金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第百十八話  スライムの強さ

「えっと、何から話せばいいかなー?」
「知ってる事、少ないけど」


 エリシュカとヤルシュカが困った顔をしている。そういえば、2人はどうしてあそこに居たのか詳しくは知らないんだったね。でも、私は話す気全くない! あんな事話すもんか!


「何て、嘘だよー? 実はね、女王様に聞いたの」
「残念だね、お姉ちゃん」
「え、へ? あ、ああああ?!」


 嘘だろ?! まじで、止めて欲しいんだけど! そんな風に笑わないで!
 結局、エリシュカが全て説明してしまった。


 ドラゴンと戦っていた事。
 うっかり崖から落ちた事。
 海のニュンペーが助けてくれた事。
 スライムの国に流れ着いた事。
 杖を落として、女王様を呼んだ事。
 スライムの国を案内した事。
 スライムと契約を結んだこと……。


「何て危ない事を!」
「なんで一人で行ったの?!」
「エリシュカ! ヤルシュカ! なんで言っちゃったの?!」
「あははー」
「あははー」


 怒るに怒れない所が……。なんて可愛い奴……。
 仕方ないか。いつかばれると思ってたし。こんな形だとは思いもしなかったけど。


「私たちは、ほんとはすごく強いの」
「国一つ滅ぼせる」
「だけど、その能力は封印されちゃってる」
「目覚めるのは、敵意を持った時のみ」
「だから、あの魔族は、私たちは敵意を持ってるって気が付いたから、逃げちゃったの」


 どうやら、スライムというのは、どんな形にもなれるから、本当は無敵なんだそう。
 ちなみに、、スライムには感情が少ない。ヤルシュカみたいのが多くて、エリシュカみたいなのは珍しいとか。
 だから、敵意を持った時のみ、というと、すごく弱くなってしまう。だから、弱いと思われがちだとか。
 人が捕まえる時は、感情を抑制するという薬を使うらしい。どんなものかまでは分からないけど。そうすれば、本当の力は使えない。ただ存在しているだけになってしまう。


「例えばね、人を溶かしちゃうことだってできるよ」
「もしくは、固くして砕く事も可能」
「へぇ……。敵に回したくはないね」


 でも、味方になったら、とても強い。魔族に敵意を持ってるこの子たちは、絶対に役に立つだろう。この子たちも、親を殺した魔族を許すはずがない。私だったら何が何でも許さないね!


「にしても、スライム娘なんて、初めて見たよ」
「私も。可愛いね」
「剣士のお姉ちゃん、シーフのお姉ちゃん、私たちも、こんなに姿見せたの初めてだよ」
「いつもは、隠れてるから」


 この子たちの家には、船はたどり着けないしね。来たとしても、隠れてるだろうしね……。
 きっと、たくさん大変な事があったんだろう。でも、笑って過ごせるヤルシュカは本当に強いと思う。


「でも、私たちは、家を離れられない」
「うん。お母さんとお父さんの大切な場所。何があっても、守りたい」
「そう、だね。ごめんね、急に呼んじゃって」
「ううん、大丈夫。じゃあね!」


 2人は移動魔法で飛んで行った。帰ったんだろう。早いなぁ。今来たのに。
 でも、2人も忙しいんだろう。たくさんスライム呼んじゃったし、みんな帰らすのは大変なんだろうなぁ……。


「あの子たち、どうしてあんなに辛そうなの?」
「え……? あ、あの子たちは、両親を魔族に殺されてるんだ……」
「だから……」


 クララの質問に、私は思わず耳を疑った。辛そうだなんて、あの一瞬で……?
 そんな風に、見えたかな? ヤルシュカはまだしも、エリシュカは……。でも、クララはあの子たち、って言った。


「なんか、ちょっと、不自然な笑顔じゃない? 最初はスライム娘だからかなって思ったんだけど」
「そうだった? クララはよく見てるね」
「えっ?! ルアンナは気が付かなかったの?!」


 普通は気が付かないと思うけど……。クララって、そういうところ、気にしなさそうで、意外とよく見てる。私も、ドキッとした事何度もある。隠し事ができない。
 まあ、私もクララにそう言われるっけ? 確かに、私はリーダーの事、よく見るようにしてるけど。


「ソフィア様、そんなに心配しなくても平気ですよ。あの子たちは、ちゃんとやっていけてるんですよ」
「ジェイド……。そう、だよね。うん」
「ソフィア様は、何事も心配し過ぎですよ。ほら、気楽に行きましょう」


 そうだね。そこまで気にしなくてもいいのかな。
 今まで、あの子たちは、たった二人で暮らしてたんだから。大丈夫だ。


「にゃーん」
「ゆきちゃん……。うん、大丈夫だよ」


 私はゆきちゃんの頭を撫でる。ゆきちゃんは気持ち良さそうに膝に顎を乗せて寝てしまった。
 ああ、シナモンとは性格が違うな。シナモンは、もっと忠実で、積極的だった。この子とは違う。


 そうだね、十人十色。みんな同じわけない。みんなの事、そんなに気にしないでも、いいのかな。
 きっと、1人でもみんなやっていけるんだろう。それでも、私に協力してくれる。


「……。なんだか、ありがとう」
「……? ソフィアは変わってるよね。みんな、ソフィアの事見てるよ?」
「ヴェリ……。まったく! わかってるよ!」


 私がみんなの事見てるって事は、みんなも私の事見てるってことだよね!

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