剣神勇者は女の子と魔王を倒します
第24話 王女様
「ん、なんだあれ?」
「どうしたの、ユーリ様」
「ほら・・・」
俺が指さしたのは魔物の群れだ。何故指をさしたのか。あまりに不自然だった。
何が不自然なのかというと、一カ所に向かって攻撃しているかのようだったからだ。って、え?!
案の定、群れの真ん中には人がいた。煌びやかな馬車があって、その周りに兵士らしき人がいる。あまりに多勢に無勢。このままでは魔物に殺されてしまう事だろう。
それを見過ごすわけにもいかない。俺たちは買ったばかりの馬車を降り、魔物を倒す為に攻撃を始める。
今日は子供たちの初めての実戦だ。武器を教え始めてから一カ月が経っている。ルナは最初、殺すことを躊躇していたが、それ以外は全く何の問題も無かった。そして、ルナも今は問題が無い。エリーが手加減している気がするんだけど・・・。気のせいかな。
ただ、この馬車の周りの魔物は随分強い。子供たちには無理をしない程度に、といい、俺たちは本気で救出を目指す。
倒し終えると、馬車から燃えるような赤い髪の女の子が出てきた。赤いドレスを身に纏っている様子や、煌びやかな馬車、周りの兵士の態度からして、貴族だろう。
でも、なんだか見た事がある気がするな。誰だっけ。
「助けて下さり、ありがとうございます。私はパクスの王女、アゼレアです」
まさかの王女様でした。
そのまま俺たちの馬車の馬を手懐けられ、王城に無理やり連れていかれ、王様にお礼を言われ、どうしていいのか分からない俺たちだ。目の前に王様が居るんだぞ? どうしていいのか分からない。
とにかく、よほど気に入られたらしく、今お茶の準備を整えるから、と言っていた。お茶を出してくれる位なら、帰して欲しいんだけど。
と、お茶の準備ができたらしく、そのまま連行された。
『うわぁ・・・』
「・・・何か問題でも?」
メイドさんが困ったような顔をする。問題はない。此処でお茶を飲むってどうなんだ、と思っただけだ。この部屋、客間なのか知らないが、絢爛豪華、というのがピッタリな豪華な部屋だ。天井に目を向ければシャンデリア。テーブルや椅子は装飾のある綺麗な物だ。
「さあ、座って。ゆっくり話し合いましょう?」
『・・・、はい』
非常に面倒なのだが、王様に言われた事を断れるはずも無く。席について王様の顔を見る。ちなみに、両隣りには王女様。
えっと、まず、俺たちはなんでここに連れてこられたんだ?
「長々と話しても仕方がないから、単刀直入に言うとしよう」
「・・・え?」
予想外の言葉に、俺は思わず声を上げた。
「・・・。お主らに、国の安全を守るため、魔物の討伐をお願いしていきたい」
魔物の、討伐。って言うと、この前のドラゴンみたいな感じだろうか。別に問題はないけれど・・・。
嫁や子供たちの表情を見る限り、「絶対嫌!」という人はいなさそうだ。
「あ、はい。えっと・・・」
なんて言えばいいんだ? その様子に気がついた王様が助けてくれた。
「引き受けて、くれるか?」
「はい」
俺が言うと、王女様は顔を輝かせた。そして、目を細めて呟く。
「これで、剣神様も休みを取る事が出来ますね」
「・・・。剣神様?」
「ああ。今までは一人で引き受けて貰っていたのですわ。最近は弟子が来きますが」
そう、だったのか。父さんが飛びまわっていたのは、王様に言われてだったのか。ん、でも、大陸中を飛び回ってたんじゃなかったか?
