金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第三十話  初めての戦争3

 私は剣と盾を構えた。別に、剣士みたいに扱えるわけではない。魔法が効かなかった時、援軍を待つ間くらい持たせることができれば、と言うためだった。


 はずだったのだが、誰も呼べないというまさかの事態が発覚した。


 まず、当然クララに連絡。そしたら、中佐とやりあっていてあえなく断念。
 クララがダメなら、フェリオスに。こちらは大佐と。なんと運の無い! 仕方なく、ほかを当たることに。


 魔法のサウルはダメだ。当然アラーナは治療に追われている。
 ナタリアとニコライは弓だけど、動き回ってるから私にも当たってしまいそうだし、ルアンナの短剣ではブロードソードと相性が悪い。


 ということで、まずはレオンに。負傷中。こりゃダメだ。
 ヴェリは? サウルの補佐に入っているし、サウル一人では明らかに負けてしまうような格上だ。あ、まずい。アウトだ。


 悪魔たちもダメだった。スカーレットは大量の兵に囲まれて死にかけたところをインディゴが救出。今は二人で戦っている。
 ジェイドは、まあ、性格上、そうだろうとは思ったけど。別の中将と。


 さて、どうする? 私一人じゃ勝ち目は無し。かと言って、呼べる人がいない。
 この場合って、どうすりゃいいんでしょう? そりゃ、もう、一人で戦ってやろうじゃないか! 回復魔法は使えるんだし。


「あぁ。とりあえず、クララかフェリオスが戦い終わるまでは……」
「ほう、勝目はないと? お前は、所詮そんなヤツか」
「まっさか。『私が』戦ってやろうじゃない。どうせ応援は期待できないし」


 ん、シナモンはどうしたんだろう? あ、レオンの代わりか。リーダーやってる。
 いや、ローブの格好で検構える日が来るなんてね……。こんなことってあるんだ。
 私は目を大きく開いて彼を見た。あの鎧さえ壊せれば、私の勝ちは確定だ。鎧さえ……。


 彼が振り下ろす剣を盾で弾き返す。にもかかわらず、私は後ろに大きく飛ばされた。なんて威力……。
 地面に着く前に暴風ストーミーウィンドを駆使して足から着地。なんだかんだで役に立つ呪文だ。


 出鱈目に戦っても勝ち目はない。作戦で。私はある位置を狙ってショートソードを振り下ろす……。










「きゃっ!」
 もともと体力に自信のない私は、この剣の長期戦でだいぶ疲労していた。もう30分は経っているだろう。


 その中での足を狙ったひと振りには対応できなかった。おかげで腿にざっくりと大きな傷が出来てしまった。血が大量に垂れてくる。これは私に治療できるか……。
 でも、私だってもう準備は出来ているんだ。あとは、あれだけ。


「止めだ!」
 目の前の剣を盾で受ける。そのまま大きく吹き飛ばされるが……。
 無詠唱の上、何も言葉を発さない私の魔法。まさか撃ってくるとは思っていないだろう、私の赤石弾ルビーブレッドへの反応が遅れた。狙うのは、私の入れた『ひび』!


 私が狙ったのは鎧と脇楯わいだての間。脇楯さえ壊してしまえば、そこから撃ち込むことはできる。
 私はその間に地面に叩きつけられた。やっと地面についたわけだ。うつ伏せでいしの行方をじっと見つめる。


 当然、防魔鎧マジックアーマーの効果で、跳ね返りそうになる。でも、私は撃ったあとでも操れる。できるだけ力を込めてそれを食い止める。


 時間は数秒だった。それが、私には何分にも感じた。
 鎧が粉々に砕け、反動でさらに体が吹き飛ばされたが、気にせず魔法を放つ。


 殺してはいけない。仲間にするんだから。気絶させてやる。
 当然火なんかはダメ。できれば大きな音が出るのがいい。本気でいこう。霹靂サンダーストラック


 大きな音が鳴り響き、彼に落ちる。でもまあ、大きな音は私も怖かった。とっても。当然彼は死んではいない。
 でも、残念ながら鎧は粉砕。分析したかったのに。


「はぁ、ああ、疲れた……。って、痛ぁ!」
 今度は仰向けに飛ばされた私は上半身だけそっと起こした。目に入ったのは大きな切り傷。こいつのせいで、動くことができない。


 それに、本当に久しぶりに軽い魔力切れを起こしている。超上級を『本気』で何回か撃ったしなぁ……。


「うわあ?! ソフィアお嬢様!」
 緑髪の青年がものすごく慌てた様子でこちらに走ってきた。うん、ジェイドだ。


「大丈夫、血は凄いけど。早く止血しないとだね」
 でも、私は回復魔法は魔法の中でも苦手な方だから、止血とか細かいものはできない。


「なら、戻りましょう」
「うん。でも、人を飛ばすのは治癒室に直接できるけど、自分が飛ぶとなると、街の目の前が限界だよ」


 自分と自分以外のものでは、同じ魔法でも自分にかける方が大変だ。なんでだろ。
 あ、待って、習った気がする。確か、魔法を使うとわかっているからだ。
 魔法は強い意志。いい魔法でも、自分にかけるとなると、無意識のうちに少し躊躇うのだとか。本当か?
 そこからもう一度使って寮に飛べればいいのだが、あいにくそのあたりは魔法が効かないようにしてある。門壊されて侵入、じゃ困るから。


「私、歩けないもん。治癒室まで行けないじゃん」
「私が連れて行きますから、大丈夫です」


 なら平気かと、私は移動魔法で街の門の前に飛んだ。同時に飛んだジェイドが私をそっと抱えて歩き出す。
 門と治癒室は割と近い位置にある。遠いと辿り着かないし。


 治癒室になっているホールに入ると、金髪の三つ編み少女が駆け寄ってきた。
 桃色魔法衣ピンクローブの子。名前は確かクラリスだ。


「ソフィア様! 血が! すぐ治療します。こちらへ!」
 ジェイドは私を言われるがままにベッドに乗せ、遠くでクラリスと私に気がついたアラーナが治療しようとしているところを眺めていた。


「悪いですが、ソフィア嬢。今、みんな魔力不足。できれば……」
「じゃあ、軽くでいいよ。気にしないで」


 ほんとに軽くだった。ただ、傷跡は残らないようにしてくれたけど。
 ……、うん、痛いことは痛い。っていうか、すっごく痛い。まあ、これくらいは我慢するよ……。

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