金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第百二十二話  三度目の正直

 私はアイリスを呼んで擬態魔法をかける。
 羽の生えた私は、地面を軽く蹴って空に浮かぶ。悪魔の羽もそうだけど、羽が小さいから、地面を蹴る力で浮いて、そこから跳ぶのが基本になる。だから、ここが一番重要だったりする。


 私は空から城を見渡す。何というか、えっと、随分大きいね。ほんとに。
 羽を使って、私は空を移動していく。リリアーナたちが移動するのに合わせて。
 で、城に着いた時。まあなんと、中庭には大量の兵士がいるではないか。これは、すごい人数一気に行けるんじゃないか? 全ての魔法オール・マジックで、一発で仕留めてやろう。


 そう言えば。私がこの魔法を使えるようにするのは、本当に大変だったんだからね?










「ねえ、マリア。ちょっと相談があるんだけど」
「なんだ?」
「この杖なんだけどさ。すべての魔法オール・マジックに耐えられないの」


 最初の頃、杖を使おうとして、もう少しで破壊してしまうところだったのだ。
 杖というのは、魔力を魔石の中で増幅して放出するものだ。それを、ほんの一瞬で行う。
 けど、最初に入れた魔力に、魔石が耐えられない。増幅とか関係なく。初期段階でアウトなのだ。


「ああ……。じゃあ、ちょっと実験するから、こっち来い」
「? なあに?」


 マリアは大量の同じ杖を取り出した。魔法練習用の、安くて性能の悪い奴ね。
 これでマリアは私に神級を使ってみろと言ってきた。多分無理だと思うんだけど。大滝キャタラクト


「あいた?!」
「おお、割れた」


 火花が散って、私の手から杖が飛んで行った。電撃が走るような痛みに、私は思わず右手を抑える。
 だと言うのに、マリアが笑って感心している。本当に何なんだよ……。


「じゃあ、次はウォーターウォール
「わかったよ。杖貸して。……、いたっ!」


 やっぱり杖は弾け飛んだ。痛いんだけど、何がしたいんだろう。
 そう思っていると、マリアは杖の柄に何か文字を彫りこみ始めた。で、こっちに渡してくる。


ウォーターウォールを」
「分かったよ……。えいっ!」


 今度はちゃんと発動した。あと、ちょっとだけど魔力も増幅されてる。これは成功なんじゃないの?
 どうやら、増幅した魔力を少しずつ放出して、最終的に全ての魔力を集めるんだとか。杖の中には、量は違うけど、常に同じ大きさの魔力が入っている事になる。
 まあ、ちょっとずつ出しちゃうから、多少は威力が落ちるんだよね。


「ただ、神級は無理じゃないか?」
「えー……。やれって?」


 わざわざ痛みを感じる様なことしたくないんだけど?
 呪文を唱えると、案の定、強い痛みに襲われる。


「いたい!」
「ああ、悪かったな。もう少し我慢してくれ」
「次は何?」
「もうちょっと性能を良くしよう」


 そう言うと、次の杖に文字を彫りこみだす。さっきよりも長いみたい。
 今度は、大滝キャタラクトは問題ないのに、ウォーターウォールのみが弾かれた。


「え?! どういうこと?!」
「ああ……。ほら、この方法だと、威力下がるだろ? だから、魔法を限定してみようと思って」
「え?! そんなこと出来るんだ」
「だが、幾つも、というのは難しいな。ちょっと待ってろ、これで……」










 という事で、さんざん痛い思いをしてこの魔法をこの杖で使えるようにしたんだから。
 え? 大変なのはマリアだって? そんなこと言わないでよ。本当に痛いんだから。


 とにかく、私は濃縮した魔力を広範囲に撒くように、一斉に魔力を放つ。
 魔族の兵士は、何が起こったのか分からないまま、バタバタと倒れていく。


 でも、一応対策はしてあったみたい。平然としている人も結構いるね。でも……。
 マリアの活殺自在召喚魔法で行動力を奪われる。まあ、とりあえず動くなとでも命令しておけばいいんだろう。


 それでも対策があったのか、まだ生きてる人がいるね? もしくは、隠れてたのかも。私の魔法は視界に入らないと効かないし、マリアの魔法は自分で範囲を設定できるけど、効かなくする事も出来るし。
 そういう人は、リリアーナが連射した矢の餌食になった。ちなみに、睡眠薬が塗ってある。眠らせる事が可能なんだ。


 さて、そんな事をしている間に、ゆきちゃんによって扉が破壊された。さ、中に入ろう! 私たちは一斉に城の中に向かう。


「ソフィ、今の、すごかったね」
「あはは、ありがとう。リリ、タイミング良かったよ」
「そうかなぁ? マリの操るの、結構効いたみたいねぇ。ほとんど残ってる人いなかったしぃ」


 裏側で待機していた兵士を退治したジェイドとアルラウネたちも合流。アルラウネの姿がさらに大人っぽくなってる。小学生中学年って感じ?


「ボクたちも頑張ったよ」
「うん、ありがとうね!」


 中に入ると、そこは絢爛豪華な光景が。
 装飾品だけでなく、柱から、壁、カーペットまで全てのものが光っている。色は紫と黒で統一され、どこからどう見ても『魔王の城』ってか。


 私たちは大きなシャンデリアの光るエントランスを眺めてから奥の廊下に進む。紫色のカーペットが敷かれ、壁と床は黒で、大理石。ちょっと邪魔だけど、綺麗な柱が立っている。
 進んでいくと、大きな扉が現れた。ここに、誰かいる。強い魔力が感じられるからだ。
 中はどんな感じだろう? 多分、こっからが本番だ。外に居るのは下っ端。本当に強い人たちって言うのは……。


「勇者さん。お相手して差し上げましょう」
「アリシア……!」
「覚えててくれたんだ? ソ・フィ・ア・ちゃん」
「アリシアはテンション高すぎなの。もうちょっと大人しくするの」
「お前が大人しすぎんだろ?」


 アリシアと、そのほかにダークエルフ3人。厄介なのが来たなぁ……。
 このアリシアって、何度も戦ったけど、結局仕留められてないんだもん。そのレベルの人が他にも……。


「私、アリシアねー」
「私はセシリアです」
「私はエステルなの」
「私はマルセルだ」


 それぞれ、杖を構えてこちらを向いた。私たちを武器を構える。
 彼女らは、私たちを見て、ニヤッと笑う。


『お命、戴きます!』

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