「というか、確かヴァナーとディウムも引き受けておりませんでした?」
「だから父さんは大陸中を・・・」
『・・・、父さん?』
「さっき、名乗らなかったですっけ? 剣神ユリシーズの息子、ユリエル・ルーズヴェルトです」
ああ、そうか。父さんの息子だって分からなかったのか。名前は名乗ったんだが。
最近は知名度が上がってきたとはいえ、王様は知らなかったか。でも、わざわざ名乗る必要はないだろうし・・・。
「こ、これはこれは。剣神殿の息子さんでしたのね」
「あ、はい。まだ、剣神は父さんですが・・・」
「そんな事を仰らずに。武術大会の事、聞いております。そう言えば、メリッサにエディナと言えば・・・」
こうして、どんどん俺たちの素性がばれていったのだった。
「では、よろしくお願い致しますわ。皆さんも、頑張って下さい」
「あ、はい」
「では。本日は誠にありがとうございました」
城を出ると、俺たちは顔を見合わせた。まさかこんなことになるなんて思っていなかったのだ。
「まさか王様から直々に依頼が来る事になるなんて思わなかったわ」
「だよな。まあ、冒険はしようと思っていたし、丁度良いかもしれないな」
「そうだね。冒険楽しみ。ね、リリィ?」
「私はユーリ様に付いて行くだけです」
ふいに、エドが大人しい事に気がついた俺は声を掛けてみる。
「エド、どうしたんだ?」
「王女様・・・。可愛かった」
そう言えば、王女様は七歳位か? あまり大きくは見えなかったが。幼いながらも王女としての自覚があり、可愛いというより、とても美しかった。
って、そうじゃなくて、何でエドがそんな事を?
「ドレス。綺麗で・・・」
「・・・。よし! リーサ、今度ドレスを着てみよう!」
「はいぃ? なんでぇ?」
「何でも! 良いな?」
「は、はぁい・・・」
まさか王女様と結婚したいなんて言われたらたまらないから、出来るだけ注目を逸らそうと、俺はリーサを着飾ってみた。
「ほら、どうだ?」
「おおっ・・・! 可愛い」
「そうかなぁ? エドくん、ありがとぉ」
とりあえずは心配ないだろう。
「お父様。私、一体何?」
「? エリー、どうしたんだ?」
「私、悪魔? 人間?」
エリーは泣きそうだった。よく分からないが・・・。何か問題が起きたようだな。
「リリィ! ちょっと良いか?」
「ん? うん。って、あれ? エリー、どうしたの?」
「な・・・。なんでも、ない」
エリーは自分の部屋に行ってしまった。エリーの姿が見えなくなると、俺はリリィにさっきの言葉を伝える。
「うーん・・・。エリーって、あんまり喋らないから、何考えてるのか分かり辛いけど・・・。どっちとして生活すればいいのか、分からないってことかな?」
次の日。魔物狩りに出かけたエリーは、魔法を撃とうと魔力を集め、はっとしたようにそれを打ち消した。俺はそれに気が付き、攻撃の手を緩める。
「? エリー、どうかしたか?」
「ダメ・・・」
「え?」
「ううん。いいの」
何となく、分かった気がする。エリーは光属性の魔法が得意なのだ。
「え、それだけ?」
「ああ。でも、エリーはきっと悪魔になりたかったんだ。悪魔なのに、光属性が得意なのか?」
「あ・・・。そう言えば私たち、悪魔でも、人間でも、好きなように生きていいんだよ、って言ってた」
「それなんだよな。問題は。別に、構わないと思うけどな・・・」
エリーは羽を使って動く事が多い。そのせいなのか知らないが立派な大きな羽になっている。もしかしたら、自分が悪魔である事を表したかったのかも知れない。そう言った事は、考えればきりがない。エリーの悩み事は間違いないだろう。なら、明日。
一人で庭のベンチに座っているエリーを見つけ、俺は隣に座る。
「なあエリー」
「・・・なに」
「エリーって、悪魔に憧れてる、か?」
「! そんなこと、ない」
「そうか? そうは見えないけどな。俺のこと、嫌いか?」
「そ、そんなはずない! お父様のこと・・・。嫌いなわけ、ない・・・」
珍しくエリーは目を見開いて叫んだ。泣きそうな顔で俯くと、呟くように続けた。
こんなエリーは珍しい。何を訊いても、つまらなそうに返すのが基本だった。いつも、表情にも変化があまり無くて、声色も一定だった。
「お父様。私、嫌いじゃ、ない」
「うん、でも、エリーは悪魔になりたい。そうだな? もし俺が父親じゃなかったら、完全な悪魔だったかもしれない」
「でも・・・。お父様、誇り。違う人じゃ、だめ」
「俺もエリーの事は誇りの娘だと思ってるよ。光魔法が得意な悪魔だっていいと思うけどな」
