剣神勇者は女の子と魔王を倒します
第56話 ヴァナー戦 version北区域
「だーかーらっ! 此処に来た奴が、誰も居なくて途方にくれたら困るだろうが!」
「でもでも! アナさんが心配です! 今すぐにでも動きましょう!」
「だからなぁ! もう一組来たらいい。そうしたら、此処に向かうように言って貰えばいい。でも、誰も居ないのはダメだ!」
「アナさんが死んじゃったら! エレナさん、今度こそ、今度こそ・・・」
何をやってるのか? ちょっと色々あって、すぐにでもリリィとアナの所に向かいたい。が、みんな、終わったらここ集合、みたいになってるから、誰も居なかったら困るだろうし、動くに動けないのだ。
「ええと・・・。どうしたの?」
「エディ! 良かった!」
「な、何があったのかしら?」
俺はエディに訊いてみた。
「もし、エディが逆の立場だったとしよう。ほら、やられない為、作戦を立ててみてくれ」
「? そうねぇ。戦力が集まってると思われる王都に強い人を連れてくるでしょうから、ずらして別の場所に・・・?!」
「そういう事だ!」
どうやら、魔王は何処からだか分からないが、俺たちの行動を把握しているらしい。だから、攻め込む場所も分かっていたのだろう。エディに確認をとると、やはり。コンクリートの壁。あれは、俺たちが攻める場所を知っていないと出来ない。
「でも、何でリリィの所なわけ?」
「分からないが、エリーがそうだといいはるんだ」
「そんな予感なの・・・」
「ああ、そう・・・」
「ユーリ!」
メリーが来た。やはり、メリーではなかったか。でも、何であんな雷を? まあ良いか。
残るはティナチームとリリィチームとなる。少し待って、どちらも来なかったら二手に分かれる事にした。
「ユーリさん!」
「ティナ! ということは、やはり!」
俺たちは一斉に駆け出した。ティナとエドも驚いたようだが、すぐに着いてくる。
目指すは北区域、リリィとアナの居る場所だ!
「よし、じゃあ行こうか」
「はい」
「アナ、絶対に無理しちゃだめだよ?」
「分かっております、リリィ様」
不安だなぁ。アナ、結構無茶しそうだし・・・。その為に私が居て、絶対に守らなきゃいけないんだけどね。
歩いて行くと、大きな壁を見つけた。え? 此処だよね? アナが間違えるはずないし。でも、こんなの聞いてないんだけど・・・。
コンクリートの壁・・・。どうしようかな・・・。うん、そうだ、登っちゃおう! 上から攻撃出来たら有利だもん!
「アナ、ちょっと良いかな。手ぇ繋いで?」
「? はい」
「それ!」
「わっ?!」
魔法を使って浮いて行く。コンクリートの壁は結構な厚みがあるみたい。乗れそう。なら良かった。あとは着地をゆっくり・・・。
上手く着地し終えてアナを見ると、やっぱりちょっと怖かったみたい。結構な高さあるもんね。
「さて、アナ。こっから攻撃するよ?」
「分かりました。では」
「うん。血の沼!」
「鏖殺魔法其ノ壱 紅蓮烈火」
そう言えば、クリスタもそうなんだけどね、アナ、鏖殺魔法、全部使えるんだって。
っていうのも、瞳の色がオッドアイじゃないからみたい。まあ、他の子も全部使えるには使えるんだけど、瞳と違う色だと威力がすっごく下がってダメらしいよ?
まあ、それはともかく。血で、炎で。どんどん赤くなっていくのを、黙って見つめる。
と、その時、ぐらりと地面が揺れた。壊される、咄嗟にそう思い、アナの手を掴んだ。
さっきと同じ魔法で宙に浮く。と、矢と魔法が飛んでくる! なんで? 凄い兵士の量! こんなの、私、アナを庇いながらなんて無理!
「どういうことなの?!」
「ずらされましたね、戦力を。ともかく、他の方が来るのを待つしかなさそうですね」
「だね・・・。よし、頑張ろう!」
着地はちゃんと出来た。魔法を避けながらで大変だったけどね。さて、行こう!
乱射される魔法を打ち消していく。その間にアナが魔法を撃つ。けど、鏖殺魔法って、凄い魔力使うみたい・・・。あんまり使わせない方がいいかな。
「アナ。武器、出せる?」
「はい」
「行こう。このほうがいいと思う」
「! は、はい」
この数の兵士に突っ込んでいくのは、正直怖い。だって、ほぼ全戦力、みたいな感じだし。
でも、このままアナに魔法を使わせるよりはいいと思う。すぐに援護に来てくれる事を願おう!
