剣神勇者は女の子と魔王を倒します
第43話 開戦!
黒魔族の大陸に付いた。まず、やらなくてはいけない事。此処の大陸の地図を入手したいのだ。
これは、メリーが名乗り挙げた。自分は黒魔族だから、怪しまれることなく買えるだろう、と。
「じゃ、行ってくるね。あ、危ない事はしないから大丈夫」
俺が何を言おうとしていたのか分かっていたようだな。
「ああ。気をつけてな」
その間、俺たちは船で待機。わざわざ港町ではなく森の中みたいなところに船を着けた。メリーには頑張って貰わなきゃいけないけれど、流石に港町は危険だろうし。
なんだろう、凄く怪しい雰囲気。あ、そうか、これが黒魔族の魔力。黒魔大陸レリウーリアは、黒魔族と同じ魔力を纏っているのか。
レリウーリアは、あまり緑が無い大陸らしい。此処は森の様な場所だが、もう少し行くと、おそらく砂漠が広がっている、と賢音は言う。
というのも、此処は水も、土も、空気も。全てが大量の魔力を含んでいる。そのせいで、植物の育ちが悪いらしい。一年草は平気だが、多年草はダメらしいから、木は更に無理、という事になる。だからか、あまり食事も美味しくない、らしい。
ついでに言っておくと、今のレリウーリアの状況だが、どうやら黒魔族以外はいないらしい。随分前から、黒魔族以外の人種を殺しているとか・・・。元々、こんな大陸だから、レリウーリアに渡った他の人種の人は少なかったらしいが。
「心配だなぁ、メリッサちゃん。おっちょこちょいだから、どっかで失敗しそう」
賢音が溜息をついて呟く。それは同感だが、此処はメリーを信用して、任せるしかない。何もない事を祈ろう。
ところで、賢音って、立場的には何なんだ? どうして此処まで俺たちに協力してくれるのか。
「ん? ああ、俺はね、別に何でもないんだ。っていうのも、俺のあの能力は、王様でも手に余るっていうか? 王様の権限で勝手に制限できるような代物じゃないんだよ。だから、ほら、自由に行動する権利を貰ってるんだ。・・・まあ、俺を手放したくないんだろうね。今はユリエルくんを気に入ったから協力してるだけさ」
・・・。そ、そうだな。それくらい凄い能力ではある。使い方次第では、大きく運命を変えられる。けれど、賢音に嫌われたらお終い。何が何でも賢音を手放したくない王たちは、最大の権限を与え、自由にさせ、嫌わないでいてくれるようにしているんだろう。まあ、当の賢音は気儘な性格だから、そんな事どうでもいいんだろうけれど。行きたい時、行きたいところに。
それと、俺の事、気に入ってくれているんだな。それは嬉しい。単純に、俺の事を気に入ってくれる人がいるという事が。まあ、結局気儘な自由人だから、それもいつ変わるか分からないが。
「気儘な自由人? まあそうだけど、ほらほら、俺だって爵位とか、興味無いわけじゃないよ? でも、ちょっと堅苦しいのは苦手だな。こっちの方が楽で良いよ。ま、今はそんな気分だってだけ」
王様・・・。残念ですが、賢音は、『気分』で居なくなるかもしれません。
「手に入ったよ、地図!」
「おお、よくやったな、メリー!」
「ふふ、凄いでしょー」
戦利品を持って帰って来たメリーを抱きしめてやる。間違いなく、レリウーリアの地図だ。
一通り褒め終わり、みんなで地図を広げて、何処を襲撃するのかを考える。
というのも、襲撃する場所によっては結果が大きく異なる。まあ、地図では大きさしか分からないが。って、それって結構な賭けじゃないか?!
「うーん、そうだなぁ、ユリエルくんの力なら、小さい村は破滅に追い込める。なら、もうちょっと大きいところが良い」
「ああ。一瞬で破滅させたら、騒ぎにもならないし意味がないからな」
「じゃあ、此処から近いし、この辺りが良いんじゃないかしら?」
「あんまり近いと、船も壊されちゃいそうかな?」
「そうだね。じゃあ此処にしない?」
大きさと、此処から、そして王都までの距離、それを考えていくと、意外に難しいな。
まあ、結局一つの町に決めた。街は無理でも、町なら大丈夫だろう。今からだと遅くなるので、明日出発する事にした。今日はゆっくり休み、期待通り、大騒ぎしてやろう。
『わあああ、なんだ?!』
『一体何が起こっているんだ?!』
エレナの作った強力な爆弾を放り込んで俺たちが来た事を知らせた。大騒ぎになっている。まあ、黒魔族の言葉はあまり知らないから、大騒ぎになってはいても、なんと言っているのかまでは分からないな。
家から火が上がり。火は隣の家へ、隣の家へと移っていく。大火災だ。
植物が少ないから乾燥していて、そのせいで、火の移りが早いようだ。
まあ、これで良い。すぐに王都に使いが行く、だろう。た、多分。そうじゃなかったら、これ、意味無いからな。
「よし、じゃ、俺が行くから、少ししたら来てくれ」
「分かった。無茶しないでね?」
「それは大丈夫だ」
シュラリ、と音を立てて剣を抜く。赤く光るその剣身。勇ましくもあり、不気味でもあり。今このパニックだと、この色は何に見える?