「それは・・・。悪魔じゃない、の」
「じゃあ教えてやろう。リリィ、エリーのお母様はな、闇と死属性の魔法が苦手なんだ」
「! そう、なの?」
これは紛れもない事実。まあ、全く使えないわけではないが。悪魔なのに! ああ、どうしよう! 別に何か売りを作らねば! そして生まれたのが無効化の魔法。別に、何が売りでもいいと思う。
「光魔法が得意な悪魔なんて、きっとびっくりするぞ」
「そう、かな」
「なんだっていいだろ。何が得意でも構わない。さ、そんな事で悩まないで魔法を思い切り放って」
「・・・うん。ありがと」
エリーは頷いて立ちあがった。其処にリリィが来て、俺に向かって怖いほどの笑みを向ける。
「り、リリィ? どうしたんだ?」
「なぁんで、言っちゃったかな? 私の唯一の欠点なのに?」
「い、いやいや、エリーを励ますためだ! それとも、エリーが落ち込んでても良いっていうのか?!」
「それは困るけど・・・。もっと違う方法ないわけ?」
「俺は頭が悪いんだ」
「知ってる」
じゃあ怒らないでくださいな、リリィさん。リリィは「もう」と俺の頭を軽く叩き、ニコッと笑って俺たちと共に家の中に戻った。怒ってはいないらしい。怒ったふりがあまりにも上手すぎますよ・・・。
「父さん! 今すぐ来て!」
「エド? 何があったんだ?」
「エ、ルナが! 猫みたいな魔物に!」
エドはルナをお姫様抱っこしていた。なんだかんだ言っても、ルナの事を、ちゃんと大切な妹だと思ってるんじゃないか。まあ、リーサの方が好きなのは本音かもしれないが。
そう思ってから、ルナの傷の様子を見る。肩を爪でザックリ。あ、足もやられてるな。単純だから、治癒魔法ですぐ治せるだろう。
「エディ! 治癒魔法使えるか?」
「え、それって誰?」
「ルナだ。ちょっと来てくれ」
「えぇ?! ええ、今行くわ!」
俺はエドからルナを受け取り、エディの声が聞こえる方に進む。エドはまだ心配そうな顔をしていた。エリーもそうだが、みんな成長しているんだな、と思う。思っていたより、子供たちは成長していたらしい。
「ほら、これで大丈夫よ」
「ありがとう、母さん」
「ルナ、大丈夫か?」
「うん、もう痛くない」
エドとルナはそんな短い会話を交わし、微笑みあった。それは良いんだが、何があったのかはちゃんと聞いておこう。
「えっと・・・。朝、父さんには言ったけど、俺たち、魔物を倒しに行ったんだ。それで、急に俺に向かって跳んできた魔物から庇おうとして」
「え? ルナがエドを庇おうとしたのか?」
「だって、後ろからで、お兄ちゃん、気付いてなかったんだよ! 危ない、って思って、咄嗟に」
とはいえ、自分を犠牲にしちゃいけないな。命は一つしかないんだから。
「ルナ。次からは無茶はしちゃいけないぞ」
「うん、わかってるよ。気をつけるね」
みんな変わったな・・・。成長したというのは嬉しい。けれど、もう何も知らなかった時の、俺たちを頼りにしていた時のみんなを見れないと思うと、それはそれで寂しい気がする。
ん? リーサだけはあまり変わらないな・・・。マイペースだからか?
衣装デザイン、もう一話前に乗せようと思ったら忘れました。DSの画素だと目は書けません。頑張っても、どうもずれるので上手く書けないです・・・。紙の方が良いのですが、それを上げる術が無く。なんか残念な感じだなぁ。
<a href="//12298.mitemin.net/i149796/" target="_blank"><img src="//12298.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i149796/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
<a href="//12298.mitemin.net/i149797/" target="_blank"><img src="//12298.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i149797/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
「どうしたの、ユーリ様」
「ほら・・・」
俺が指さしたのは魔物の群れだ。何故指をさしたのか。あまりに不自然だった。
何が不自然なのかというと、一カ所に向かって攻撃しているかのようだったからだ。って、え?!
