金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第六十三話  ソフィアがいなくても・・・。

「そういえば、国の外、勝手に出ていいの?」
 急にクララがスカーレットに聞いた。そっと笑って答えてくれる。


「この森に、国境を越えたから何、というのはありませんよ。大体、森の外は、人の国、獣の国、といった感じで、特に国はないですし」


 だ、そうだ。森の中は、独特の文化が発達するらしい。まあ、そうだろうな。
 つまり、大まかな区分は人の国、獣の国、小人の国、魔族の国、エルフの森、らしい。ほかにもあるそうだけど、主には、か。


「って。もう、今日はソフィアに伝えたいことがあって集まったの。だから、とにかく座って」


 そうでした。私は、今日の朝、急に一番小さなホールに呼び出された。っていうか、引っ張って連れてこられた、というか。強引なるアンナとクララの手によって。
 まあ、それはともかく、何かと思えば、リーダーの人たち。


「そうです、ソフィア様、私たちは、そのために呼び出したのです」


 ジェイドに言われて、仕方なく私は椅子に座った。会議のような形でみんなも座る。
 クララがみんなの顔を見て、それから、私の顔を見た。で、少し私の顔色をうかがうようにして言った。


「えぇっと、なんていうかな。私たちは、ソフィア様がいなくても、大丈夫だよ」


 へえ。……ん? ちょ、どういうこと?! 私がいなくてもいいって、私の国なのに、どうして欲しいの……?


「あ、違うんだ、ソフィア。俺たちは、ソフィアに、その……。旅に出てもいいよ、と言いたいんだ」
 え、何、言ってんの? 旅……? いやいや、なんで私が旅に行くのさ。


「あ、あのね、ソフィア。ハナさん救うための冒険から帰ってきて、疲れたって言ってたけど、楽しそうだった」
「なんか、輝いてたっていうか……、あぁー、うまく言えねえけど」
「それに、一緒に冒険した、リリアーナ様、マリア様、エベリナ様も、また行きたいって、言ってたんだ。楽しそうなソフィアのほうがいいしね」
「ち、違うわ! 別に、ソフィアが楽しそうなのが見たいわけじゃないんだから」
「ナタリア。ったく。僕も、楽しそうなソフィア様の方が好きだな」


 おいおい、言いすぎだろ。今の私、どういうふうに見えてるんだ? 誰の
 セリフかは……わかる? 最初から、クララ、フェリ、ルアンナ、ヴェリ、レオン、ナタリア、ニコライ。


「それに、ジェイドもついていってくれるよね? ソフィア、いってきな。僕たちに任せて!」
「ええ。行きますよ。当然です。でないと、心配で寝られません」


 サウルが任せてなんて言うなんて……。って、ジェイドも? もう、仕方ないなぁ。


「私たちもいますよ、ソフィア様」
「ああ、久しぶりに稽古でもするか?」
「私も、行って欲しい」


 あ。あれ、久しぶりにアラーナの声聞いたなぁ。ってことは、全員賛成ってことか。


「わかった。じゃあ、よろしくね。……ねえ、しばらく、帰ってこなくても、いいかなぁ?」
「平気さ! 一年でも、二年でも」
「でも、五年以上は心配だから、やめて」
「そんなに長くなる予定は……ない、かな? ともかく、平気だよ」


 よし、準備しなきゃ。一週間はいるかな。これは嬉しいサプライズ!










「ジェーイド。ねぇねぇ、リリたちはいつ出るって?」
「ん? ああ。準備に結構いるんじゃないかって。一週間後ですよ」
 あぁ、やっぱり。楽しみだなぁ。それに、随分会ってなかったし!


「リュック、作ってもらいましたから。これ、使ってくださいね」
「あ、ありがと。誰が作ったの?」
「クララ様です」


 もう少しで新品のリュック落とすところだった。い、今なんて?!
 んな、馬鹿な! クララ、裁縫、あんなに苦手だったのに。すごい。こんな完成度……。


「まあ、スカーレットと作ってましたけど、それにしても、すごいですよね」


 信じられない、なんて、そんなこと言っちゃ、失礼だよね。
 でも、何持っていこうかなぁ。必要な物ってなんだろ?


「楽しそうですね……。なんか、ちょっと不安だったんです」
「なぁにが?」
「だって、そりゃ、迷惑かな、とも思いましたよ。少しは。でも、こんなに喜んでくれて……。良かったです」


 あ、そうか。でも、私、本当に、こんなこと言うのもどうかと思うけど、ちょっと退屈だったんだもの。楽しみだよ!


「でも、ソフィア様、きっと、人気だろうなぁ……」
「ん? 何か言った?」
 ジェイドがなにかつぶやいたと思ったんだけど……。しかも、ハッとしたような顔のあと、楽しそうに笑って……。な、なんだろう。










「ってことなので、アリアン! 桃色魔法衣ピンクローブを頼んだよ!」
「もちろんじゃないですか! 行ってきてください! 楽しんできてください!」


 なぜこんなに怒鳴られなくてはならないんだ? どういうこと?


「そんなの頼まれるようなことではありません! 頼まれなくてもちゃんとやります!」
 だ、そうだ。うん、そりゃ悪かったかも。でも……、嬉しいな。


「当然です。私だって、聞かれたんですから。ぜひ行って欲しいって、思ったんですから」
「! そう、なの? 結構、みんな知ってたんだ」
「知らなかったの、ソフィア様だけですからね。楽しんできてくださいよ。まだ子供なんですから」


 あ、そうだね。まだ、ちょっとぐらい、遊んだっていいよね。


「ほら、ソフィア様、早く準備しないと、後で困っても知りませんよ?」
「あ、うん! 楽しみ、だね?」

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