「うわあああああ!」
リリィの声だった。俺たちはびくりと肩を揺らし、声の方向に向かう。
なるほど。此処の兵士はみんな強く、その上量が多いな。やはりメインは此処だったのか。
そんな事を考えながら兵士を薙ぎ倒し、リリィのもとに向かうと、リリィの周りには強いバリアがあった。
「リリィ! リリィ!」
俺が声をかけると、リリィはびくりと肩を揺らす。振り返ったリリィは泣きじゃくっていた。
「ユーリ様ぁ! ごめんなさい、ごめんなさいい!」
「な、何があったんだ?」
リリィは一瞬だけバリアを解いて、俺たちを中に入れてくれた。
其処で、やっとリリィの謝罪の意味を理解する。リリィが抱いているのは、口から血を流したアナ。意識はないらしい。
「うっ、うっ・・・。ごめんなさい、私、ちゃんと守るって言ったのに」
「いや、俺たちが悪かった。此処に戦力が集中するとは考えてなかったんだ」
「だから、お父様・・・。私、言ったのに」
とりあえず、エレナのもとへ転送する魔法の魔法陣を使う。エレナなら、何とか出来るかもしれない。
それに、向こうの方が安全だ。もう遅いけれど・・・。エレナ、大丈夫だろうか・・・。
「リリィはどうする、此処にいるか?」
「う、ううん、戦うよ。大丈夫」
「リリィちゃん。無理、しないでね」
「分かってるよ」
ああ、やっぱり、エリーの言う事を聞いてさっさと向かっていればよかった。今更後悔したって遅いし、もうエリーに嫌われてしまっていても仕方ないだろう。
それでも、とにかく。この場を何とかする。方法は簡単。全員倒せばいいんだ!
だいぶお怒りのメリーさんがニヤリと笑いながら落雷を撃った。こ、怖いよ・・・。メリーが起こると、本当に俺でも対抗できない位に強くなるからな・・・。それだというのに笑ってるのが余計に怖い。
まあ、怒っているのはメリーだけじゃない。みんなだ。
リーサとエドが、同時に武器を構えて跳び出して行った。一振りで大量の兵士が飛んで行く。滅茶苦茶強いな・・・。何をしたんだ・・・。まあ、其処までアナ、そしてエレナの事を思ってくれているんだろう。
続いてリリィとエリー。同時に魔法を放つ。
「日光」
「闇」
光と闇属性を一度に使うと、味方以外を一掃する魔法になる。というのも、善の心も悪の心も壊すって、一体後に何が残るんだ、という事だ。味方には効かないんだよな、この魔法って。
兵士たちは悲鳴を上げながらその場に倒れていく。でも、まだ残っている人も居るな。
其処で、ルナとティナ。後ろの方からルナが円月輪を、ティナが火の妖術を使う。全て命中というのが凄い。けれど、まだだ。まだ残っているな。
「ユーリ! 行って頂戴!」
「ああ、任せろ!」
「リーサ姉ちゃん、引くぞ」
「うん!」
さあ、俺たちを騙してアナを傷付けた分、取り返してやるから、覚悟しとけ!
何とか収集を付ける事が出来たが、本当に、全員が全力を出し切った、という感じで、これ以上、誰も戦えない。今何か来たら、本当にまずい。
そんな風に思っていた時、馬車が来た。女王様がひょっこり顔を出す。
「みなさん、乗って下さい、まだ危ないかもしれないですから」
どうやら、アナが目を覚まし、状況を全て伝えてくれたらしい。また寝てしまったらしいが。
そんな事を教えてくれつつ、パクスに戻ってくれた。もう日は暮れているが、まだそんなに遅い時間ではない。
「今日はゆっくり休んで下さい。また明日、頼む事になると思うので」
「はい。女王様も」
「ええ。では、お休みなさい」
はぁ・・・。やっぱり、連れてくんじゃなかった。無理にでも置いてくんだったな。アナ・・・。大丈夫だろうか。
ああ、そう。家に入って、誰も料理をする気はなかったのだが、シルヴァニアが来てくれたので、みんな座っているだけで済んだ。
「じゃあ、お休み」
『お休みなさい』
エディの声で、子供たちは自分の部屋へと戻っていく。今はみんな一人部屋だからな。
俺たちはリビングに座り、次の事に付いて話し合う。
「メンバー、どうする?」
「出来ればだが・・・。子供たちを置いて行きたい」
「でも、それを認めてくれるとは思えないわね」
「だよな」
だから困っているのだ・・・。出来るだけ子供たちには危ない思いをさせたくない。けど、それが出来るとは思えない。どうしたらいいのだろう・・・。
仕方ないだろう。本人の意思に任せる。それで死んでしまっても・・・。諦めるしか、ない・・・?
