金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第三十九話  あっちでもこっちでも魔物が・・・

 な、何があったんでしょう。いきなりクララから『剣貸して?』


「一応、誰かに連絡とってみればぁ?」
「そ、そうだね……。」


 リリアーナの言葉で、私は携帯もどきの電話帳から一つを選んでかける。
『はい、もしもし? ソフィア様?』
「ねぇ、スカーレット。さっきクララが剣貸してって。何かあったの?」
『あぁ。魔物がちょっと入ってきまして。さっきクララ様、剣、折ったので』


 魔物……? どんなだろう?
『えっと……。ナメクジみたいです』
 ナ、ナメクジ……! 私、ナメクジは苦手だよ……。さっさと倒してくれればいいんだけど。
『まあ、心配するほどではなさそうですよ』
「あ、そう、ありがとう。じゃあね」
 私は連絡を切ってポケットにしまった。


「どうだった? 大丈夫だって?」
「あ、リナ。それがさ、ナメクジが来たんだって」
「ナメクジ! 嘘でしょ? 知らないの? ナメクジって、家くらいあるのよ?」
 あれ、それって、大丈夫なの? しかも、数がわからない!


「まて、ソフィ。今、見えた。送るから」
 マリアがそう言うので、私は目を閉じた。映像が今見ているかのように流れてくる。


 私の街の入口。そこに大体十匹のナメクジがいた。
 あぁ、確かに家くらいある。で、そこで住民が戦っている。


「あ、なるほどね……。多分大丈夫だと思う」
「そう。長が言うなら間違いないよねぇ。ね、ソフィ、リナ、マリ、ジェイドさん。戻ろ?」
 うーん、多分平気だと思うんだけど……。










 次の日、宿を出てアバドンの森に向かった。なにせ、タイムリミットは三ヶ月後。急がなくてはいけない。


「ジェイドさん、ちょっと休もうよぉ。待ってぇ」
「あぁ、これはいけませんでしたね。すぐそちらに行きますから」


 私たちより多い体力を持つジェイドは疲れを知らない。すぐにぴょんぴょんと戻ってきて私の横に座った。
 にしても、リリアーナがいつも呼んでくれて助かる。私が疲れた時に言ってくれるのだ。


「ジェイドさん、すごいね。ずっと進んでいっちゃうんだもん」
「まあ、体力はあるよね。私の三倍くらい……? でも、みんななら、そんなには違わないよね?」
「アハハ、そうかもねぇ。でも、私とかリナはまだしも、マリじゃ二倍くらいはありそうねぇ」
 そう言いながら数字を思い浮かべた。ジェイドは7千だっけ……? あ、三倍、それくらいだね。


「いや、すみません。気をつけようとは思ってるんですが……」
 ジェイドが小さく笑った。私も責めるつもりはないんだけどね。
 にしても、本当にどうなってるんだろ? どうしたらこんなに長いあいだ普通に歩いていられるんだか。


「もう遅いし、こっから先は魔物出るみたい。今日はここで休もっか」
 エベリナがニコッと笑いながら言うので私たちはそれぞれ準備をすることに。
 私とマリアで仮住居の作成。リリアーナとジェイドが狩りに。エベリナが料理の準備に、といった感じだ。










「じゃあ、よろしくね」
 初めに私とジェイドが見張りをすることになった。このあたりは滅多にいないけど、アバドンの森は近いし、夜は魔物の時間。一応ね。


 とは言っても、特にやることもないし暇。私はすぐに飽きた。
「ねぇ、ジェイド、って、寝てるし」
 この冬の寒い時期だというのに、ジェイドは隣で寝ていた。いつもだったら怒るとこだけど……。


「もう。さっきまで元気だったのにね」
 私は移動魔法で適当に毛布を持ってくると、ジェイドに掛けてやった。
「これじゃ交代できないでしょうが。もう、ジェイドったら」










「ほんとごめん! ね、許して?」
「あの、怒ってないんだけど?」


 結局、あのあとは交代できなかった。起こそうと思ったんだけど、ジェイド起きないし、リリアーナもエベリナもマリアも起きなかった。
 というか、途中で起こすのが可哀想になっちゃったのもあるんだけどね。


 魔物が多い時は、すぐに対処できないようでは困る。
 だから、シナモンで移動はアウトだろうな。
 うん。じゃあ……。寝れる訳はない。


「あぁ、もう、いいからさ。いこうよ」
 私たちはそのまま歩き出した。とりあえずは仕方ないじゃん。だって、これ以外どうしろと?
 まぁ、そんなことはどうでもいい。魔物に気を付けなくては。










「ジェイドさん、ストップ。リリ、魔物。弓の準備を」
「オッケー。どんな感じなのぉ?」
「! ペリュトン……。リリ、どうしよう」
 マリアは初めて見る怯えたような顔でリリを見た。で、ペリュトンって?


「ペリュトンは、鳥と鹿の混合獣で、人間を殺すと本当の影を取り戻せるから、狙ってるんですよ」
 ジェイドがそっと教えてくれた。なるほど。つまり、私たちを狙ってくるわけだ。急に、リリアーナがポツリと呟くように言った。


「マリアは小さい時……。森に遊びに行った時に。ペリュトンの群れに襲われててねぇ」
 もうエベリナの家にいたとき、みんなで森に遊びに行ったら、出会ってしまったそうだ。


「お母様が見つけなければ、死んじゃってたと思うよ。まだ、怖いんだね」
 そんなことを話しつつも、私たちは身構えてペリュトンを待った。


「来た。大きな群れ……。気をつけて」
 マリが言ったのを聞いて、私たちは一斉に動き出した。


「みんなどいて! 噴火イラプション!」
 今までやってたものよりずっと大きな噴火イラプション。その間にも木の裏からリリアーナが矢で援護してくれている。でも、数が多すぎ!


「! 嘘でしょ?! 毒草ポイズンプラント!」
 ある程度の動きを止める。次はジェイド!
悪魔の呪いデヴィルカース
 悪魔系の魔法は精神から壊していく。でも基本、人以外には大きなダメージを与えられないようだ。


「ダメか……。霹靂サンダーストラック!」
 大きな雷を鳴らす。私もびくっとしたけど、マリアとエベリナは悲鳴を上げた。リリアーナは平気なのかな?


 ふと目の前に、一頭の、鹿の頭と足、鳥の体を持つ生き物、つまりペリュトンがいた。……え?
「ソフィアお嬢様!!」

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