金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第百十九話  出国です

「みんな、私が死んだとしても、やっていけるよね……?」
「そんなこと言わないの。大丈夫だから」
「でも……。ああ、ごめん。……なんか、ちょっと怖いかも」


 今から、魔族の国に向かっていく。辺りはもうすっかり紅葉している。秋だ。
 連れていくのは、ジェイドとアルラウネ、それから、ゆきちゃん。
 ゆきちゃんは、もう普通の雪豹の大きさになった。私の事を乗せる事も出来る。
 けど、それは滅多にやらない。どちらかといえば、敵を倒す方に出るから。
 あと、単純に私が嫌いだからっていうのもある。


 みんなが、国の門の前に立って、送ってくれる。クララとヴェリが代表で私を励ましてくれた。
 なんか、みんなの顔を見てると、このまま平和に暮らしてたい、行きたくないなって思っちゃうよ。
 それじゃダメ。分かってるけど……。正直、怖いよ。


「ソフィア、大丈夫。あれだけ練習したんだからさ。な?」
「わ、分かってるよ……。じゃあ、行ってくる!」


 私はローブの裾を翻して後ろを向いた。これ以上、みんなの顔を見てられないよ。
 走り出そうとすると、ゆきちゃんが向こうから走ってくるのが見えた。
 迎えに来てくれたんだ。私はゆきちゃんの頭を撫でて背中に乗る。


「じゃあね、頑張って!」
「分かってるよ! 行ってくる!」


 最後くらい、笑顔を見せよっか。一度固く目を閉じて。精一杯の笑みを浮かべ、振り返った。










「リリ、マリ、リナ、ジェイド。お待たせ」
「良いよ、大丈夫。さ、、行こうか」


 私たちはそういいつつ船に乗る。船は魔法で勝手に動く。お母さんたちが手配してくれた。相当高価な奴。でも、おかげで迷う事は絶対にない。
 ただ……。台風が来ない事を祈ろう。台風が来ると、狂う事があるそうだから。


「ソフィア様、大丈夫ですか?」
「だ、だめ……。朝から、ずっと……」
「大丈夫ですよ? 必ず私がお守りします」


 ジェイドはポンポンと私の肩を叩く。でも、朝から、震えちゃって、ダメだ。
 敵の陣地に向かっていくんだよ? 普通だったら……。死にに行くようなもんだ。特攻隊じゃないんだから。
 だからこそ、頑張って鍛え上げたんだし、大丈夫だと思いたいんだけど……。


「何か飲む? 平気?」
「あ、うん……。お願い」
「あんまり緊張しないでねぇ。大丈夫よぉ?」


 エベリナがハーブティーを入れてくれた。緊張を解くものだとか。
 あったかくて、ちょっぴり苦くて、美味しい。アニーシャの入れてくれたハーブティーを思い出す。


「昨日はあんまり寝れなかった……」
「そうだろうねぇ。ソフィ、昨日からもう怖かったでしょ?」
「一週間前から……」
「そんなに?!」


 一週間前から、もうずっとほとんど寝れてない。おかげで余計に気分がよくない。
 はぁ、とため息をつくと、みんなは心配そうな顔をする。私は慌てて笑顔を作った。


「だ、大丈夫だよ?」
「でも……。ちょっと寝れる?」
「え……? 平気だって」
「ボクたちが催眠魔法かけてあげるよ?」


 お言葉に甘えて、寝かせて貰う事にした。
 アルラウネの催眠魔法はとっても強い。これなら寝れるだろう。揺れるけど、まあ、それくらいなら大丈夫だろう。少しは気分がよくなると良いんだけど。










「あ、起きた? どう?」
「ちょっとは良いかも……。トレアが、言葉をくれた」
「何て?」
「安心して。負ける運命ではない、だって」


 トレアはそう言ってくれた。嘘かほんとか分からない。でも、そう言ってくれると、ちょっとは気が楽だなぁ。
 私がゆきちゃんを撫でると、ゆきちゃんは甘えた声を出す。で、そのまま膝に乗ろうとするけど、自分の大きさを考えてくれ。


「はぁ。なんでこんな事になるんだろう」
「仕方ないよ。魔王倒さないと、私たち死ぬ事になるし」
「そうよぉ。まあ、殺さないでも良いんじゃないかしらぁ?」
「ソフィの好きな、『平和』で済むといいのだが」


 うん……。そうだね。出来れば、殺したくないものだ。
 私、今までずっと考えてた。魔王って、何が目的で世界征服するのかなって。
 それで、思ったんだけど、もしかして、目的なんて、ないんじゃないかって。つまりは……。


「あ、ソフィ、警報なった」
「魔物……? 仕方ないなぁ」
 私たちは船の上の方に上がっていく。










「わぁ、すごい。イルカがうちあがってるね」
「いやいや、あれは鮫でしょ?」
「そう思いたくないからイルカって言ったのよぅ」


 そうでしょうとも。でも、あれは鮫だ。どうしようかな。
 とりあえず、アルラウネに吸い取って貰うのが手っ取り早い。
 と思ったのだけど、アルラウネたちは酔って寝ているようで。仕方ないから私たちで何とかしよう。
 そう思っていると、ジェイドが雷系の魔法を一発撃った。それだけで慌てるように鮫は海に戻っていった。


「こういう魔物は、悪気はないんでしょうし、威嚇して返すのが一番です」
「ジェイド……。うん、そうだね」
「なんだか、ジェイドさん変わったね」
「そうねぇ。ソフィは、ジェイドさんの中では大きいのねぇ」


 ジェイドの変化が、素直に嬉しい。ちゃんと生き物を『殺さずに』帰すなんて……。前だったらあり得ない。問答無用で笑いながら殺していたことだろう。


「ジェイド、頑張ろうね」
「ちょっとは緊張解けました? まだ暫く着きませんけどねー」


 うん、どれだけの魔物が襲ってくるんだろうね?

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