さて、ちゃんと強いという事も分かって貰わなくてはいけないな。紫色の鎧を着た兵士に向かって突っ込んでいく。
気分的には首を落としてしまいたいのだが、一応そこまでやらないで、剣身を左手で握って(ハーフソードという)心臓を貫く。あ、意外に鎧、貫けた。鎧が脆いのか剣が強いのか。おそらく後者だろう。誰が作ったのか知らないが、この剣はもの凄く使いやすいし、強い。
次は魔法使い。魔法は詠唱と手の向きでだいたいが予想できるから大丈夫。詠唱で何の魔法なのかを確認。たいてい、魔法は手のひらを向けた方向に魔法が出るから、それで避ける方向を決める。
リリィの力を借りるまでもないな。魔法を避けて近づき、剣で薙ぎ払う。結構吹き飛んだ。流石に、この辺りの兵士では、其処まで強くは無いのだな。
こんなものか。一旦引こう。やり過ぎると、目的『戦地を大陸に移動させる』が達成できない。飽く迄俺たちは、この状況をを目立たせ無くてはいけないのだ。全滅させたら意味がない。
悲鳴を上げながら逃げ惑う人々。全く関係ない人だ、って思うと・・・。
「あぁ・・・」
「ユーリ? どうしたの?」
「いや・・・。戦争にならなかったら、この人たちを殺す必要は、なかったのに」
「・・・。そう、だね」
さっきの爆弾で、兵士の当て損なった魔法で。沢山の家から炎が上がり、町は地獄と化している。中には、小さい子供を抱いたお母さんの姿もある。劈く悲鳴が木霊するのを、俺はただ、黙って見ている事しか出来ない。
これは・・・。大量虐殺、だよな。戦争を始めた上の人たちのせいで、この人たちを殺す事になってしまったと、考える。けれど。それは、自分を守るための言い訳にすぎない。結局、この状況を生み出したのは俺だ。
あ・・・。なんで、子供たちにこんなものを見せてしまったのだろうか。今更後悔しても遅いけれど、後悔せざるを得ない状況だ。
エドが、泣きだしてしまったルナの視界を塞ぐように抱きしめる。リーサは茫然とその様子を見ている。エリーは、視線を落として、もう、その様子を見ていなかった。
「ユリエルくん・・・」
「賢音、これは・・・。見せちゃだめだった、よな」
「ごめん、俺の不注意。此処まで想定してなかったよ」
崩れていく町だったものを、少し遠くから静かに見つめる。町から脱出した人まで殺すつもりはない。其処まで酷いことが、出来るはずは、無い。
人を殺す事って、此処まで・・・。思っていた以上に何か、来るものがある。ディランは違う。あいつは、本気でやりあって、最後、俺が勝ったから。でも、これは・・・。ただ、俺の勝手な都合で殺してしまった。それは・・・。やっぱり違う。
これって・・・。俺、善なのかな、悪なのかな。
「ユリエルくん、来た」
昼食を食べ終わった時。賢音が俺にそっと告げた。『来た』とは、当然、陸軍の事。王都から離れているから、流石に時間が掛かったな。
「分かった。よし、行くぞ!」
『はい!』
此処で負けたら、何の意味もない。あの、沢山の人を殺した意味が、全くない。絶対勝つ。賢音を見ると、しっかりと頷いてくれた。
賢音は戦いが出来ない。だから、船で待機になる。本当は戦場に居たいらしいが、身を守る術がない故、危険なのだから仕方がない。
「すぐに援軍が来るはずだから。何とか持ち堪えて!」
「大丈夫だ、任せとけ!」
一応この作戦は、アルファズールの王、和の島の王に伝えてあるから、すぐに援軍が来る事になっている。それまでは、何とか俺たちで持ち堪えなくてはいけない。
大丈夫なはずだ。いや、大丈夫でなくてはいけない。
「じゃあ、行ってくる。大丈夫だ、心配するな!」
「うん、頑張って!」
今から。俺たちの戦いが始まる。
これは、メリーが名乗り挙げた。自分は黒魔族だから、怪しまれることなく買えるだろう、と。
「じゃ、行ってくるね。あ、危ない事はしないから大丈夫」
俺が何を言おうとしていたのか分かっていたようだな。
「ああ。気をつけてな」
その間、俺たちは船で待機。わざわざ港町ではなく森の中みたいなところに船を着けた。メリーには頑張って貰わなきゃいけないけれど、流石に港町は危険だろうし。
なんだろう、凄く怪しい雰囲気。あ、そうか、これが黒魔族の魔力。黒魔大陸レリウーリアは、黒魔族と同じ魔力を纏っているのか。
