金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第六十四話  いきなりマズイです

「ソフィー!! 久しぶりぃ! 元気だったぁ?」
「もちろん! リリも、リナも、マリも、元気そうだね」
「うん! ソフィと会うの、楽しみにしてたんだ。お母様が、許可出してくれて」
「それで、スカちゃんに伝えておいた。迷惑じゃなかったか?」


 スカ、ちゃ…………。あぁ、スカーレットか。マリア、そんなに仲良かった?


「とにかく、みなさん、どこに行くか決まってますか?」
「森の外! 日数余ったらぁ、ソフィに森の中案内してあげるねぇ」


 リリアーナが笑って言った。確かに、私は森の中もよく知らない。
 自分の住んでいる場所すらも分かっていなかったんだなぁ。もうちょっと外を歩いてみても良かったかな?


「前の場所、ワープ、出来るか?」
「うん。じゃ、目、閉じて」


 ワープ魔法、発動! 場所は、アバドンの森へ向かう前に立ち寄ったエルフの街!
 って、あ! まずい!!










 後ろに倒れそうになった私を、ジェイドがそっと抱きかかえた。
「何が、あったんです?」
「間違えちゃって……。すぐキャンセルしたんだけど……」
「ソフィ! まさか、二回連続で……」


 マリア、ごめんね。そのまさかだよ。長距離移動のワープ魔法を二回。ちょっと、これはきついなぁ……。


「馬鹿! なんで言わなかったんだ! 二回使えるようなものじゃないぞ……」
 みんなに迷惑かけるのは、と思ったんだけど、これじゃ逆効果だ。困ったなぁ……。
「とりあえず、この前寄った村に行かない? ほら、中、あまり見れなかったし、ちょうどいいよ」
 エベリナが言うので、私たちは歩き出した。
 私はジェイドが離してくれないわけですからね……。歩けない。










「お久しぶりです、勇者様」
「あら、あの時の門番さん。ここらで、おすすめの宿はあるかしら?」
「そうですね……。カトレアの宿でしょうか」
「ありがとうねぇ。じゃあ、私たちはこれでぇ」


 は、はやい……。慣れたもんだね。森の中を冒険してたって言うし、こういうのも慣れてるのかな。
 エベリナが先頭に立ってコツコツと進んでいく。あるところでふっと足を止め、振り返る。


「ここみたいだね。安全らしいよ。お金は?」
「お母様たちが、ある程度くれたよぉ。えぇっと、進んだら、自分で稼いで、だってぇ」


 どうやら、十分足りそうだ。とりあえずここにすることになった。
「とりあえず、そうねぇ……。一週間、頼めるかしら」
「はい。わかりました。では……」
 私にはよくわからないし、それ以前にほとんど聞こえない。話に入れそうもない。


「じゃ、二部屋ねぇ。私たち一緒で、ジェイドさん、ソフィ頼める?」


 え……。どうしてそうなるの? って、それしかない、か……?
 まあ、いつも通りだし良いか。とにかく、さっさと行こう? ほら、こんなところに突っ立てたら、邪魔だし。










「ねぇ、ソフィが落ち着いたら、ギルド行ってみようよ」
「そうだな。稼ぐなら、手っ取り早い」
「そうねぇ。パーティー組んでみましょうかぁ」


 ギルド、パーティー……。まさにファンタジーの世界……。ちょっと楽しみ。


「あ、でも、認定の試験あるわよね。全快じゃないと、ちょっとねぇ」
 試験……。って、どんな?
「うーん、パーティーランクとか、個人ランクの。ソフィ、魔法、神級でしょ? 全属性やったほうがいんだけど……」
 あ、絶対足らない! じゃあ、仕方ないよね。明日、かな。
「とりあえず、ジェイドさん、ソフィよろしく。リリ、マリ!」


 なんか、逃げるかのように行ってしまった。なんで? ……まあいいか。
 うーん、ちょっと寝てもいいかなぁ。魔力足らない分、体力使っちゃったみたいだし。


「じゃあ、私は荷物整理してますので、そのあいだ、寝ててもいいですよ。お昼には起こしますから」
「あ、そう……? ごめんね。じゃあ」
 はぁ……。私、何やってるんでしょう。










「ふわぁ……。いま何時?」
 時計を見ると、十一時半ってとこか。って、ジェイドはどこに?
「あ……」


 私のベッドに突っ伏して寝てました。
「ジェイド、ねえってばぁ」
「うわあ?! すみません! ちょっと暇になっちゃったもので」
 だ、そうだ。まあ、とにかくすぐにリリアーナたちが迎えに来るだろう。


「ソフィー、起きてるー? ジェイドさーん」
「あ、今起きたとこー……。ジェイド、行こ?」










 下の食堂は、大騒ぎだった。
 なにせ、勇者の子孫が勢揃いに、いかにも強そうな(?)悪魔……。しかも、私の召使のような……。


「な、何にいたしましょう?」
 慌て過ぎじゃないだろうか? 店員さん、来るの早すぎ。メニューも何も見てないんだけど?
「何って……。今来たんだよ? 決まってるわけないよね?」
「そりゃそうでしょ? まぁ、おすすめ貰えばよくなぁい?」


 エベリナが言うのをリリアーナが適当に返す。あぁ、まずいなぁ。
 店員は慌てたが、「では、おすすめでよろしいですか?」と聞いてくる。


「いい。それでいいから、下がってくれ。リナがイラついている」
「えっ……? 何か私……」
「いいから、下がってくれるかしらぁ? 私達の言ってる事が分からないのぉ?」


 あ、リリアーナが……。
 なんたって、「本物?」って声が聞こえたとたんリナの表情が変わったんだ。私だってちょっとは思う。それ、疑うか?
 別に、特別扱いして欲しい訳じゃない。でも、偽物なんじゃないか、って疑われるのは良い気分じゃないな。


 これだけイライラしているんだから、ちょっとした事で大事になりかねない。店員さん、早く下がらないと誰かに消されるぞ?
 ジェイドが空気の違いに慌てている。そりゃ、さっきまでふわふわ可愛い少女らがピリピリして殺気放ってたら、ねぇ?


「ジェイド、大丈夫。すぐ機嫌は治るから」
「でも……。さっきまで、女の子、って感じだったのになぁ……」


 まあ、一瞬で戦闘態勢に入れるっていうのは凄いことだろうし、良い事だけどね? こういう場面ではちょっと困る。うっかりすれば、私が何とかしないといけなくなりそうだし。


 なんにせよ。勇者様の子孫一般人ふつうではないってわけだ。

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