剣神勇者は女の子と魔王を倒します
第14話 ダンジョンクリア
「にしても、ディオネの友達、見つからないな」
「本当。何処に行っちゃったのかな」
「うぅ。もう食べられちゃったんだ、きっとそうだ・・・。うぅ」
「そ、そんな事ないよ。大丈夫だよ」
ディオネがネガティブになってきたところで、向こうの方から「わあぁぁぁぁ!」という悲鳴の様は叫び声が聞こえてきた。やっぱり気をつけつつも走る。
「あっ、グリフィンくん!」
「その声はディオネ?! こっちに来るな! 危ないぞ!」
うん、危ないね。凄い量の魔物に襲われている。グリフィンを傷付けないようにしながら魔物を倒すのは、結構大変だった。
全て倒し終わり、俺たちはグリフィンに駆け寄る。目立った外傷と言えば、左腕の傷くらい。結構深いな・・・。
「お、お前たちは?」
「私を助けてくれたの。アルファズール武術学院三年Sクラスだって」
「嘘っ?! じゃ、じゃあ・・・」
「手伝ってくれるって」
「! あ、ありがとうございます!」
彼は俺たちに向かってお辞儀をした。ああ、動かさない方がいいのに・・・。
エディナが傷の具合を見て、「これくらいなら問題ないよ」と言いつつ回復の魔法を掛けた。一瞬で傷は癒えた。
「す、凄い・・・」
「もう痛いところはない?」
「大丈夫です。セドリックとヘーゼルは?」
ディオネは黙って首を横に振った。グリフィンは「そっか・・・」と悲しそうに俯く。
当然、グリフィンくんも一緒に行動する事になった。俺たちは先を急・・・ぎたいところだが。
「もうお昼ですね。私の異空間にサンドイッチがありますから、みなさん、食べましょう」
グリフィンは、どうやらそこそこ戦えそうだ。ただ、悪霊に苦戦をして、追い詰められたらしい。
「魔法が使えないから。俺、どうしようもなくて」
「そっか・・・」
大体、魔法が使えても蝶には苦戦するし。難しいところだよな。俺みたいに特殊な魔法でも使っていない限りは。
ただ、この魔法は相当体力使うからな・・・。もう疲れてしまった。リリィはそんな、俺の様子に気が付いた。
「御主人様、大丈夫?」
「一応な・・・。でも、さっきの魔法が相当響いてる。まだ先が長いなら絶望的な感じだ」
「だから言ったのですよ。上級魔法はやめときなさいって。大人しく泉を使っていればいいものを」
ルミアの言葉に苦笑い。確かに。でも、あそこは雨を使うべきだった。なぜなら・・・。
「きっと、泉じゃ倒せなかったさ」
「あら、そうですか。そう言えば、あの悪霊、結構強かったですね」
ちなみに、基本の魔法のうち、空間を除く十二の魔法は、初級、中級、上級に分かれている。全部で三十六ってことになるな。ちゃんと覚えているからな?
ええと、初級から中級、上級でいく。
火は、火、炎、噴火。
水は、水、泉、雨。
氷は、氷、雪、雹。
草は、草、葉、森。
土は、土、泥、粘土。
石は、石、岩、磁石
風は、風、疾風、暴風。
電気は、電気、雷、落雷。
光は、光、月光、日光。
治癒は、薬草、治癒、治療。
闇は、暗、夜、闇。
死は、キル、マーダー、デス。
これを合成して新しい魔法を作ったり、種族ごとの特別な魔法があったりと、これは本当に基本だけどな。
まあ、俺は基本の魔法が使えるだけでも十分だ。魔法は諦めていたしな。・・・疲れるが、仕方ない。
「・・・。一つだけ、教えてあげましょう。このダンジョン、終わりはもうすぐですよ」
「え? アンジェリカ先生、なんでそんな事が分かるんですか?」
「ふふ・・・。エレナさん。この辺りの魔物はメガロが増えてきた。ボスを守る為です」
「じゃあ・・・!」
「ええ、あとちょっとです、頑張りましょう!」
先生の言うとおりだった。俺たちは、すぐにボスの居る部屋を見つける事が出来た。
「さて、この先に居るのは、ボスです。良いですか? 私は基本的には手を出しません。皆さんで倒して下さい」
『はい』
でも、結局、セドリックとヘーゼルは見つけられなかった。ディオネとグリフィンは諦めたような顔をしている。もう見つからない、それこそ、この世にはいないと思っているんだろう。
俺たちはそれぞれ武器を構えて部屋に入った。
「?! これは・・・!」
其処に居たのは、大きなドラゴンだ。赤くて、大きな翼があるドラゴン。
「赤・・・。火。エディナちゃん、エレナちゃん」
「分かった」
「うん。奈桜ちゃん」
「了解です、エレナお嬢様」