レリウーリアは、あまり緑が無い大陸らしい。此処は森の様な場所だが、もう少し行くと、おそらく砂漠が広がっている、と賢音は言う。
というのも、此処は水も、土も、空気も。全てが大量の魔力を含んでいる。そのせいで、植物の育ちが悪いらしい。一年草は平気だが、多年草はダメらしいから、木は更に無理、という事になる。だからか、あまり食事も美味しくない、らしい。
ついでに言っておくと、今のレリウーリアの状況だが、どうやら黒魔族以外はいないらしい。随分前から、黒魔族以外の人種を殺しているとか・・・。元々、こんな大陸だから、レリウーリアに渡った他の人種の人は少なかったらしいが。
「心配だなぁ、メリッサちゃん。おっちょこちょいだから、どっかで失敗しそう」
賢音が溜息をついて呟く。それは同感だが、此処はメリーを信用して、任せるしかない。何もない事を祈ろう。
ところで、賢音って、立場的には何なんだ? どうして此処まで俺たちに協力してくれるのか。
「ん? ああ、俺はね、別に何でもないんだ。っていうのも、俺のあの能力は、王様でも手に余るっていうか? 王様の権限で勝手に制限できるような代物じゃないんだよ。だから、ほら、自由に行動する権利を貰ってるんだ。・・・まあ、俺を手放したくないんだろうね。今はユリエルくんを気に入ったから協力してるだけさ」
・・・。そ、そうだな。それくらい凄い能力ではある。使い方次第では、大きく運命を変えられる。けれど、賢音に嫌われたらお終い。何が何でも賢音を手放したくない王たちは、最大の権限を与え、自由にさせ、嫌わないでいてくれるようにしているんだろう。まあ、当の賢音は気儘な性格だから、そんな事どうでもいいんだろうけれど。行きたい時、行きたいところに。
それと、俺の事、気に入ってくれているんだな。それは嬉しい。単純に、俺の事を気に入ってくれる人がいるという事が。まあ、結局気儘な自由人だから、それもいつ変わるか分からないが。
「気儘な自由人? まあそうだけど、ほらほら、俺だって爵位とか、興味無いわけじゃないよ? でも、ちょっと堅苦しいのは苦手だな。こっちの方が楽で良いよ。ま、今はそんな気分だってだけ」
王様・・・。残念ですが、賢音は、『気分』で居なくなるかもしれません。
「手に入ったよ、地図!」
「おお、よくやったな、メリー!」
「ふふ、凄いでしょー」
戦利品を持って帰って来たメリーを抱きしめてやる。間違いなく、レリウーリアの地図だ。
一通り褒め終わり、みんなで地図を広げて、何処を襲撃するのかを考える。
というのも、襲撃する場所によっては結果が大きく異なる。まあ、地図では大きさしか分からないが。って、それって結構な賭けじゃないか?!
「うーん、そうだなぁ、ユリエルくんの力なら、小さい村は破滅に追い込める。なら、もうちょっと大きいところが良い」
「ああ。一瞬で破滅させたら、騒ぎにもならないし意味がないからな」
「じゃあ、此処から近いし、この辺りが良いんじゃないかしら?」
「あんまり近いと、船も壊されちゃいそうかな?」
「そうだね。じゃあ此処にしない?」
大きさと、此処から、そして王都までの距離、それを考えていくと、意外に難しいな。
まあ、結局一つの町に決めた。街は無理でも、町なら大丈夫だろう。今からだと遅くなるので、明日出発する事にした。今日はゆっくり休み、期待通り、大騒ぎしてやろう。
『わあああ、なんだ?!』
『一体何が起こっているんだ?!』
エレナの作った強力な爆弾を放り込んで俺たちが来た事を知らせた。大騒ぎになっている。まあ、黒魔族の言葉はあまり知らないから、大騒ぎになってはいても、なんと言っているのかまでは分からないな。
家から火が上がり。火は隣の家へ、隣の家へと移っていく。大火災だ。
植物が少ないから乾燥していて、そのせいで、火の移りが早いようだ。
まあ、これで良い。すぐに王都に使いが行く、だろう。た、多分。そうじゃなかったら、これ、意味無いからな。
「よし、じゃ、俺が行くから、少ししたら来てくれ」
「分かった。無茶しないでね?」
「それは大丈夫だ」
シュラリ、と音を立てて剣を抜く。赤く光るその剣身。勇ましくもあり、不気味でもあり。今このパニックだと、この色は何に見える?
