金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第二十九話  初めての戦争2

 ルースは大きく飛ばされました。殺しちゃいないと思うんだけど、大丈夫だろうか? 走り寄ってみる。


「ルース……くん? 大丈夫?」
「あたた……。おい、これ、どういうことだ? 今の攻撃、初級の弓じゃないな?」
「そりゃそうだよ。魔法じゃない。ほんとの弓」
 魔法の弓なんて、名前だけ。なんか尖った形をしてるってだけだし。まあ、初級にしちゃ破壊力はあったりする。


「殺さないで……」
「……は?」
「お願い、私、死にたくない……」


 びっくりした。この子、女の子じゃん。しかも可愛いし。さっきまではフードで顔はよく見えてなかった。
「あのね、最初から殺す気はないよ? 殺そうと思えば、一発だし。仲間になる?」


 そう、技の選択を変えれば一発で殺せる。例えば即死の毒も使えるし、土魔法も尖らせて心臓つくことは可能だけど、丸くして、威力で押した。


「うん、仲間に、なる。だから、お願い、殺さないで……。私、まだ……十八歳なの……」
「おお、私より七つも上だったか。おっきいもんね。男の子かと思っちゃったよ」


 ちょっと皮肉っぽく言ってみる。だって、この子だって私殺そうとしてたわけだし。子供だから殺さないで、なんてこの子の言えることではないだろう?


「十一歳?! レルフ家の長女ってそんな若かったっけ?」
「え? どうゆうこと? うん、私十一歳だけど?」
「ごめん、勘違い。って、あ、痛ぁ……。火傷しちゃった」
 最初の噴火イラプション、避けきれてなかったようだ。そりゃ、本気で撃ったしね、速さを。


「あー、もしもし、アラーナ? 怪我人一人。ごめん、火傷させちゃった。え? もう遅いって。起きてるよ? あ、でも、もう仲間になるって約束させたから、暴れたら殺していいよ、うん、また」


 ルースがきょとん、といった感じで私のことを見ていた。念話を形にした、携帯電話もどきが珍しいみたいだ。
 そうか、これはマリアが特別な珍しい魔法を使って作ったもの。こんなことができる人は滅多にいないのだろう。私は習得できたけど。


「じゃあね、治癒室に送ってあげる。それ!」
 これでよし。だいぶ兵は減ったけど、私に普通の兵は近づかないし(逃げちゃうんだもん)、ほかの将軍、そろそろ大将に行こうか、私しか倒せないと思うし。










「ソフィア嬢、情報。大将の場所です」
 ルアンナが移動魔法で飛んできた。さすが盗賊シーフ、仕事が早い。
「ありがとう! 流石ぁ! じゃあ、行ってくるね。あ、ジェイドにほかの将軍がいたら治癒室にって、伝えられる?」
「うん、わかりました」


 また移動魔法で飛んでいった。格好も目立たない色で、おしゃれではないけど、なんか、かっこいいな。
 まあ、せっかく持ってきてくれたんだし、活用しないとね。
「じゃ、行こっと。そろそろ本気でやりたいんだよね」
 ニヤリと微笑む。あぁ、楽しみでしかたない。










 ひょいっと飛ぶと、確かに強そうな剣士がいた。いかにも『大将』。前世のゲームの中みたいだ。


 とか言ってる場合じゃない。私の街の住人が、囲まれている!
 全員まとめて治癒室に送って、周りの兵を蹴散らす。当然殺さないとは言え超上級。急潮ラピッドタイドで。


「私のとこの人々を甚振ってくださったようで。お礼をしないといけないね」
「ふっ、お前にできるのか? 大将のマティスだ。お前もそれが望みか?」
 生意気なやつだ。この人、そんなに強いんだろうか?


 えっと、魔法は効くんだろうか? あの大鎧って。いつか先生の使っていたミラーバリアに似ている。
 とりあえず、使ってみようか。ウォーターウォール。少し弱めに撃とう。


 結果。跳ね返ってこなかった。見掛けだけか? それとも、吸収でもしたか?
「この鎧か? 魔法は防げないかもな。対剣用に作ったからな」
 これは本当のこと? それとも、嘘?


 私が考えていると、男の人の声が響いた。ここにではない。頭に直接。念話だ。
『ソフィア様、鎧の解析ができました。物理攻撃を跳ね返す用のものです』


 おお、すごい! 農民たちに機械の使い方を教えてきたのだ。機械といっても、魔法道具だけど。にしても早い! これなら安心だ。いや、なにか特殊なもので妨害してなければ、だが。
『なにか変わりましたらすぐに連絡します』
『ありがと。じゃ、切って』


 にしても上手くなったものだ。携帯いらないか? あ、でも、すごい魔力使うんだよな、念話。掛ける方も、受ける方も。
 私は力を込めて頭を狙う。この人、兜はかぶっていない。見えないだけとか、ないよね? 青石弾サファイアブレッド
 相当な速度が出る事の技は、クララでも避けるのは難しい。ゴツン、とぶつかって、マティスはそのまま転がった。何かあるわけじゃなさそうだ。が。


 私は素早く振り返って手にバリアを掛け剣を掴む。分身か、迷惑だな。
「ほう、よくわかったな」
「魔力探知。後ろから凄い力が見えたもの。流石に分かる」


 だって、魔力探知の性能が上がってきたんだもん。ちょっとでもわかるし、って、あれ? 今切ってたと思うんだけど? おかしいな?


「じゃ、私は魔法使えるのかな?」
「魔法、か。いいんじゃないか? 鎧の性能はさきほどと変わらぬ」


 さて、これが本当かどうかなんてわからないね? 早速聞いてみようか。
『解析、出来た?』
『はい、あの……。魔法を跳ね返します』


 ほら見たことか! 嘘つきじゃないか! 全く、なんだこいつ。
 私は仕方なく、杖を宙に放り投げた。移動魔法を使って剣に入れ替え、手に落とす。


「もう、嘘つかないでよ。魔法跳ね返すんでしょ?」


 ジェイドに買ってやったものと同じデザインの、持ち手におしゃれな装飾がついているタイプ。それの、ショートソード。
 それに比べ、向こうは大きなブロードソード。とはいえ、鍛冶屋さんが本気で作り上げた最高の剣。恐れることは……なくはないけど、大丈夫!


 それに、こんなこともあるんじゃないかって、クララに剣を教わっていた。大きい真剣は当然持てなかったため、ショートソードになった。とは言っても結構重いけど。


 もう片方の手で盾を持つ。こちらはヴェリに。いつも教えてる側だったのに。教わる側になっていた。
 当然大型の盾なんかではなく、小型で、まあ、邪魔にはならないけど、そんなに防ぐこともできないと思う。とりあえず、助けが来るまで持たせるために教わったものだし。


(何とか時間を稼いで、誰か呼ぼう)


 その為にこの二つを教わったんだから。まあ、時間稼ぎなら何とかなる程度だし、早く誰か呼ぼう。これで作戦通り。


 のはずだったんだけど……。

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