金髪、青目の美人エルフに転生!
第百八話 ジェイドの本心は
「やっぱり言えません!」
「うわっ!」
ジェイドの目の前のコップが音を立てて割れた。うっかり倒してしまったから。
ただ、触れてないけどね。感情が大きく動いたから、魔力も大きく揺れた。その波動で。
ジェイドにしては珍しい失敗だ。しかも、それは全く気にしないで立ち上がった。
「ここまで言ったのに、ごめんなさい! 私、言えません!」
「うん、ジェイド……。いいよ、ごめん」
ジェイドの表情。それから、さっきまでの話で、だいたい想像はついていた。
まあ、仕方ないだろう。魔族ってことは、私が子孫を殺してしまったかもしれないし、もしかしたら、ジェイド本人が、気が付かないで殺してしまったのを、知っているという可能性もある。
ここまで、ちゃんと言ってくれた事は、立派だよ。それだけで、十分だ。
ジェイドは急に我に返ったようで、今、コップに気が付いたよう。
「あ、コップ……。すみません」
「いいよ。こっちも、ごめん。なんか、無理に言わせちゃったかな」
「いえ……。言う、つもりでした。でも、ダイアモンド様……」
ジェイドはそのまま泣きだしてしまった。もしかしたら、ソニア様たちに、殺されちゃったんじゃ……? だから、まだ待って、といったのかもしれない。心の準備が、必要だと。
でも、それなら、私にここまで従ってくれるのは?
どうしていいのか分からない私は、とりあえずコップの破片を集めて、端に寄せ、零れた水を拭きとっておいた。中身が水でよかったと考えるべきだろう。
ジェイドはテーブルに突っ伏して泣き続けている。とりあえずは、干渉しないでおこう。その間に、私の考えをまとめる。
ジェイドが、ここまで私に従ってくれたのは、本当にどうしてだろう。
魔族と完全に敵対した私。一緒に居て、辛い思いした事、あったんだろうな。出て行きたくなった時も、あったんだろうな。その、ダイアモンド様? の事を思い出して、こうやって、涙を溢した事も、あったんだろうな。
……、あれ? ダイアモンド様? 主人って、女の人?
もしかして、私と、その主人を重ねて……。だから、こんなに、大切に、大切にしてくれるのかな。
きっと、守りたくても、守れなかったんじゃないかな。もっと酷ければ、目の前で……?
あ……。だから、こんなに。自分を犠牲にしてでも、私を守ろうとしてくれたの?
――もう二度と、大切な人を、失いたくない。守りたい。
初めて、ジェイドの事、ここまで考えたかも。いつも、軽く考えちゃってた。
近すぎたのかもしれない。当然のように、隣にいた。呼べば必ず、ここに来た。何かあったら、守ってくれた。いつも、笑ってた。
そう、当然のように。
なんで気が付かなかったんだろう。ジェイドは、私の事、本気で、好きだったんだ。
そう考えれば、あの時も、あの時も……。
全ての記憶がよみがえって来て。全ての記憶に意味があって。
全部、私の事が、好きだったからこそ、行った行動だ……!
「ごめん、本当に、ごめん! でも……。もうちょっと、待ってくれるかな」
「……? な、なにを……?」
「顔上げて。大丈夫、勝手にいなくなったりしないからさ。あと一年。待ってね」
遠回しだし、少ない言葉だったけど、理解したよう。こくりと頷くと、袖で涙を拭って、ちょこっと笑って見せた。
何があっても、勇者としての務めは、果たさなくちゃいけない。それまで、待っててくれるかな……。
「ソフィア様。ジェイドの事、気が付かなくて、すみません」
「スカーレット。良いよ、本人の口から聞いた方が良い」
「そうですけれど、近くに居たのに、主人がいたなんて、気が付かなかった」
扉をあけると、スカーレットがちょっと困ったように笑って立っていた。
気づいていたよ。居た事は。それを、アリアンが注意しようとして、やめた事もさ。全部、気づいていたよ。
だけどさ、ちゃんと分かってたから。
ジェイドが、外でこっそり聞いていたスカーレットに、ゆっくり、聞かせるように喋っていた事を。
――ちゃんと、理解してくれる事を願いながら。
言わなきゃいけないって、思ってたんだろうな。
ジェイドの主人、ダイアモンド。もう、1000年も前の事だし、生きているとは到底思えない。
……、いくら魔族が長生きだからって、普通に考えて、それはない。
でも、私がその代わりになってあげられるのなら。それは、喜んで引き受けよう。
今まで、あんなに私の事を思ってくれたジェイドの気持ちは、絶対に、無駄にしない。必ず、返す。
だから、その時まであとちょっと、ちゃんと、そばに居てくれるよね。
ジェイドは、急に離れたりなんか、しないでしょ……?