そんなわけないだろ! 絶対守り抜くんだ。任せろ、ちゃんと守ってやる。
だから・・・。一緒に行こう。家に残していくのも、それはそれで、不安なんだ。
「でもでも! アナさんが心配です! 今すぐにでも動きましょう!」
「だからなぁ! もう一組来たらいい。そうしたら、此処に向かうように言って貰えばいい。でも、誰も居ないのはダメだ!」
「アナさんが死んじゃったら! エレナさん、今度こそ、今度こそ・・・」
何をやってるのか? ちょっと色々あって、すぐにでもリリィとアナの所に向かいたい。が、みんな、終わったらここ集合、みたいになってるから、誰も居なかったら困るだろうし、動くに動けないのだ。
「ええと・・・。どうしたの?」
「エディ! 良かった!」
「な、何があったのかしら?」
俺はエディに訊いてみた。
「もし、エディが逆の立場だったとしよう。ほら、やられない為、作戦を立ててみてくれ」
「? そうねぇ。戦力が集まってると思われる王都に強い人を連れてくるでしょうから、ずらして別の場所に・・・?!」
「そういう事だ!」
どうやら、魔王は何処からだか分からないが、俺たちの行動を把握しているらしい。だから、攻め込む場所も分かっていたのだろう。エディに確認をとると、やはり。コンクリートの壁。あれは、俺たちが攻める場所を知っていないと出来ない。
「でも、何でリリィの所なわけ?」
「分からないが、エリーがそうだといいはるんだ」
「そんな予感なの・・・」
「ああ、そう・・・」
「ユーリ!」
メリーが来た。やはり、メリーではなかったか。でも、何であんな雷を? まあ良いか。
残るはティナチームとリリィチームとなる。少し待って、どちらも来なかったら二手に分かれる事にした。
「ユーリさん!」
「ティナ! ということは、やはり!」
俺たちは一斉に駆け出した。ティナとエドも驚いたようだが、すぐに着いてくる。
目指すは北区域、リリィとアナの居る場所だ!
「よし、じゃあ行こうか」
「はい」
「アナ、絶対に無理しちゃだめだよ?」
「分かっております、リリィ様」
不安だなぁ。アナ、結構無茶しそうだし・・・。その為に私が居て、絶対に守らなきゃいけないんだけどね。
歩いて行くと、大きな壁を見つけた。え? 此処だよね? アナが間違えるはずないし。でも、こんなの聞いてないんだけど・・・。
コンクリートの壁・・・。どうしようかな・・・。うん、そうだ、登っちゃおう! 上から攻撃出来たら有利だもん!
「アナ、ちょっと良いかな。手ぇ繋いで?」
「? はい」
「それ!」
「わっ?!」
魔法を使って浮いて行く。コンクリートの壁は結構な厚みがあるみたい。乗れそう。なら良かった。あとは着地をゆっくり・・・。
上手く着地し終えてアナを見ると、やっぱりちょっと怖かったみたい。結構な高さあるもんね。
「さて、アナ。こっから攻撃するよ?」
「分かりました。では」
「うん。血の沼!」
「鏖殺魔法其ノ壱 紅蓮烈火」
そう言えば、クリスタもそうなんだけどね、アナ、鏖殺魔法、全部使えるんだって。
っていうのも、瞳の色がオッドアイじゃないからみたい。まあ、他の子も全部使えるには使えるんだけど、瞳と違う色だと威力がすっごく下がってダメらしいよ?
まあ、それはともかく。血で、炎で。どんどん赤くなっていくのを、黙って見つめる。
と、その時、ぐらりと地面が揺れた。壊される、咄嗟にそう思い、アナの手を掴んだ。
さっきと同じ魔法で宙に浮く。と、矢と魔法が飛んでくる! なんで? 凄い兵士の量! こんなの、私、アナを庇いながらなんて無理!
「どういうことなの?!」
「ずらされましたね、戦力を。ともかく、他の方が来るのを待つしかなさそうですね」
「だね・・・。よし、頑張ろう!」
着地はちゃんと出来た。魔法を避けながらで大変だったけどね。さて、行こう!
乱射される魔法を打ち消していく。その間にアナが魔法を撃つ。けど、鏖殺魔法って、凄い魔力使うみたい・・・。あんまり使わせない方がいいかな。
「アナ。武器、出せる?」
「はい」
「行こう。このほうがいいと思う」
「! は、はい」
この数の兵士に突っ込んでいくのは、正直怖い。だって、ほぼ全戦力、みたいな感じだし。
でも、このままアナに魔法を使わせるよりはいいと思う。すぐに援護に来てくれる事を願おう!
