金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第百三十七話  子どもたち

「母上! ニッキが私の事をいじめます!」
「いじめてないですよ? 遊んでただけです」
「……、ニッキ、シナに謝りなさい?」
「えぇー」


 もう十歳か。早いものだ。私はシナの頭を撫でながら考える。
 ニッキとシナ。そ、シナモンとアリシアだ。シナモンはニッキともいうし。シナの方は、一応、シナモンと関係のある名前が良いかな、と。


「父上、母上に言って下さいまし!」
「そうはいっても、シナ、ニッキは悪くないと思いますよ」
「ですが、父上! ニッキは私を妹扱いしますわ!」
「あれ? そういう話?」


 な、何の話してたんだ?
 良く訊けば、ニッキがシナを小さい子扱いするから怒ったらしい。それだけか。
 まあ、シナの方が背は確かに小さいけど、性格的にはずっと大人びてるしね。ああ、シナが妹だったか。


「ジェイド、お帰り。ニッキはどんな感じかな?」
「だいぶ強くなりましたよ。ソフィアもいつか一緒に行きましょうよ」
「そうだね。でも、私はこの子がいるから。また、しばらくしたらね」


 そっと視線を落として言う。私は二十六歳。まだ子供だけど、それでも、もう十分だ。そっと微笑むと、ジェイドはちょこっと悪戯っぽく笑う。
 そう言えばー、とニッキが口を開く。


「どうしてお父さんはお母さんに敬語使ってるの?」
「ニッキ。目上の方には敬語、ですわ。あなたは使わなくてはいけません」
「うふふ、いいよ。そうだね、話すと長くなっちゃうし、難しいからまた今度」
「ほら、ソフィア。もう中に入りましょう。今日はフィリアちゃんも来ているんでしょう?」


 フィリア、私の妹だ。けど、ニッキとシナと同い年。っていうか、二人の方が誕生日が早い。私のウエディングすら見てないしね。なんだかごちゃごちゃ。
 あ、フィリアが来てるってことは、当然。


「お母さん、お久しぶりです」
「ジェイドさん、元気そうで。この子、大丈夫かしら?」
「あ、酷ーい。ちゃんともう女王なんだから、大人として頑張ってるもん!」


 私とマリンのお母さん。なんでいるんだろうね? 私が言いたかったのは、ナディアさんとスチュアートさんの方だよ? 居るけど。ハナはもうレルフィアに住み込みで私の専属メイドをやっている。スカーレット、インディゴと一緒に。


「私たちは、母上、父上とは血が繋がっておりませんわ。ですが、大切な両親。あと少し、生まれてくる子が楽しみですわ」
「うん、シナちゃんはしっかりしてるね。誰が躾けたのかな。に比べて、ニッキくん……」
「え? なにか言いましたか?」
「元がシナモンだから……。あの子も、私に逆らう子だったし」


 命令は、渋々聞く。私にも、あんまり敬語は使わない。ただし、ハナの前を除く。
 もう、そっくりじゃないか。でも、アリシアは、こんなだったのかな? 似てないんじゃ……。


「母上。どうかされましたか?」
「え? ううん。何でもないよ」
「ソフィアは座って。あ、フィリアちゃん、私の事覚えていますか?」
「ジェイドさん! お姉ちゃんの旦那さん!」


 フィリアちゃんはどっちかと言えばニッキに似てるだろう。うん。もっといえば、アルラウネたちそっくりだけど。
 アルラウネたちは、大人の姿になった。綺麗なお姉さんだ。だから、前の姿が懐かしいけど、もう見ることは叶わない。
 と思っていた矢先、これだ。もはやアルラウネを見ているようだよ。


「お姉ちゃん、私それ食べたい!」
「はぁい。どうぞ」
「ありがとう。お姉ちゃん大好き!」


 いや、ちょっと違うか。うん。でも、フィリアはちょっと子どもっぽすぎるかなぁ。










 私たちは、家のベランダで夕焼けを眺めていた。とっても綺麗。なんだか、トレアが居るみたいだね……。
 ちなみに、隣にはジェイド。なにも言わないで、じっと私の隣に立っていた。


「ニッキとシナも、いつかは、本当の事を知るんだもんね……」
「どうかしたんですか?」
「あの子たちって、獣人。だから、私たちより、ずっと早く死んでしまう」
「私たち、死にませんけどね」
「あはは。そうだけど、フィリアも含めて私たちだよ。なんだか、悲しいなぁ……」


 それで、私が勇者だって、死なないって知って。二人は、どうするかな。
 私が女王だってことは、当然知っている。けど、勇者だとは、まだ、言えていない。
 どうせいつかは、言わないといけないのに。ああ、なんでこんなに弱気なんだろう。


「お姉ちゃん、ちょっといい?」
「? あ、マリン」
「あ、フィリアちゃんもいるから、紛らわしい? でも、お姉ちゃんでしょ?
 って、そうそう。ゆきちゃんから伝言。シナちゃん、魔族の魔力が消えたって」
「えっ?」


 そういえば……。
 ついこの前まで、魔族そっくりだった魔力。最近は、それが薄くなってきていた。
 本当に、消えたんだ。私たちと、中和されちゃったかな。


「ダイアモンド様、こんな未来を、望んでいたんでしょうか」
「さぁ、どうだろう。でも、おそらく、私……、ソフィアはダイアモンド様の生まれ変わりだろうね……」
「ええ。複雑ですね。ですが、私は、もう、何でもいいです。好きなのは、ソフィアですから」


 ジェイドは私の頬にキスをした。もうすっかり慣れてしまったけれど、それでも、ちょっと嬉しい、かな。
 このベランダ、とっても広い。あ、そうだ。こんなに綺麗なんだ。今度、みんなで、夕焼けを見よう。
 っていうか、あれ? 何勝手にマリンは入って来たの?!


「マリン?! 違うでしょ、ゆきちゃん!」
「あら、もうばれてしまいましたの?」


 こんな所に勝手に入ってこれるのはゆきちゃんぐらいなものだ。
 って、ああ、そっか。シナは、この喋り方を真似してたのか。仲、いいのかな。


「折角擬態の練習をしていましたのに」
「マリンが此処に入って来れるはずないでしょ?」
「そういえば、そうでしたね。うっかりしていましたわ」


 この子が生まれてくるのは、いつかな。あと、数カ月か……。
 幸せは、いつまでも終わらない。そういうものだろうなぁ……。

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