金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第百十二話  スライム娘

「あ、お姉ちゃん、大丈夫?」
「お姉ちゃん、生きてる?」
「うっ……、あ、此処どこ?」


 私が目を覚ましたのは、木造の家のような所。ちなみに言うけど、全く知らない。
 何があったっけ? ああ、海に落ちたんだったか。よく生きてたなぁ。
 周りには2人の女の子。だけど。明らかに私たちとは違う体をしている。


「スライム……?」
「よくわかったね。エルフのお姉ちゃん」


 これか。前に言っていた『スライム娘』。青くて透き通った体をしている。
 どこまで流されたんだよ。って言うか、私、それでなんで生きてるの?!


「海のニュンペーがね、お姉ちゃんを運んでくれたんだよ」
「この子、神の子、って」
「崖から落ちた。あの崖にはもう登らせちゃだめだ、っていってたよ」


 ニュンペー、あ、ニンフか。そっか、精霊であると同時に、下級女神。私を知っていても不思議じゃない。
 助けてくれたって言っても、どうやってお礼したらいいんだろう。さすがに、そのままってわけにはいかないよね。


「怪我、大丈夫?」
「痛くない?」
「ん? あ、平気だ。治してくれたの?」


 私がきくと、2人はこくっと頷いた。
 にしても、こんなところに居たら、余計に迎えは来ないだろうなぁ。ジェイドがここに居る私を見つけるなんて考えにくい。


「お姉ちゃん、此処、初めて?」
「そうだよ、来てみたかったんだけど、いろいろあって」
「じゃあ、案内してあげる! こっちこっち!」


 その子たちは楽しそうに歩いて行く。どうやら、ベッドに寝かせてくれていたみたい。親切だなぁ。私はそこから起きて、2人について外に出た。
 と、そこまで来て、ある事に気が付いた私は、石化したように足を止める。


「ど、どうしたの?」


 そうか、海、か。海に流されてた時の事なんだろう。
 私の杖が無い。どこかで落したんだろう。でも、もう見つけられるはずがない。海だろうから。
 どうしよう……。リナがくれたのに。結構、高い、いい杖なのに。あれだけ、使い込んだのに。


「何か、なくしちゃったの?」
「杖が……。虹色の石が付いたの……」
「杖……? エリシュカ」
「分かってるよ、ヤルシュカ」


 2人は海に向かって駆け出した。水面に手を近付け、目を閉じる。
 しばらくすると、大きな女の人が登場した。これが、この世界の神話に出てくる、海のニンフの女王?


「お姉ちゃんが杖落しちゃったみたい」
「みてない? 七色の石の杖」
「杖ですか。スサン!」


 女王の言葉に、1人のニンフが登場した。手に何か持ってるみたいだけど、よく見えないなぁ。
 すると、2人のスライム娘は私を手招きして呼ぶ。見つかったのかな?
 そこにあったのは、まちがいない、私の杖だ。綺麗な石の輝きもそのまま。


「あなたが探している杖とは、これの事でしょうか。海底に落ちていましたよ」
「あ! そうなんですか?! すみません」
「早く持ち主が見つかってよかったです。最近は物を海に捨てる方も多くいらっしゃるので、またそうかと、処分してしまうところでした」


 そうか。捨てて行く人も居るんだ。もうちょっとで処分されちゃうところだったなんて、見つかってよかった。
 私が杖を受け取ると、ニンフの女王は水の中に戻っていった。本当に一瞬しか見れなかったなぁ。


「良かったね」
「良かったね」
「うん、ありがとう。エリシュカとヤルシュカって言うんだ?」
「そうだよ」
「そうだよ」


 この子たちが呼んでたんだし、間違ってないと思うけど……。一応確認しておいた。
 ツインテールの子がエリシュカ。表情が豊か。可愛い声で喋るんだ。
 セミロングの髪の子がヤルシュカ。表情はあまり無いように見える。


「私がお姉ちゃんなの。二人で住んでるの」
「エリシュカの妹。エリシュカ、好き」


 姉妹だったのか。この子たちの似てる似てないの違いもよくわかんないけど、とりあえず似てるんだろう。ヤルシュカがエリシュカの手を握る。エリシュカはヤルシュカの頭を撫でて、私の方を見てにこっと笑った。










「この村のスライム娘も、私たちだけになってしまった」
「ここにはたくさんの人が流れ着くからね、珍しいからって、連れてかれちゃうんだ」
「そう、なの……?」
「もうちょっと奥の街には、たくさんいるみたいだけど……。でも、私たち、ここは、離れられないんだ」


 エリシュカは、ちょこっと俯いて悲しそうな顔をした。ヤルシュカも、エリシュカの手を強く握る。
「ここは、お母さんとお父さんの思い出の場所。それから、亡くなった場所」
「お母さんとお父さん、船から降りてきた魔族に、殺されちゃったの……」


 なんてことを……。こんな、小さい子の、親を……。
 どうやら、2人を守って死んでしまったようだ。魔族の冷酷な性格は、もうさんざん知っている。
 この村から離れたくない2人は、ニンフに頼んでこの村にたどり着けないようにして貰ったらしい。


「でもね、お姉ちゃんだけなんだ、その後、ここに来れた人」
「多分、悪い人じゃない」
「……、私の事、信じてくれるんだ。ありがとう」


 歩いていると、たまにどろっとしたスライムがいる事があった。ちゃんと生きている彼ら。2人の事を見ると、襲い掛かっては来なかった。
 青、赤、黄、緑、水色、桃色、黄緑、紫、茶色、黒……。沢山の色のスライムがいる。


「そうだ、お礼に、この村のスライム達と、契約結んでよ!」
「お姉ちゃんなら、大丈夫」
「いいの? ありがとう。どうやってやるの?」


 2人に教わって、スライム達と契約を結んだ。何かあった時、助けてくれるらしい。
 何に役立つのか、どうやってくるのか、教えてはくれなかったけど。何か使えるのかな。


「じゃあね、お姉ちゃん、バイバイ!」
「さようなら、お姉ちゃん」
「うん、ありがとう。じゃあね!」


 私は夕方になってから、移動魔法を使って家に帰った。

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