エディナはそっと息を吐き、すぅっと大きく息を吸った。
「カルリーネ! 積乱雲!」
「鏖殺魔法其ノ弍」
「豪雨!」
「紺碧怒涛」
エディナが自分の精霊に呼び掛け、積乱雲のウォームアップマジックを使う。俺の使ったクラウドより、ずっと高等な魔法だ。
エディナと奈桜は、息を合わせ、同時に魔法を撃った。両方とも水魔法。火属性のドラゴンには効果的だ。
「血の池」
「鏖殺魔法其ノ肆 毒蔓纏鐃」
「鏖殺魔法其ノ漆 荒天神風」
「えっと・・・。雨!」
みんなの魔法に気をつけつつ、俺は走ってドラゴンに近づく。すぐ後ろには当然リリィ。
「リリィ、行くぞ!」
「はい! それっ!」
リリィの使った魔法は、俺の身体能力を最大まで引き出す魔法。床を蹴りあげ、宙へ。相当な高さを跳、いや、飛んでるな・・・。
そのまま、真っ二つに!
着地は鮮やかに。リリィの魔法のおかげでとん、と軽く着地出来た。そこで、リリィが魔法を解く。
「意外と、あっさり・・・?」
「いや、まだだ。何か来る」
その、エディナとグリフィンの会話に、俺ははっとして前を見る。
これは・・・。結構まずいな。現れたのは、イフリートだ。
火の悪霊、イフリート。これ、俺は干渉できないんだよな。触れないし。
「ユリエル、後ろに下がってて! さっきの魔法は体力使うんでしょ?」
「あ、ああ、悪い!」
「大丈夫、さっきまでの分、全て返しますね!」
・・・。強い。的確に狙って、全て命中。一撃一撃が強いのに、スピードがある。これ以上の攻撃が、果たして存在するのだろうか。そう思えるような攻撃だ。
でも、俺たちは学生。もっと強い人は沢山いる。・・・そう考えると、楽しみで仕方がない。
「エディナちゃん、最高の魔法を叩きこんで!」
「分かった! 避けけて! 雨、落雷、暴風、『台風』!」
最高の魔法というのにふさわしい魔法。全てを壊し尽くす魔法。エディナの最高傑作であった台風は、誰にも止められない。イフリートは消え去った。
「はぁ、はぁ・・・。ああ、もう魔力切れだよぉ」
「今の凄かったよ、エディナちゃん」
「エディナ、凄い! 私のホムンクルスの魔法よりずっと凄い!」
そう言っていると、上から大きな宝箱が降ってきた。シミオンがそれに触れた時、辺りは光に満ち溢れ・・・。
気づくと外に出ていた。
「?! グリフィンくん、ディオネちゃん?!」
「セドリック、ヘーゼル!」
どうやら、あの宝箱に触れた事で、ダンジョンで迷っていた二人も脱出できた様子。四人は嬉しそうに抱き合った。
で、俺たちは宝箱を開けて中を見る。中には煌びやかな武器や装飾品等が入っている。が、いくつか薬が入っていた。
「ねえ、ディオネちゃんたちの探している薬って、どれ?」
「え? えっと・・・。淡い水色だって言ってた」
「じゃあこれかな。はい」
『ありがとうございます!』
四人は、俺たちとホテルに行く事になった。あのホテルはアルファズール武術学院のもの。アンジェリカ先生の許可があれば入っても問題はないはずだ。っていうか、問題ない。いま、携帯で連絡を取った。
「じゃあ行きましょう。あ、ほら、迎えの車が来ましたよ」
「・・・。全員乗れますか?」
「もう一台手配しましょう」
アンジェリカ先生がそう言ってすぐに車を呼んでくれたので、俺たちは無事に車に乗る事が出来た。
そうやって俺たちがホテルに着くと、何故だかくらい、重い雰囲気。不思議に思って近づいてみる。
・・・ああ。なるほどな。怪我をした生徒がいるらしい。獣人の男の子だ。右肩に大きな傷がある。
アルファズール武術学院の教師ともなれば、普通に考えて治癒くらい簡単なはずだ。が。そう簡単にいかない事情がある。毒が含まれているからだ。
「解毒した後治癒をしなきゃいけないわけか」
「でも、こんな毒初めて見るよ。僕にも解毒は無理」
「私も無理かな」
「すみませんが、私も」
仕方ない。本当はやりたくないが、この方法を取るしかないようだ。俺は失敗作の、あの毒を取り出した。アンジェリカ先生が苦笑いをする。
「ユリエルさん、本当に使うつもりですか?」
「それしか方法ないですし」
「まあそうですけれど」
さて、この毒。調べてみると、なんと新種だったのだ。しかも、色が違っても同じ効果。
この毒は相当強い。少し触れただけで忽ち全身に回り、死に至る。
が、他の毒に触れると、その毒と中和される、という特性があったのだ。だから、解毒には効果的だと考えられる。どうせこのまま放っておいたら死んでしまう。試す価値はある。
