金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第八十八話  お助けください、勇者様

「お助けください、勇者様! ドラゴンが現れました!」
「……はい?」


 宿に、ほんと急に兵士がなだれ込んできた。ドラゴンって、あの、ドラゴン?
 あまり強い記憶はないけれど、たまたま会ったドラゴンが弱いだけかも。気をつけないとだね……。


「いこうよぉ。ここまで尽くしてもらったんだしぃ」
「そうだな。じゃあ」
 兵士はホッとしたような顔をして私たちの反応を見ていた。
「では、こちらに来てください」










「うわあ……。これは随分ひどいね」
 エベリナが嫌そうに呟く。確かに、このドラゴンは大きい。その上、戦っているのは小人と来たもんだ。勝てるわけないよね。


「で、状況は?」
「はっ! 山からドラゴンが降りてまいりました! 頭数は、五頭!」
「はぁ?!」


 マリアが呆れたような、驚いたような声を出す。五頭って、ちょっと厳しくないか……?
 ともかく、普段山に住んでいるはずのドラゴンがなぜか降りてきて、なんとか街に着く前に食い止めたいのだそうだ。


「なんで降りて来たの?」
 エベリナが言うと、兵士はちょっと目をそらした。おいおい、何をしたんだ?
「どうして?」
 エベリナはにっこり笑ったまま圧を掛けるように脅していく。兵士が折れた。


「冒険者が禁止された山に入り、そのまま連れてきてしまったそうです」
 おい! 冒険者! なにやってんだよ。で、その冒険者はどうしたの?
「行方不明です、逃亡したかと」


 もう……。でも、小人の人も困ってるし、助けないのは、可哀想だよね。
 ましてや冒険者のせいとなれば……。ここの人のせいじゃないなら、助ける。


「わかった。やってみるね」


 私が言うと、マリアはため息をついて私を見た。『お人好しなやつだな』とでも言いたそうな……。でも、そんな視線は気にしない。
 さて。では、なんとかしないとね。どの魔法なら倒せるんだろう。
 とりあえず、被害が少なそうな魔法を撃ってみるか。


「みんな! ちょっと避けてて! 硬石弾ダイヤブレッド!」


 これなら狙いもつけやすいし、範囲攻撃じゃない分被害は少ない。
 地鳴りのような悲鳴が響く。私はびっくりして耳を塞いで蹲った。なんて声……。


「大丈夫ですか?! 勇者様!」
「大丈夫。まだ倒せないね。じゃあ……。ちょっと広いから気をつけて! 大滝キャタラクト!」


 急いで立ち上がって杖を構えた。素早く魔力を集めて大滝キャタラクトを発動させる。これも、被害は出にくい技だ。
 もうちょっとって感じかな。私がもう一発何か撃とうとしたとき。


「ぐ、ぐああああ!」
「おい、大丈夫か?!」


 一人の兵士に、ドラゴンの爪が突き刺さった。何が起きたのかわからないくらい、一瞬だった。


「えっ?! 嘘?!」


 ドラゴンは、急に凶暴化したのだ。ゲームじゃないんだから。体力が減ってくると暴れだすなんてさ。


上回復アドヴァンストヒール! 大丈夫ですか?!」


 エベリナの上回復アドヴァンストヒールの詠唱が完了したようだ。だいぶ省略できるようになったみたいで早い。そのおかげで、その人は助かったようだけど……。


「なんでこんなに強くなった……。これじゃあ、被害が……」


 私が呟くと、周りの兵が私に縋る様な目で見ていた。諦めるなんて選択肢はないようだね。


「本気で行く。下がってなさい! 危ないからね!」
 私は叫び、魔力をすべて開放した。辺りが真っ赤に染まっていく。夕焼けのようだ。
「こ、この魔力は……?!」


 私は目を大きく開いて魔力を集中させる。ちょっと危険な技だけど、この際気にしてられない。猛火ローリングフレイム! マックスまで火力を上げる!
 跳ね返しがかかっているようで、すごく重い。私は魔力を集中させたままだけど、ジリジリと後ろに押されている。


 でも……。私は、みんなのために、負けるわけにはいかないんだ!


 一気に魔力が上がったのが感じられた。さっきのような大きな衝撃が走り、ドラゴンは吹き飛ばされる。頭を狙って、硬石弾ダイヤブレッド
 地響きのような鳴き声がまたも響く。今度はもっと大きい。最前線にいた私は思わずバリアを張るくらいの大きさだ。


「大丈夫ですか?!」
「うん。それより、後ろに被害はない?!」
「大丈夫です! 勇者様のおかげで、怪我人はいません」


 そう、良かった。でも、思っていたより魔力を使ってしまった。杖を地面に少し刺して息を整える。


「ソフィ、大丈夫か?」
「うん。ねえ、あとの四頭は?」
「! そうだな。だが、ソフィ、今のままだと、危なくないか?」


 それもそうだ。最高の状態であれだけ苦戦したのに、この状態であと四頭……。
 ああ、そう考えただけで疲れてくるじゃないか……。


「大変だ! ドラゴンの一頭が畑まで行ってしまう!」
「あ……。大丈夫だよ、行ってくるね」
「おい、ソフィ?! 少しは休んだほうが」


 私は最後まで聞かずに歩き出した。兵士に場所を教えてもらうために。


「今行くから。その畑の場所はどこ?」

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