案の定、群れの真ん中には人がいた。煌びやかな馬車があって、その周りに兵士らしき人がいる。あまりに多勢に無勢。このままでは魔物に殺されてしまう事だろう。
それを見過ごすわけにもいかない。俺たちは買ったばかりの馬車を降り、魔物を倒す為に攻撃を始める。
今日は子供たちの初めての実戦だ。武器を教え始めてから一カ月が経っている。ルナは最初、殺すことを躊躇していたが、それ以外は全く何の問題も無かった。そして、ルナも今は問題が無い。エリーが手加減している気がするんだけど・・・。気のせいかな。
ただ、この馬車の周りの魔物は随分強い。子供たちには無理をしない程度に、といい、俺たちは本気で救出を目指す。
倒し終えると、馬車から燃えるような赤い髪の女の子が出てきた。赤いドレスを身に纏っている様子や、煌びやかな馬車、周りの兵士の態度からして、貴族だろう。
でも、なんだか見た事がある気がするな。誰だっけ。
「助けて下さり、ありがとうございます。私はパクスの王女、アゼレアです」
まさかの王女様でした。
そのまま俺たちの馬車の馬を手懐けられ、王城に無理やり連れていかれ、王様にお礼を言われ、どうしていいのか分からない俺たちだ。目の前に王様が居るんだぞ? どうしていいのか分からない。
とにかく、よほど気に入られたらしく、今お茶の準備を整えるから、と言っていた。お茶を出してくれる位なら、帰して欲しいんだけど。
と、お茶の準備ができたらしく、そのまま連行された。
『うわぁ・・・』
「・・・何か問題でも?」
メイドさんが困ったような顔をする。問題はない。此処でお茶を飲むってどうなんだ、と思っただけだ。この部屋、客間なのか知らないが、絢爛豪華、というのがピッタリな豪華な部屋だ。天井に目を向ければシャンデリア。テーブルや椅子は装飾のある綺麗な物だ。
「さあ、座って。ゆっくり話し合いましょう?」
『・・・、はい』
非常に面倒なのだが、王様に言われた事を断れるはずも無く。席について王様の顔を見る。ちなみに、両隣りには王女様。
えっと、まず、俺たちはなんでここに連れてこられたんだ?
「長々と話しても仕方がないから、単刀直入に言うとしよう」
「・・・え?」
予想外の言葉に、俺は思わず声を上げた。
「・・・。お主らに、国の安全を守るため、魔物の討伐をお願いしていきたい」
魔物の、討伐。って言うと、この前のドラゴンみたいな感じだろうか。別に問題はないけれど・・・。
嫁や子供たちの表情を見る限り、「絶対嫌!」という人はいなさそうだ。
「あ、はい。えっと・・・」
なんて言えばいいんだ? その様子に気がついた王様が助けてくれた。
「引き受けて、くれるか?」
「はい」
俺が言うと、王女様は顔を輝かせた。そして、目を細めて呟く。
「これで、剣神様も休みを取る事が出来ますね」
「・・・。剣神様?」
「ああ。今までは一人で引き受けて貰っていたのですわ。最近は弟子が来きますが」
そう、だったのか。父さんが飛びまわっていたのは、王様に言われてだったのか。ん、でも、大陸中を飛び回ってたんじゃなかったか?