「少し、良いですか?」
「あ・・・。は、はい」
「すみません」
俺はゴム手袋をつけ、薬を匙ですくって傷口に乗せる。どうだろうか・・・。
赤黒く変色していた皮膚は肌色に戻る。アンジェリカ先生がほっとしたように微笑みを作る。
「治癒。よかったです、効果があって」
「本当に。大丈夫か?」
「あ、はい・・・」
その、おそらく獣人の男の子は安心したように笑った。元気そうで良かった。
彼はすぐに他の友達に囲まれた。泣き出している子まで居る。同い年なのに、なんだか小さい子を見ているかのような気分だ。
「さて、戻りましょう。この子たちの事もありますし」
「ああ、そうだな」
「私たち、どうすればいいんでしょう?」
ディオネが俺たちの話に気がついて首を傾げた。
「ん、一応、送ってあげるよ。車を準備しておいてあげる。けど、時間がね。明日で良いかな」
「・・・。心配だけど、でも、良いです」
「じゃあ、今日は泊まって」
『はい』
俺たちは部屋に入り、宝箱の中身を分配していく。様々な薬を見て、エレナは顔を輝かせた。
「これって・・・! あ、これも、もしかして! わぁ、凄い!」
「楽しそうでなによりです・・・。これ、いりますか?」
「はい!」
そうやって、薬の類はエレナのものとなった。
他の装飾品なども分ける。いらないものは売ればお金になるだろう。
分け終わると、丁度夕食の時間だった。俺たちは部屋を出て移動を開始する。
「明日も頑張りましょう」
「うん! もちろんだよ」
「頑張ろうな」
「楽しみだね」
何だ、修学旅行、結構楽しいな。リリィを見ると、ニコッと笑った。ね、といった感じだろうか。
もう、このメンバーでいられるのも少しなんだな・・・。そう思うと、なんだかさびしい感じがした。
「本当。何処に行っちゃったのかな」
「うぅ。もう食べられちゃったんだ、きっとそうだ・・・。うぅ」
「そ、そんな事ないよ。大丈夫だよ」
ディオネがネガティブになってきたところで、向こうの方から「わあぁぁぁぁ!」という悲鳴の様は叫び声が聞こえてきた。やっぱり気をつけつつも走る。
「あっ、グリフィンくん!」
「その声はディオネ?! こっちに来るな! 危ないぞ!」
うん、危ないね。凄い量の魔物に襲われている。グリフィンを傷付けないようにしながら魔物を倒すのは、結構大変だった。
全て倒し終わり、俺たちはグリフィンに駆け寄る。目立った外傷と言えば、左腕の傷くらい。結構深いな・・・。
「お、お前たちは?」
「私を助けてくれたの。アルファズール武術学院三年Sクラスだって」
「嘘っ?! じゃ、じゃあ・・・」
「手伝ってくれるって」
「! あ、ありがとうございます!」
彼は俺たちに向かってお辞儀をした。ああ、動かさない方がいいのに・・・。
エディナが傷の具合を見て、「これくらいなら問題ないよ」と言いつつ回復の魔法を掛けた。一瞬で傷は癒えた。
「す、凄い・・・」
「もう痛いところはない?」
「大丈夫です。セドリックとヘーゼルは?」
ディオネは黙って首を横に振った。グリフィンは「そっか・・・」と悲しそうに俯く。
当然、グリフィンくんも一緒に行動する事になった。俺たちは先を急・・・ぎたいところだが。
「もうお昼ですね。私の異空間にサンドイッチがありますから、みなさん、食べましょう」
グリフィンは、どうやらそこそこ戦えそうだ。ただ、悪霊に苦戦をして、追い詰められたらしい。
「魔法が使えないから。俺、どうしようもなくて」
「そっか・・・」
大体、魔法が使えても蝶には苦戦するし。難しいところだよな。俺みたいに特殊な魔法でも使っていない限りは。
ただ、この魔法は相当体力使うからな・・・。もう疲れてしまった。リリィはそんな、俺の様子に気が付いた。
「御主人様、大丈夫?」
「一応な・・・。でも、さっきの魔法が相当響いてる。まだ先が長いなら絶望的な感じだ」
「だから言ったのですよ。上級魔法はやめときなさいって。大人しく泉を使っていればいいものを」
ルミアの言葉に苦笑い。確かに。でも、あそこは雨を使うべきだった。なぜなら・・・。
「きっと、泉じゃ倒せなかったさ」
「あら、そうですか。そう言えば、あの悪霊、結構強かったですね」
ちなみに、基本の魔法のうち、空間を除く十二の魔法は、初級、中級、上級に分かれている。全部で三十六ってことになるな。ちゃんと覚えているからな?
