。異世界で戦い続けた。まあ結果、死んでしまったんだけどな......。」
  それを聞いた兄は、途端に神妙な顔つきになった。
「と言うことは......。」
  俺はその理由が分からずに、ただ、考え込む彼を見つめ続けた。
  すると、その後で浩志は、真面目な表情を浮かべてこう呟いた。
「お前だったとは......。」
  それに対して俺は、質問をする。
「どういう事だ......? 」
  俺のそんな問い掛けを聞いた兄は、俺の両肩を掴み、こう言ったのだ。
「お前が、『英雄』の素質を持つ者だったのだな。俺は、『崩壊の神』に託され、死んでからずっと、この湖畔でその者の到着をずっと待っていたのだよ。もう、二年以上もな......。」
  俺はそんな素っ頓狂な事を言い出した兄に、反論をした。
「何を言っているんだ。俺は、もう死んだんだぞ......? 」
  それを聞いた兄は、一度深いため息をつく。
  そして、俺の方をしっかりと見た後で、こう告げたのだ。
「だって、お前は今、最後の『試練』を受けているのだろ......? 」
  そう言った後で、兄は俺に奥の部屋へついてくる様に促した。
  俺は兄のしようとしている事を全く理解出来ない。
  話したいことも沢山ある。
  しかし、今、兄は最後の『試練』について何かを起こそうとしている。
  それ故に、俺は彼とじっくりと話す機会を失ったのだ。
ーーやっと、『あの日の約束』を思い出したにも関わらず......。
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