「というか、確かヴァナーとディウムも引き受けておりませんでした?」
「だから父さんは大陸中を・・・」
『・・・、父さん?』
「さっき、名乗らなかったですっけ? 剣神ユリシーズの息子、ユリエル・ルーズヴェルトです」
ああ、そうか。父さんの息子だって分からなかったのか。名前は名乗ったんだが。
最近は知名度が上がってきたとはいえ、王様は知らなかったか。でも、わざわざ名乗る必要はないだろうし・・・。
「こ、これはこれは。剣神殿の息子さんでしたのね」
「あ、はい。まだ、剣神は父さんですが・・・」
「そんな事を仰らずに。武術大会の事、聞いております。そう言えば、メリッサにエディナと言えば・・・」
こうして、どんどん俺たちの素性がばれていったのだった。
「では、よろしくお願い致しますわ。皆さんも、頑張って下さい」
「あ、はい」
「では。本日は誠にありがとうございました」
城を出ると、俺たちは顔を見合わせた。まさかこんなことになるなんて思っていなかったのだ。
「まさか王様から直々に依頼が来る事になるなんて思わなかったわ」
「だよな。まあ、冒険はしようと思っていたし、丁度良いかもしれないな」
「そうだね。冒険楽しみ。ね、リリィ?」
「私はユーリ様に付いて行くだけです」
ふいに、エドが大人しい事に気がついた俺は声を掛けてみる。
「エド、どうしたんだ?」
「王女様・・・。可愛かった」
そう言えば、王女様は七歳位か? あまり大きくは見えなかったが。幼いながらも王女としての自覚があり、可愛いというより、とても美しかった。
って、そうじゃなくて、何でエドがそんな事を?
「ドレス。綺麗で・・・」
「・・・。よし! リーサ、今度ドレスを着てみよう!」
「はいぃ? なんでぇ?」
「何でも! 良いな?」
「は、はぁい・・・」
まさか王女様と結婚したいなんて言われたらたまらないから、出来るだけ注目を逸らそうと、俺はリーサを着飾ってみた。
「ほら、どうだ?」
「おおっ・・・! 可愛い」
「そうかなぁ? エドくん、ありがとぉ」
とりあえずは心配ないだろう。
「お父様。私、一体何?」
「? エリー、どうしたんだ?」
「私、悪魔? 人間?」
エリーは泣きそうだった。よく分からないが・・・。何か問題が起きたようだな。
「リリィ! ちょっと良いか?」
「ん? うん。って、あれ? エリー、どうしたの?」
「な・・・。なんでも、ない」
エリーは自分の部屋に行ってしまった。エリーの姿が見えなくなると、俺はリリィにさっきの言葉を伝える。
「うーん・・・。エリーって、あんまり喋らないから、何考えてるのか分かり辛いけど・・・。どっちとして生活すればいいのか、分からないってことかな?」
次の日。魔物狩りに出かけたエリーは、魔法を撃とうと魔力を集め、はっとしたようにそれを打ち消した。俺はそれに気が付き、攻撃の手を緩める。
「? エリー、どうかしたか?」
「ダメ・・・」
「え?」
「ううん。いいの」
何となく、分かった気がする。エリーは光属性の魔法が得意なのだ。
「え、それだけ?」
「ああ。でも、エリーはきっと悪魔になりたかったんだ。悪魔なのに、光属性が得意なのか?」
「あ・・・。そう言えば私たち、悪魔でも、人間でも、好きなように生きていいんだよ、って言ってた」
「それなんだよな。問題は。別に、構わないと思うけどな・・・」
エリーは羽を使って動く事が多い。そのせいなのか知らないが立派な大きな羽になっている。もしかしたら、自分が悪魔である事を表したかったのかも知れない。そう言った事は、考えればきりがない。エリーの悩み事は間違いないだろう。なら、明日。
一人で庭のベンチに座っているエリーを見つけ、俺は隣に座る。
「なあエリー」
「・・・なに」
「エリーって、悪魔に憧れてる、か?」
「! そんなこと、ない」
「そうか? そうは見えないけどな。俺のこと、嫌いか?」
「そ、そんなはずない! お父様のこと・・・。嫌いなわけ、ない・・・」
珍しくエリーは目を見開いて叫んだ。泣きそうな顔で俯くと、呟くように続けた。
こんなエリーは珍しい。何を訊いても、つまらなそうに返すのが基本だった。いつも、表情にも変化があまり無くて、声色も一定だった。
「お父様。私、嫌いじゃ、ない」
「うん、でも、エリーは悪魔になりたい。そうだな? もし俺が父親じゃなかったら、完全な悪魔だったかもしれない」
「でも・・・。お父様、誇り。違う人じゃ、だめ」