ええと、初級から中級、上級でいく。
火は、火、炎、噴火。
水は、水、泉、雨。
氷は、氷、雪、雹。
草は、草、葉、森。
土は、土、泥、粘土。
石は、石、岩、磁石
風は、風、疾風、暴風。
電気は、電気、雷、落雷。
光は、光、月光、日光。
治癒は、薬草、治癒、治療。
闇は、暗、夜、闇。
死は、キル、マーダー、デス。
これを合成して新しい魔法を作ったり、種族ごとの特別な魔法があったりと、これは本当に基本だけどな。
まあ、俺は基本の魔法が使えるだけでも十分だ。魔法は諦めていたしな。・・・疲れるが、仕方ない。
「・・・。一つだけ、教えてあげましょう。このダンジョン、終わりはもうすぐですよ」
「え? アンジェリカ先生、なんでそんな事が分かるんですか?」
「ふふ・・・。エレナさん。この辺りの魔物はメガロが増えてきた。ボスを守る為です」
「じゃあ・・・!」
「ええ、あとちょっとです、頑張りましょう!」
先生の言うとおりだった。俺たちは、すぐにボスの居る部屋を見つける事が出来た。
「さて、この先に居るのは、ボスです。良いですか? 私は基本的には手を出しません。皆さんで倒して下さい」
『はい』
でも、結局、セドリックとヘーゼルは見つけられなかった。ディオネとグリフィンは諦めたような顔をしている。もう見つからない、それこそ、この世にはいないと思っているんだろう。
俺たちはそれぞれ武器を構えて部屋に入った。
「?! これは・・・!」
其処に居たのは、大きなドラゴンだ。赤くて、大きな翼があるドラゴン。
「赤・・・。火。エディナちゃん、エレナちゃん」
「分かった」
「うん。奈桜ちゃん」
「了解です、エレナお嬢様」
エディナはそっと息を吐き、すぅっと大きく息を吸った。
「カルリーネ! 積乱雲!」
「鏖殺魔法其ノ弍」
「豪雨!」
「紺碧怒涛」
エディナが自分の精霊に呼び掛け、積乱雲のウォームアップマジックを使う。俺の使ったクラウドより、ずっと高等な魔法だ。
エディナと奈桜は、息を合わせ、同時に魔法を撃った。両方とも水魔法。火属性のドラゴンには効果的だ。
「血の池」
「鏖殺魔法其ノ肆 毒蔓纏鐃」
「鏖殺魔法其ノ漆 荒天神風」
「えっと・・・。雨!」
みんなの魔法に気をつけつつ、俺は走ってドラゴンに近づく。すぐ後ろには当然リリィ。
「リリィ、行くぞ!」
「はい! それっ!」
リリィの使った魔法は、俺の身体能力を最大まで引き出す魔法。床を蹴りあげ、宙へ。相当な高さを跳、いや、飛んでるな・・・。
そのまま、真っ二つに!