さて、ちゃんと強いという事も分かって貰わなくてはいけないな。紫色の鎧を着た兵士に向かって突っ込んでいく。
気分的には首を落としてしまいたいのだが、一応そこまでやらないで、剣身を左手で握って(ハーフソードという)心臓を貫く。あ、意外に鎧、貫けた。鎧が脆いのか剣が強いのか。おそらく後者だろう。誰が作ったのか知らないが、この剣はもの凄く使いやすいし、強い。
次は魔法使い。魔法は詠唱と手の向きでだいたいが予想できるから大丈夫。詠唱で何の魔法なのかを確認。たいてい、魔法は手のひらを向けた方向に魔法が出るから、それで避ける方向を決める。
リリィの力を借りるまでもないな。魔法を避けて近づき、剣で薙ぎ払う。結構吹き飛んだ。流石に、この辺りの兵士では、其処まで強くは無いのだな。
こんなものか。一旦引こう。やり過ぎると、目的『戦地を大陸に移動させる』が達成できない。飽く迄俺たちは、この状況をを目立たせ無くてはいけないのだ。全滅させたら意味がない。
悲鳴を上げながら逃げ惑う人々。全く関係ない人だ、って思うと・・・。
「あぁ・・・」
「ユーリ? どうしたの?」
「いや・・・。戦争にならなかったら、この人たちを殺す必要は、なかったのに」
「・・・。そう、だね」
さっきの爆弾で、兵士の当て損なった魔法で。沢山の家から炎が上がり、町は地獄と化している。中には、小さい子供を抱いたお母さんの姿もある。劈く悲鳴が木霊するのを、俺はただ、黙って見ている事しか出来ない。
これは・・・。大量虐殺、だよな。戦争を始めた上の人たちのせいで、この人たちを殺す事になってしまったと、考える。けれど。それは、自分を守るための言い訳にすぎない。結局、この状況を生み出したのは俺だ。
あ・・・。なんで、子供たちにこんなものを見せてしまったのだろうか。今更後悔しても遅いけれど、後悔せざるを得ない状況だ。
エドが、泣きだしてしまったルナの視界を塞ぐように抱きしめる。リーサは茫然とその様子を見ている。エリーは、視線を落として、もう、その様子を見ていなかった。
「ユリエルくん・・・」
「賢音、これは・・・。見せちゃだめだった、よな」
「ごめん、俺の不注意。此処まで想定してなかったよ」
崩れていく町だったものを、少し遠くから静かに見つめる。町から脱出した人まで殺すつもりはない。其処まで酷いことが、出来るはずは、無い。
人を殺す事って、此処まで・・・。思っていた以上に何か、来るものがある。ディランは違う。あいつは、本気でやりあって、最後、俺が勝ったから。でも、これは・・・。ただ、俺の勝手な都合で殺してしまった。それは・・・。やっぱり違う。
これって・・・。俺、善なのかな、悪なのかな。
「ユリエルくん、来た」
昼食を食べ終わった時。賢音が俺にそっと告げた。『来た』とは、当然、陸軍の事。王都から離れているから、流石に時間が掛かったな。
「分かった。よし、行くぞ!」
『はい!』
此処で負けたら、何の意味もない。あの、沢山の人を殺した意味が、全くない。絶対勝つ。賢音を見ると、しっかりと頷いてくれた。
賢音は戦いが出来ない。だから、船で待機になる。本当は戦場に居たいらしいが、身を守る術がない故、危険なのだから仕方がない。
「すぐに援軍が来るはずだから。何とか持ち堪えて!」
「大丈夫だ、任せとけ!」
一応この作戦は、アルファズールの王、和の島の王に伝えてあるから、すぐに援軍が来る事になっている。それまでは、何とか俺たちで持ち堪えなくてはいけない。
大丈夫なはずだ。いや、大丈夫でなくてはいけない。
「じゃあ、行ってくる。大丈夫だ、心配するな!」
「うん、頑張って!」
今から。俺たちの戦いが始まる。
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