金髪、青目の美人エルフに転生!

鏡田りりか

第一話  転生したようです

 私の名前は『蒼空そら』。風間蒼空かざまそら。十七歳。ちょっと茶色っぽい髪と、目を持つ、別に、これといって特徴もない、ただの日本の女子高校生だ。


 ……いや、特徴あるな。ありえないほど運がない。何をやっても失敗するんだ。


 その日だって、別に何かあるわけではない。普通にいつものように通学路を歩いていた。
 暖かい日ならまだいいが、曇っていて、じめっとしていて、面白みはないし、気分も晴れない日だ。


 青信号になった人通りの少ない田舎の横断道路を渡る。一応、こんな田舎だって車が通ることはある。今日、そこにいたのはトラックだった。


 しかも、普通のトラックではない。なにせ、トラックは、赤信号だというのに、進んでいたのだから。
 運悪く、それに私は気がつかなかった。気がついたときには、目の前だった。
「えっ! うそ、居眠り運転?!」
 ――私は当然のように、トラックにぶつかって、死んでしまった。










 ……はずだった。
 私が次に目が覚めた時は、目の前に若い夫婦がいた。


「ソフィア、――――?」
「ソフィア、――――」


 え、え? え?? 


 一応、英語くらいはわかる。でも、違う。まるで知らない言葉だ。
 混乱してしまいそうな中、女性の方が哺乳瓶を準備しているのが見えた。
 そして、軽々と私を持ち上げて……。
 そこでようやく気がついた。どうやら転生してしまったらしいと。










「ソフィア。おはよう」
「おはようございます。お母様」


 時間が流れ、私もようやく五歳になった。私の名前はソフィア。ソフィア=レルフだ。
 母の名はナディア。父の名はスチュアート。両方エルフだった。
 いや、初めて見た時からわかっていた。母は美しい金髪に、澄んだ青い眼。に、長くて尖った耳。どう見たってエルフ。父だって、茶髪にヘーゼルの目。母より少し長いくらいの耳。当然、エルフだね。


 そして、私も、綺麗な金髪に青い目。そして、ピョコっとエルフ耳が。可愛すぎる。
 母に聞いたところ、ここは森の中のエルフの村らしい。村中の人が皆、エルフ。


 それと、レルフ家は神に好かれた一族らしい。私も、生まれた時に神に祝福を受けたそうだ。
 なんでも、この家でも神に祝福されながら生まれる人は少ないんだそう。そんなこともあり、すごく大切に大切に育てられてきた。


 薄い青のワンピースを着た私は、母の手伝いをして庭にいた。
 神に好かれているだけあって、お金持ちで、大きな家。お城みたいだと思う。白い綺麗な壁に、緑の屋根。庭は、表はバラなどがあって綺麗。そして、裏は戦いの練習用ということで空いていた。


「ソフィアは、転生前は何歳?」
「十七歳でした。でも、人間だから、二十で大人です。もう大人になる直前です」


 しゃべれるようになって早々、両親に転生者であることを伝えた。隠していてバレるより、いいと思った。
 まぁ、このほうが色々楽だろうな……、という、面倒くさがり屋である私の性格によるものなんだけどね。
 残念なことに、エルフの発達は遅いから、言葉を教えてくれるのも人間より遅いし、まともにしゃべれるようになるまで、時間がかかった。


 でも、それを伝えても、結構いる、と言って別に気にする様子もなかった。ただ、普通は赤子として転生することは少なくて、そのままの姿格好で転生するらしいけど……。じゃあやっぱり、死んだからかな……。


 まあともかく。そんなわけで、言葉だけ教えてもらった。
 因みに、エルフは三十歳で大人扱いらしい。で、寿命は千くらいだそうだ。そりゃ、成長が遅いのも納得だけど。
 此処の言語は、割と日本語に似てて、対して覚えることには時間がかからなかった。


 とは言っても、隣の家の私と同い年の女の子は、やっと階段の上り下りができるようになったくらい。
 ……、私はもう階段でもなんでも走り回っている。不思議なことだ。神のおかげかもしれない。
 それとも転生の方? どっちでもいいや。


 大きな家だし、神に好かれる貴族だから、言葉遣いはそれ相応、敬語らしい。
 堅苦しい気もするけど、これが普通だと言っていたから、仕方がない。


「ソフィア、そろそろ魔法の練習してみる?」
「魔法! やりたいです! 転生前も、使ってみたいって思ってました」


 母は、私のやりたいことはなんでも応援する、と言っていた。名家のお嬢様がそれでいいんだろうか? 剣士になる! なんて言い出してもいいんだろうか……。やる気はないけど。痛そうだし、大変そうだし。










 この世界には、戦闘用魔法というのは七つある。火、水、草、雷、土、空、召喚らしい。全てに初級、中級、上級、超上級、神級があるそう。神級とか、どんなだろう。かっこいいんだろうな。やってみたい!


「ソフィア。まずは水をやってみようか。間違えても被害が出にくいから」
「はい。分かりました」


 私は、母から詠唱を教えてもらった。うん。覚えられないこともない。
「――、水球ウォーターボール


 ほんとにほんとに小さな丸い粒ができて、私の膝を濡らした。


「え、一回でできると思わなかった。天才なのかな?」
「きっと神のおかげですよ。外で風が吹いています」


 神は、私たちに直接会うことはできない。だから、風を吹かせたり、木の葉で文字を書いたりして伝えてくる。これは、少し前に気がついたことだった。


「ソフィア、これ、すごいわ! 帰ってきたら、お父さんにも伝えなくちゃよ」
「ありがとうございます。お母様」
 私はまだ小さいから、魔力が少ない。今日はこれで終わりにすることにした。










 初級魔法の水球ウォーターボール水矢ウォーターアロウを完璧にマスターしたの一週間後だった。
 強さと大きさ、飛距離を自分で操作できるようになった。普通は一ヶ月かけて徐々に覚えていくそうだけど。
 そして、私の魔力も増えた。小さい頃からやっていくと、伸びしろが大きくなるらしい。楽しみだ。


 魔力が増えたところで、実験してみた。どうやら、大きさを小さくするのも大きくするのも魔力を多く使う。
 今のところ、直径十センチ位が普通だ。強さ(硬さ)は、強くするほど魔力を使う。


 とは言っても、ウォーターボールは硬くすることはそんなにないと思う。氷にすることはあるのかもしれないが、私にはできないし。
 飛距離も、まあ、そんな感じだろう。長くすると、魔力を使うみたいだ。


「ソフィアは、きっといい魔法使いになれるな」
「ええ。きっと天才なんだわ!」


 そう言って、可愛らしい半透明のハート型の宝石がついた杖と、薄桃色の、足首まである長い丈のローブを買ってくれた。
 フードが付いていて、かぶるとエルフ耳が少し隠れてしまうが、猫耳がついたローブだ。なんとも可愛らしい。
 ゲームのキャラクターみたいな感じか。魔法使いっぽすぎる。


「お母様、お父様、ありがとうございます」


 ああ、なんと幸せなのだろう。運のなかったあの時とは大違いである。ところで、私が死んで、両親はどのくらい悲しんだのだろうか……。
 と、いうのはもうどうしようもない。今からわかるわけないし、わかる必要もない。もう私は幸せに生きていくって、決めたんだもん。エルフの寿命は長いから、時間が過ぎるのがあっという間だと言うけど、ほんとかな? まあ、それもどうでもいい。


 なんといっても、私は、まだ五歳なのだ。考える時間はたっぷりあるし、第一子供じゃないか。考え事ばかりしていたって仕方がない。
 今は遊ぶことに専念するか!

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