金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第七十九話  コンチータ対ソフィア

「ふふ、わらわも、本気で戦うのは久しぶりじゃ」
「私も一対一は久しぶり」


 私たちは戦える場所に向かっている。さっきブランシュと戦ったのは庭だけど、庭でやったら悲惨なことになるだろう。それこそ、焼け野原に……。あぁ。嘘じゃなくて、本気ですよ?
 村の外、野原で村から充分離れて戦うことになった。


「ふむ、これだけあれば十分じゃ。準備は出来ておるか?」
「ええ。それじゃ、行くわよ?」


 私は大きく息を吸った。一緒に取り込んだ魔力を最大限生かす。


「ふっ、ズルのギリギリ手前ってとこじゃな。まあ、許してやる」


 あ、気づかれてたか。許してくれるなんて、余裕あるんだなぁ。
 私がそんな細工をしていると、コンチータも戦闘態勢に入る。って、ええ?! コンチータって……。


「悪魔、だったんですか」


 急に大きな羽が。なんだか、悪魔の女王のようだ。
「ふふ、気づかなかったか? わらわの村は、悪魔の村なのじゃ」
 そういうこと。どうりで悪魔が多かったわけだ。でも、コンチータは、羽を隠せるんだ?


 杖をしっかり握り締め、しっかり前を向く。悪魔とは、戦い慣れてないんだよなぁ……。
 ちょっと不利、かな。相手は飛ぶわけだし。でも、私、本気だすって言ったし……。いいよね? 魔力制御、解除!


「! すごい魔力じゃな……。どうなっておるのじゃ?」


 魔力制御の原理は、理解したばかりだ。魔力の種類は三つ。体外に出したものと、体内にまわしたものと、体内で制御してあるもの。


「ふふ……。危ないからね、だいぶためておいたんだから」


 体外に出してあるのは一般の人と変わらないくらい。大体、100くらいといったところ?
 で、体内に回してあるのは、眼鏡で見えるものだから、だいたい5000。
 だけど、制御しておいたのは、約7000!


 一瞬で周りの様子が変わった。とはいえ、見た目は変わらない。近くに魔物の気配が一匹も感じられないということだ。


「これでは、わらわも本気で行かないといけないな」


 楽しそうに笑うコンチータ。これの本当の目的は、どちらが強いか決めることなんかじゃない。そう、純粋に、戦いを楽しむ。私たちは笑い合って、それから真面目な顔を作る。
 さあ、では、始めよう。まずは、援護してくれるものが欲しい。地獄草ヘルプラント


「! 無詠唱。これこそ、楽しい戦いじゃ」


 コンチータは真っ黒の木で出来た杖を持っている。一番上には、真っ赤な魔石。
 彼女も無詠唱。でも、杖と魔力の動きをよく見れば、だいたい何を撃とうとしてるか分かる。まず、噴火イラプションね。ウォーターウォール妨害レジスト


 やっぱり、長く楽しめそう。地獄草ヘルプラントの猛攻を掻い潜って、どんどん距離を詰めてくる。
 硬石弾ダイヤブレッド緑石弾エメラルドブレッドを同時に撃つ。コンチータは悪魔石弾デヴィルブレッド両方妨害レジスト、いや、どちらかといえば相殺された。
 もう目の前だ。私は杖に火の魔力をかける。片手でもっていた杖を、両手で構える。


「くっ、力は強いのね」
「馬鹿言え。わらわのような悪魔に力で勝つ者などいないわ」


 二つの杖はがっちりと組合って動かない。でも、必死な私に対して、コンチータは随分余裕、これでは負けてしまうだろう。
 でもね……。コンチータは、気づいている? 私、普通の人じゃないし、杖や手が使えないからって、魔法が使えない、というわけではないよ? 硬石弾ダイヤブレッド


「グッ……! なん、だ……?」
「杖が使えないと、魔法って使えないんだっけ?」
「ほんとはな! 手も空いていなかったんじゃ。お主、とんでもなく強いのぅ」


 そうか? だって、これ……。


「スカーレットに教わったのに」
「! スカーレットさんが?」


 ブランシュが驚いたように叫んだ。そうでしょ? 結構すごいんだよね。


「続けるぞ」
「あ、そういえば、私の硬石弾ダイヤブレッド頭に食らって生きてる人、初めて見た」
「そうか。褒め言葉、じゃな?」


 コンチータが杖を上に向けると、急にあたりが暗くなった。何……?
「――――、悪魔の雷デヴィルサンダー
 ! サンダー?! あちこちで雷が鳴り出した。しかも、真っ赤な……。


「ひっ?! どうなってるの……?」
 何をやっても雲が晴れない。雲じゃないの……?
「悪魔の、煙。お主ではどうにもならん」
「まじか……」


 当たらないようにしないと。私は少し跳んで場所を移動した。さっきまでいた位置に真っ赤な雷が落ちた。


「ふぅ。危ないわね……。この子に何とかしてもらおうかしら」


 私は地獄草ヘルプラントに命令を出した。『雷を代わりに受けなさい?』これで雷に気を取られないで戦える。なんたって、この子は意思のある、どちらかといえば使い魔なので。さて、私もいくよ?


「ほぅ。うまいな。どう扱っているのじゃ?」
「あいにく操っていないもので」
「……?」


 さて、これは、さっさと終わりにしないといけないようね。可愛そうだし。
 私は小さく大量の硬石弾ダイヤブレッドを作り出した。狙うのは、羽と足!


「うわ?! なんじゃ?!」


 小さいけれど、威力は抜群。なにせ、神級なんだから。でも、小さい分、避けにくいでしょ?


 いくつか当たったね? 反応が遅れるはず。反撃と、避けられる、っていう心配しないで撃とう。大滝キャタラクト
 地面に叩きつけられたコンチータは大きく跳ねてから着地した。これは痛いだろうなぁ……。


「大丈夫ですか?」
「あ、ああ……。思っていたより、威力が強くて、びっくりしたぞ」


 コンチータは傷ついた羽を見て困った顔をした。そりゃ、そうだよね。上回復アドヴァンストヒール


「お、おい、そんなに魔力使って平気か?」


 うーん……。でも、さっきの硬石弾ダイヤブレッドは大きいのを砕いただけだから、結構魔力の消費は少ないんだよね。全部で7000くらい? さっきの雲を解こうとしたのも含めて。


「大丈夫です。まだ余裕はあります。どこか痛いなら」
「それはないが、魔力が足りない。雲が解けん」
「えええ?! さっき、私には絶対解けないって……!」


 嘘だろっ! いつまでこの地獄草ヘルプラントを犠牲にしなくちゃいけないんだ! 可哀想だろ! って、ちょっと違うか?


「少し、魔力を分けて欲しい。出来るか?」
「どうやって……?」
「動かないでくれ」


 そう言うと何か唱えだした。そんなこともできるんだ。って、あ、コンチータ、すごい量の魔力を……。
 ちょっと待って! それじゃあっ?!


「よし、これでいい。悪魔の雷デヴィルサンダー、解除!」

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