「うわあああああ!」
リリィの声だった。俺たちはびくりと肩を揺らし、声の方向に向かう。
なるほど。此処の兵士はみんな強く、その上量が多いな。やはりメインは此処だったのか。
そんな事を考えながら兵士を薙ぎ倒し、リリィのもとに向かうと、リリィの周りには強いバリアがあった。
「リリィ! リリィ!」
俺が声をかけると、リリィはびくりと肩を揺らす。振り返ったリリィは泣きじゃくっていた。
「ユーリ様ぁ! ごめんなさい、ごめんなさいい!」
「な、何があったんだ?」
リリィは一瞬だけバリアを解いて、俺たちを中に入れてくれた。
其処で、やっとリリィの謝罪の意味を理解する。リリィが抱いているのは、口から血を流したアナ。意識はないらしい。
「うっ、うっ・・・。ごめんなさい、私、ちゃんと守るって言ったのに」
「いや、俺たちが悪かった。此処に戦力が集中するとは考えてなかったんだ」
「だから、お父様・・・。私、言ったのに」
とりあえず、エレナのもとへ転送する魔法の魔法陣を使う。エレナなら、何とか出来るかもしれない。
それに、向こうの方が安全だ。もう遅いけれど・・・。エレナ、大丈夫だろうか・・・。
「リリィはどうする、此処にいるか?」
「う、ううん、戦うよ。大丈夫」
「リリィちゃん。無理、しないでね」
「分かってるよ」
ああ、やっぱり、エリーの言う事を聞いてさっさと向かっていればよかった。今更後悔したって遅いし、もうエリーに嫌われてしまっていても仕方ないだろう。
それでも、とにかく。この場を何とかする。方法は簡単。全員倒せばいいんだ!
だいぶお怒りのメリーさんがニヤリと笑いながら落雷を撃った。こ、怖いよ・・・。メリーが起こると、本当に俺でも対抗できない位に強くなるからな・・・。それだというのに笑ってるのが余計に怖い。
まあ、怒っているのはメリーだけじゃない。みんなだ。
リーサとエドが、同時に武器を構えて跳び出して行った。一振りで大量の兵士が飛んで行く。滅茶苦茶強いな・・・。何をしたんだ・・・。まあ、其処までアナ、そしてエレナの事を思ってくれているんだろう。
続いてリリィとエリー。同時に魔法を放つ。
「日光」
「闇」
光と闇属性を一度に使うと、味方以外を一掃する魔法になる。というのも、善の心も悪の心も壊すって、一体後に何が残るんだ、という事だ。味方には効かないんだよな、この魔法って。
兵士たちは悲鳴を上げながらその場に倒れていく。でも、まだ残っている人も居るな。
其処で、ルナとティナ。後ろの方からルナが円月輪を、ティナが火の妖術を使う。全て命中というのが凄い。けれど、まだだ。まだ残っているな。
「ユーリ! 行って頂戴!」
「ああ、任せろ!」
「リーサ姉ちゃん、引くぞ」
「うん!」
さあ、俺たちを騙してアナを傷付けた分、取り返してやるから、覚悟しとけ!
何とか収集を付ける事が出来たが、本当に、全員が全力を出し切った、という感じで、これ以上、誰も戦えない。今何か来たら、本当にまずい。
そんな風に思っていた時、馬車が来た。女王様がひょっこり顔を出す。
「みなさん、乗って下さい、まだ危ないかもしれないですから」
どうやら、アナが目を覚まし、状況を全て伝えてくれたらしい。また寝てしまったらしいが。
そんな事を教えてくれつつ、パクスに戻ってくれた。もう日は暮れているが、まだそんなに遅い時間ではない。
「今日はゆっくり休んで下さい。また明日、頼む事になると思うので」
「はい。女王様も」
「ええ。では、お休みなさい」
はぁ・・・。やっぱり、連れてくんじゃなかった。無理にでも置いてくんだったな。アナ・・・。大丈夫だろうか。
ああ、そう。家に入って、誰も料理をする気はなかったのだが、シルヴァニアが来てくれたので、みんな座っているだけで済んだ。
「じゃあ、お休み」
『お休みなさい』
エディの声で、子供たちは自分の部屋へと戻っていく。今はみんな一人部屋だからな。
俺たちはリビングに座り、次の事に付いて話し合う。
「メンバー、どうする?」
「出来ればだが・・・。子供たちを置いて行きたい」
「でも、それを認めてくれるとは思えないわね」
「だよな」
だから困っているのだ・・・。出来るだけ子供たちには危ない思いをさせたくない。けど、それが出来るとは思えない。どうしたらいいのだろう・・・。
仕方ないだろう。本人の意思に任せる。それで死んでしまっても・・・。諦めるしか、ない・・・?
そんなわけないだろ! 絶対守り抜くんだ。任せろ、ちゃんと守ってやる。
だから・・・。一緒に行こう。家に残していくのも、それはそれで、不安なんだ。
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