「俺もエリーの事は誇りの娘だと思ってるよ。光魔法が得意な悪魔だっていいと思うけどな」
「それは・・・。悪魔じゃない、の」
「じゃあ教えてやろう。リリィ、エリーのお母様はな、闇と死属性の魔法が苦手なんだ」
「! そう、なの?」
これは紛れもない事実。まあ、全く使えないわけではないが。悪魔なのに! ああ、どうしよう! 別に何か売りを作らねば! そして生まれたのが無効化の魔法。別に、何が売りでもいいと思う。
「光魔法が得意な悪魔なんて、きっとびっくりするぞ」
「そう、かな」
「なんだっていいだろ。何が得意でも構わない。さ、そんな事で悩まないで魔法を思い切り放って」
「・・・うん。ありがと」
エリーは頷いて立ちあがった。其処にリリィが来て、俺に向かって怖いほどの笑みを向ける。
「り、リリィ? どうしたんだ?」
「なぁんで、言っちゃったかな? 私の唯一の欠点なのに?」
「い、いやいや、エリーを励ますためだ! それとも、エリーが落ち込んでても良いっていうのか?!」
「それは困るけど・・・。もっと違う方法ないわけ?」
「俺は頭が悪いんだ」
「知ってる」
じゃあ怒らないでくださいな、リリィさん。リリィは「もう」と俺の頭を軽く叩き、ニコッと笑って俺たちと共に家の中に戻った。怒ってはいないらしい。怒ったふりがあまりにも上手すぎますよ・・・。
「父さん! 今すぐ来て!」
「エド? 何があったんだ?」
「エ、ルナが! 猫みたいな魔物に!」
エドはルナをお姫様抱っこしていた。なんだかんだ言っても、ルナの事を、ちゃんと大切な妹だと思ってるんじゃないか。まあ、リーサの方が好きなのは本音かもしれないが。
そう思ってから、ルナの傷の様子を見る。肩を爪でザックリ。あ、足もやられてるな。単純だから、治癒魔法ですぐ治せるだろう。
「エディ! 治癒魔法使えるか?」
「え、それって誰?」
「ルナだ。ちょっと来てくれ」
「えぇ?! ええ、今行くわ!」
俺はエドからルナを受け取り、エディの声が聞こえる方に進む。エドはまだ心配そうな顔をしていた。エリーもそうだが、みんな成長しているんだな、と思う。思っていたより、子供たちは成長していたらしい。
「ほら、これで大丈夫よ」
「ありがとう、母さん」
「ルナ、大丈夫か?」
「うん、もう痛くない」
エドとルナはそんな短い会話を交わし、微笑みあった。それは良いんだが、何があったのかはちゃんと聞いておこう。
「えっと・・・。朝、父さんには言ったけど、俺たち、魔物を倒しに行ったんだ。それで、急に俺に向かって跳んできた魔物から庇おうとして」
「え? ルナがエドを庇おうとしたのか?」
「だって、後ろからで、お兄ちゃん、気付いてなかったんだよ! 危ない、って思って、咄嗟に」
とはいえ、自分を犠牲にしちゃいけないな。命は一つしかないんだから。
「ルナ。次からは無茶はしちゃいけないぞ」
「うん、わかってるよ。気をつけるね」
みんな変わったな・・・。成長したというのは嬉しい。けれど、もう何も知らなかった時の、俺たちを頼りにしていた時のみんなを見れないと思うと、それはそれで寂しい気がする。
ん? リーサだけはあまり変わらないな・・・。マイペースだからか?
衣装デザイン、もう一話前に乗せようと思ったら忘れました。DSの画素だと目は書けません。頑張っても、どうもずれるので上手く書けないです・・・。紙の方が良いのですが、それを上げる術が無く。なんか残念な感じだなぁ。
<a href="//12298.mitemin.net/i149796/" target="_blank"><img src="//12298.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i149796/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
<a href="//12298.mitemin.net/i149797/" target="_blank"><img src="//12298.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i149797/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
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