金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第六十八話  へレーナの仲間

「ソフィア様、お客様です」
 ノックのあと、そんな声が。この宿のオーナーさんだ。
 でも、私に客なんて。どうせ碌な事にならない。さっさと追い返してくれればよかったのに。
「もう。どなた……、ん?」


 レイフでした。










「昨日はあのあと、大丈夫だったか?」
「いつもどおりだから。ベッドで一時間も横になってれば問題ないよ」


 いや、別に椅子に座ってるんでもいいんだけど。
 問題があるとしたら、ちょっと動くのが大変で、魔法関係が一切使えないだけだ。


「んで、用がそれだけなら、帰って」


 レイフは少し笑いながら「そんなわけ無いだろ」と言ってから、もう一度真面目そうな顔を作ってみせた。


「昨日、友達のよく行く酒屋で昨日のことを話したら、少しお前と話したいというものがいてな」
「なるほど。私は話したくないわ」
「え。そんなこと言わないで。大変だったんだぞ。金髪で、緑髪悪魔連れた少女見てないかって」


 ……。名前、名乗ってたらもっと早く来てたんだろうか。ってか、来なくてよかったのに。
 と、レイフの後ろからひょこっと女性が飛び出した。背は私くらい。人間ではなさそうだ。


「あの、いきなりなんですが、『へレーナ』って名前に、覚えはないですか?」
 ん? へレーナ……。って!
「ある! 超ある! それ、どこで?」
 へレーナって、ハナのことだ!
「えへへ……。私も、同じ、なんです」










 レイフには出ていてもらって、私たち――私とこの子、それからなぜかジェイド――は部屋にいた。


「だから、私も、エルフ戦士でした。この前、変わったニンフを見て、もしかして、って思って。その時にいた女の子が、あなたじゃないかなって、思っていたんです」


 この子もニンフのようだ。さっき、名前をエーヴァと名乗った。元の名前はエリヴェラらしい。
 茶色のちょっと長めの髪。覚えは、あるかなぁ。あまり変わった子じゃないし。


「よかった。やっぱり、へレーナだったんだ。探してたの。親友だったから」
 エーヴァは私にそっと微笑んだ。変わった子じゃないとか言ったけど、前言撤回。超可愛い!


「でも、やっぱり、みんなニンフになったんだ……。エルフもニンフも精霊だし、ニンフは考え方によっては下級女神だし」
「みんな、ってことは、ほかにも見つかってるって事?」
「そういうこと。伝えておいてくれる? へレーナ以外はみんな見つかってるから」
「わかった。伝えておくね」


 よかった。ハナはよくみんな無事かな、って言ってたから。


「私たち、時空移動するのに、女神様の力を借りる魔法を使ったの。だから、そのせいかもしれない。詳しいことはわからないけど」


 女神って、もしかして、トレアじゃないよね? だったら、まあ、納得っちゃあ、納得だ。きっと、私への目印だろう。
 と、いうことは。今も、いつ気がつくかな? って見てるんじゃ?


「で、聞きたいことがあります。単刀直入に行きます。ソラさん、ソフィア様ですよね?」
「なんだってぇ?!」


 あ……。まさかのレイフ登場。部屋の隅に座っていたらしい。魔法を使って身を隠していたのかな?
 なんてね。気がついてたさ。甘いから。魔力でバレる。訓練したほうがいいよ。


「そうだよ。目立つの好きじゃなくてね。偽名使っちゃった」
「やっぱね。レイフ君なんかに勝てるわけないわ。このお方、次の勇者様ですもの」
「次の……? 勇者……?」
「聞いて、ソフィア様。私はね、あの時、六十年くらい前に飛んだの。今私、五十歳よ。もうすぐ、魔王と戦うことになると思うの」
「私も、そう思う。ハナの年からも知ってるし。そのために、強化のために、冒険しに来たの」


 エーヴァはふうっと息を吐いて言った。
「その時はね、ナディア様の娘は、あなたじゃないわ。だから、何かしら、未来は変わるはずなの。何か、心当たりがあるんじゃない?」
 転生。あのせいだろう。私と、もしかしたら、マリアも。


「じゃあ、気をつけてね。もう、未来は変わったから、私たちの知っていることとは違うと思うの。協力は、まあ、できる限りするけど」
「うん。私たちもいろいろ行動するようにするから。それより、気をつけて。ばれたら、殺されるだろうし」
「そうだろうね。気をつけるよ。じゃあ、また会おう。今度は、もっとゆっくりね」


 エーヴァが扉に向かって歩き出すと、バン、と大きな音を立てて扉が開いた。驚きすぎて声も出ないエーヴァは、そのまま後ずさって戻ってきた。


「なるほどね。ソフィが隠してたのって、そういうことか」
「ハナさん、未来を知ってたのねぇ」
「それから、ソフィはそれを知ってたんだな」


 リリアーナたち乱入。さすがに気がつかなかった。
 彼女らは、見ようと思ってみればわかるけど、そうじゃないと気がつかないくらい魔力を消せるから。


「あと十年くらいで魔王と戦うことになるのかぁ。あぁ、もっと前に行かないと、手遅れかなぁ」
 リリアーナがポンッとソファに座る。それから、私とエーヴァのこと見て言う。


「私たちも、協力しないと、解決しないよねぇ? なんで言ってくれなかったのかなぁ?」
「ありがとう! 手伝ってくれるのだな!」
「こらこら、エーヴァさん、私たち、一応勇者になる予定だからね」
「は! す、すみません」


 ぺこりと頭を下げると、少し笑ってマリアが言う。


「まあ、そんなに固くなる必要はない。私たちにとって、大切な人物になるようだからな」
「そんな……。もう、お役に立てないと思います」
「まあまあ、それは、まだわからないのだろう?」


 エーヴァは嬉しそうに微笑み、大きく頷いた。
 みんなになら、隠してる必要も無かったか。どうして、黙ってたのかな。


 そして、ふと後ろを見て、気が付く。


 忘れ去られたレイフが、一人で首をかしげていた。

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