金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第八十五話 初めての船

 あれから時間は流れ、暖かくなってきた頃、私たちは船に乗り込んだ。
 つまり、人間の国を出るのだ。滅多にイベントもなかったし、平和だったし、楽しかった。


「ソフィ、いよいよだねぇ」
「ああ。そういえば、船に乗ったことはないな」
「そうね」


 二人共さっきから全然落ち着かない。聞いてるこっちは迷惑だ。同じ事の繰り返しだから。


「あの、ソフィア様。大丈夫です?」
「何が?」
「いや、こんなのずっと聞かされたらたまんないな、と思いまして」


 ということで、ふたり揃って海を見ると言って逃げることになった。










「おお……。綺麗……」
「まあ、ずっと眺めてたら飽きるでしょうけど」


 それもそうか。嫌でも見なきゃいけなくなるのか。それもちょっとなぁ……。


「出発しますよ、ソフィア様」


 船長が恭しく話しかけてくる。そういえば、本当は普通の船に乗るつもりが、特別に貸切になった。
 ……なぜだかは私でなく船長に聞いてくれ。
 とりあえず戻ることにして、部屋に行くと、だいぶ広い。


「なんか、ずいぶん立派ね」
「そうですね。とりあえず、マリア様たちのいる部屋に行きましょうか」










「あ、おかえり。どうだった?」


 リナが興味津々というように聞いてくる。どうといってもなぁ。


「綺麗だったよ」
「そう。これ、魔物出るのかなぁ?」


 ……! あ、そうか。魔物、ね。うん、出るかも。


「ひいぃ! 誰か、助けてくれ!」
「あ……」


 おいおい、勘弁してくれ。










 大量のサメが甲板に打ち上がっていて、船員が慌てている。


「あぁら。ソフィ、なんとかなる?」
「えぇ?! 甲板ごとぶち壊していいなら」
「ちょ、それはダメ」
「分かってる。出来るよ」


 出来るって分かってるからこうやって振ってくるんだけどね?
 ああ、めんどくさいなぁ。なんで私がやらなきゃいけないのさ。
 草光線プランツビームを根に設定する。草属性の魔法は、葉、幹、根があるのだ。


 葉は、刺のある葉が大量に出てくる。チクチク痛い。
 幹は、木の枝のように硬い細長いものが出てくる。
 根は、ドレイン効果がある。


 ということで、敵すべての体力を奪い取ってやればいい。そうすれば、甲板に被害はないはずだ。


「みんな、避けててね? 草光線プランツビーム!」


 大きな光線を放つ。光線に当たったものは、みんな体力を吸い取られる。ちなみに、魔力にすることも可能。


「おお! ありがとうございます! 助かりました!」
「さすがはソフィア様!」
「あはは、よかったねぇ、ソフィ」


 あまり嬉しくないのはなんでだろ? 働いた気がしないからだろうか。簡単すぎた。










 部屋に戻ると、船がだいぶ揺れ始めた。


「あう……。ソフィ、リリ、マリ、船揺れるね」
「そ、そう、だな……」


 揺れる揺れる。これは絶対に酔うな。そういえば、ジェイドは大丈夫なんだろうか?
 ……飛んでた。そりゃ、揺れは感じないだろうよ。


 にしても、これは酷いなぁ。どうして急にこんなことに?
 な、なんか、外が真っ暗な気がするんですけど、気のせいですか?


「台風、ですかね? なんか、運悪いですね」


 ごめん、多分、私のせいだ。謝れるような状況じゃないけど。










 地獄雨ヘルレインの応用編。雨を晴らす。


 仕方なく、甲板に上がってきた私を見た船員は、慌てて戻る様に言ってきたが、私は気にしないで天に手を向け魔法をかけた。
 おかしいな……。誰かに妨害されている? やっぱり、これ、意図的に降らせてるんじゃ……? 私は込める魔力を増やした。


 まあ、なんとか雨は上がった。ついでに、風もおさまった。
 何とかなったようだな。……もどるか。もう大丈夫だといいんだけど。


 気のせいか? なんだか、後ろからびちゃって音がしたような……。
 振り向きたくないなぁ。走って逃げちゃ駄目だろうか。


「イルカだ!」
 ああ、なんでこんなことに! 草光線プランツビームでもう一度倒す。


 え、え、え、え! 次から次へと降ってくる。ああ! 誰か手伝ってよ!
「うわ?! ソフィア様! 援護します! 悪魔の光線デヴィルビーム
 ジェイドの攻撃で大量のイルカが吹っ飛んだ。しかも、超大きなイルカ。
「もう! なんでこうなるのー!」










「完全に酔っちゃったじゃないか。なんであんなに戦わせるんだ」
 といっても、みんなもみたいだし、あれは関係ないだろう。にしても、ひどいな。


「あう……、本当にもう船乗りたくない」
「私もだよぉ。船嫌い」
「同感だ。私ももう船なんか乗りたくない」


 三人がぐったりした様子で愚痴っている。これを見ると、余計気分が落ちるな。


「いつ着くの?」
「さ、さあ」


 本当に知らないから、もっと気分は落ちるばかりだ。


「た、タコだ! このままだと船が沈むぞ! 大砲準備!」


 あ、あれ……。な、なんだ? 船が、沈む?
 ちょっとなぁ、さすがに、そんなの私も戦いたくないんだけど……。


「利かないぞ! 魔術師!」
「えぇ?! あんなの無理ですよ!」


 うえぇ……。本当にやめてほしい。私にどれだけ魔力使わせるんだよ。


「ああ、もう! これ以上何か起こらないでぇ!」
 私は二段飛ばしで階段を上がっていった。










 結局、二日後に大陸に着くまで、戦いはエンドレスで続いたのだった。

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