金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第九十一話  アルラウネの戦闘能力

「えっとねー、ボクがオレガノー」
「ボクミントー」
「ボクはジャスミンー」
「ま、待って! もう一回、ゆっくりやって」


 名前は、アロエ、オレガノ、カモミール、バジル、パセリ、マロウ、ミント、ラベンダー、レモン、ローズだ。みんなハーブじゃないか。
 ただ、正直違いがわからない。そっくりなんだもん。どれが誰だか。


「じゃー、覚えなくていいから、あそぼー!」
「え?! ちょ、助けてー!」


 十人掛りで私を外に連れ出そうとしている。さすが神級魔法の子。強すぎる。


「ははは。ソフィ、大変だね」
「ふふ、いっつもそんな感じじゃなぁい?」
「それは知らんが、ソフィはいつも名前覚えるのに苦戦してるよな」
「どうでもいいから助けてよー」


 なんでいま外に行かなくちゃいけないんだよ。あれだけ戦ったんだから休みたいじゃん。
 っていうか、いま外に出たら遊ぶどころじゃないと思う。エルフの森よりひどいことになるだろう。
 超強いドラゴン5匹倒した人が歩いてるんだぞ? 声かけないはずがない。


「今は、休ませてー。私、もう疲れたー」
「えぇー。ご主人様、あそぼーよー」


 いーやーだー。何とかしてよ、笑って見てないで! と言いたいが、言っても無駄だろう。
 っていうか、なんでこの子達はこんなに私に依存している? 私の魔法だからか? どうでもいいけど、こんなになつかれたって困る。


「仕方ないなぁ。みんな、今みんなが遊ぼって言ったら、ソフィ、みんなのこと嫌いになるってよぉ?」
『えぇ?!』


 アルラウネたちが一気に手を離すから、私はそのまま倒れた。


「うわあ?! ごめんなさい!」
「いたた……。いいよ、気にしないで。それより、そんなに私のこと好き?」
「うん! とっても好き!」


 これはダメだ。生き物に好かれるって、アルラウネも含まれるのか? それだったら、魔物に好かれてもいいような気もするが。
 って、アルラウネって魔物か? うーん、よくわからない。










「きゃああああ!」


 その日の夜、劈くような悲鳴で目が覚めた。時間は……。午前一時。
「な、何ぃ……?」
 リリアーナが目を擦りながら起きた。そりゃ、起きるよな。


「女の人の声だよね。って、アルラウネたちは?!」
 まさか……。そんな……。
「え? あ、ちょっと! ソフィってばぁー」










「…………え?」


 扉を開けてすぐ、廊下で女の人が青い顔で座っている。私を見つけると、口をパクパクさせながら前を指す。
 その指の先を見た私は、驚いて固まった。


「むうううう! ボクたちのご主人様に何しようとしたの!」
「はぁ? 誰が主人だって? あんた、何言ってんの?」


 真っ暗でわかりづらいが、一人のアルラウネが対峙しているのは、赤く染まったナイフを持った女の人。
 赤いのはなぜか。理由を探ろうとしてよく見てみると、肩から出血しているアルラウネがそこで蹲まって震えていた。


「隠しても無駄! ご主人様の部屋に入って、ナイフ付き立てようとしてたのは、誰なの!」
「はぁ? だから、何言ってんのよ。どうして勝手に悪人にされなきゃいけないわけ?」


 よく見てみれば、たくさんのアルラウネがその女の人を睨んでいる。どういう状況……?
 でも、このまま乱入したらまずいような話がされている。


「わかってるの! 魔王からの刺客でしょ! ご主人様を殺そうとしてた!」
「だから、証拠がないでしょ?!」
「あるよ。だって、どうしてレモンちゃんの肩切ったの?」


 魔王からの、刺客? え、私を、狙ってたの?
 私のせいで、この子は、痛い思いしてるの……?
 そんな……。どうして、私の周りは、いっつも悪いことばっかり起きるの? さすがに、恨むよ、神様……。


「わ、私は! いきなり出てきて驚いただけ!」
「ちがう! すごい、殺意があった。暗くて、刺すところがずれただけ!」
「そう、バジルちゃんの言う通り。殺意、絶対あった!」


 わぁわぁとアルラウネたちの援護が入る。明らかに動揺してきた女の人。


「あ、のさ? 何が、起こってるの?」
「ご主人様! 魔族だよ! ご主人様を殺そうとしてた!」
「びっくりして、レモンちゃんが止めようとしたの」
「でも、怪我負っちゃって。とにかく、廊下に出たの!」


 な、なんだなんだ? とにかく、私のことを殺すためにこの人は来たの? アルラウネたちは、私を守ろうとして、外でやりあってるの?


「ソフィア……。分が悪いな。一旦引く」
「させないよ! それ!」


 アルラウネの一人が女の人に向かって何か光線を撃った。当たってすぐ、その場に倒れこんだ女の人。殺してなんて、いないよね?
 そっと見てみると、寝ているだけのようだ。催眠、かな?


「ご主人様! レモンちゃんが!」
「だい、じょうぶ……。気にしないで」


 そうは言っても、この傷は見ているこっちが辛い。上回復アドヴァンストヒール
 傷を癒すと、安心したかのように眠ってしまった。


「レモンちゃん、大丈夫なの?」
「うん。平気。それより、ありがとう。助けてくれたんだよね?」
「だって、ご主人様が死んじゃったら、ボクたちも枯れちゃうんだよ」


 え。あ、そういうことだったのか?!

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