「うわっ!」
ジェイドの目の前のコップが音を立てて割れた。うっかり倒してしまったから。
ただ、触れてないけどね。感情が大きく動いたから、魔力も大きく揺れた。その波動で。
ジェイドにしては珍しい失敗だ。しかも、それは全く気にしないで立ち上がった。
「ここまで言ったのに、ごめんなさい! 私、言えません!」
「うん、ジェイド……。いいよ、ごめん」
ジェイドの表情。それから、さっきまでの話で、だいたい想像はついていた。
まあ、仕方ないだろう。魔族ってことは、私が子孫を殺してしまったかもしれないし、もしかしたら、ジェイド本人が、気が付かないで殺してしまったのを、知っているという可能性もある。
ここまで、ちゃんと言ってくれた事は、立派だよ。それだけで、十分だ。
ジェイドは急に我に返ったようで、今、コップに気が付いたよう。
「あ、コップ……。すみません」
「いいよ。こっちも、ごめん。なんか、無理に言わせちゃったかな」
「いえ……。言う、つもりでした。でも、ダイアモンド様……」
ジェイドはそのまま泣きだしてしまった。もしかしたら、ソニア様たちに、殺されちゃったんじゃ……? だから、まだ待って、といったのかもしれない。心の準備が、必要だと。
でも、それなら、私にここまで従ってくれるのは?
どうしていいのか分からない私は、とりあえずコップの破片を集めて、端に寄せ、零れた水を拭きとっておいた。中身が水でよかったと考えるべきだろう。
ジェイドはテーブルに突っ伏して泣き続けている。とりあえずは、干渉しないでおこう。その間に、私の考えをまとめる。
ジェイドが、ここまで私に従ってくれたのは、本当にどうしてだろう。
魔族と完全に敵対した私。一緒に居て、辛い思いした事、あったんだろうな。出て行きたくなった時も、あったんだろうな。その、ダイアモンド様? の事を思い出して、こうやって、涙を溢した事も、あったんだろうな。
……、あれ? ダイアモンド様? 主人って、女の人?
もしかして、私と、その主人を重ねて……。だから、こんなに、大切に、大切にしてくれるのかな。
きっと、守りたくても、守れなかったんじゃないかな。もっと酷ければ、目の前で……?
あ……。だから、こんなに。自分を犠牲にしてでも、私を守ろうとしてくれたの?
――もう二度と、大切な人を、失いたくない。守りたい。
初めて、ジェイドの事、ここまで考えたかも。いつも、軽く考えちゃってた。
近すぎたのかもしれない。当然のように、隣にいた。呼べば必ず、ここに来た。何かあったら、守ってくれた。いつも、笑ってた。
そう、当然のように。
なんで気が付かなかったんだろう。ジェイドは、私の事、本気で、好きだったんだ。
そう考えれば、あの時も、あの時も……。
全ての記憶がよみがえって来て。全ての記憶に意味があって。
全部、私の事が、好きだったからこそ、行った行動だ……!
「ごめん、本当に、ごめん! でも……。もうちょっと、待ってくれるかな」
「……? な、なにを……?」
「顔上げて。大丈夫、勝手にいなくなったりしないからさ。あと一年。待ってね」
遠回しだし、少ない言葉だったけど、理解したよう。こくりと頷くと、袖で涙を拭って、ちょこっと笑って見せた。
何があっても、勇者としての務めは、果たさなくちゃいけない。それまで、待っててくれるかな……。
「ソフィア様。ジェイドの事、気が付かなくて、すみません」
「スカーレット。良いよ、本人の口から聞いた方が良い」
「そうですけれど、近くに居たのに、主人がいたなんて、気が付かなかった」
扉をあけると、スカーレットがちょっと困ったように笑って立っていた。
気づいていたよ。居た事は。それを、アリアンが注意しようとして、やめた事もさ。全部、気づいていたよ。
だけどさ、ちゃんと分かってたから。
ジェイドが、外でこっそり聞いていたスカーレットに、ゆっくり、聞かせるように喋っていた事を。
――ちゃんと、理解してくれる事を願いながら。
言わなきゃいけないって、思ってたんだろうな。
ジェイドの主人、ダイアモンド。もう、1000年も前の事だし、生きているとは到底思えない。
……、いくら魔族が長生きだからって、普通に考えて、それはない。
でも、私がその代わりになってあげられるのなら。それは、喜んで引き受けよう。
今まで、あんなに私の事を思ってくれたジェイドの気持ちは、絶対に、無駄にしない。必ず、返す。
だから、その時まであとちょっと、ちゃんと、そばに居てくれるよね。
ジェイドは、急に離れたりなんか、しないでしょ……?
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