着地は鮮やかに。リリィの魔法のおかげでとん、と軽く着地出来た。そこで、リリィが魔法を解く。
「意外と、あっさり・・・?」
「いや、まだだ。何か来る」
その、エディナとグリフィンの会話に、俺ははっとして前を見る。
これは・・・。結構まずいな。現れたのは、イフリートだ。
火の悪霊、イフリート。これ、俺は干渉できないんだよな。触れないし。
「ユリエル、後ろに下がってて! さっきの魔法は体力使うんでしょ?」
「あ、ああ、悪い!」
「大丈夫、さっきまでの分、全て返しますね!」
・・・。強い。的確に狙って、全て命中。一撃一撃が強いのに、スピードがある。これ以上の攻撃が、果たして存在するのだろうか。そう思えるような攻撃だ。
でも、俺たちは学生。もっと強い人は沢山いる。・・・そう考えると、楽しみで仕方がない。
「エディナちゃん、最高の魔法を叩きこんで!」
「分かった! 避けけて! 雨、落雷、暴風、『台風』!」
最高の魔法というのにふさわしい魔法。全てを壊し尽くす魔法。エディナの最高傑作であった台風は、誰にも止められない。イフリートは消え去った。
「はぁ、はぁ・・・。ああ、もう魔力切れだよぉ」
「今の凄かったよ、エディナちゃん」
「エディナ、凄い! 私のホムンクルスの魔法よりずっと凄い!」
そう言っていると、上から大きな宝箱が降ってきた。シミオンがそれに触れた時、辺りは光に満ち溢れ・・・。
気づくと外に出ていた。
「?! グリフィンくん、ディオネちゃん?!」
「セドリック、ヘーゼル!」
どうやら、あの宝箱に触れた事で、ダンジョンで迷っていた二人も脱出できた様子。四人は嬉しそうに抱き合った。
で、俺たちは宝箱を開けて中を見る。中には煌びやかな武器や装飾品等が入っている。が、いくつか薬が入っていた。
「ねえ、ディオネちゃんたちの探している薬って、どれ?」
「え? えっと・・・。淡い水色だって言ってた」
「じゃあこれかな。はい」
『ありがとうございます!』
四人は、俺たちとホテルに行く事になった。あのホテルはアルファズール武術学院のもの。アンジェリカ先生の許可があれば入っても問題はないはずだ。っていうか、問題ない。いま、携帯で連絡を取った。
「じゃあ行きましょう。あ、ほら、迎えの車が来ましたよ」
「・・・。全員乗れますか?」
「もう一台手配しましょう」
アンジェリカ先生がそう言ってすぐに車を呼んでくれたので、俺たちは無事に車に乗る事が出来た。
そうやって俺たちがホテルに着くと、何故だかくらい、重い雰囲気。不思議に思って近づいてみる。
・・・ああ。なるほどな。怪我をした生徒がいるらしい。獣人の男の子だ。右肩に大きな傷がある。
アルファズール武術学院の教師ともなれば、普通に考えて治癒くらい簡単なはずだ。が。そう簡単にいかない事情がある。毒が含まれているからだ。
「解毒した後治癒をしなきゃいけないわけか」
「でも、こんな毒初めて見るよ。僕にも解毒は無理」
「私も無理かな」
「すみませんが、私も」
仕方ない。本当はやりたくないが、この方法を取るしかないようだ。俺は失敗作の、あの毒を取り出した。アンジェリカ先生が苦笑いをする。
「ユリエルさん、本当に使うつもりですか?」
「それしか方法ないですし」
「まあそうですけれど」
さて、この毒。調べてみると、なんと新種だったのだ。しかも、色が違っても同じ効果。
この毒は相当強い。少し触れただけで忽ち全身に回り、死に至る。
が、他の毒に触れると、その毒と中和される、という特性があったのだ。だから、解毒には効果的だと考えられる。どうせこのまま放っておいたら死んでしまう。試す価値はある。
「少し、良いですか?」
「あ・・・。は、はい」
「すみません」
俺はゴム手袋をつけ、薬を匙ですくって傷口に乗せる。どうだろうか・・・。
赤黒く変色していた皮膚は肌色に戻る。アンジェリカ先生がほっとしたように微笑みを作る。
「治癒。よかったです、効果があって」
「本当に。大丈夫か?」
「あ、はい・・・」
その、おそらく獣人の男の子は安心したように笑った。元気そうで良かった。
彼はすぐに他の友達に囲まれた。泣き出している子まで居る。同い年なのに、なんだか小さい子を見ているかのような気分だ。
「さて、戻りましょう。この子たちの事もありますし」
「ああ、そうだな」
「私たち、どうすればいいんでしょう?」
ディオネが俺たちの話に気がついて首を傾げた。
「ん、一応、送ってあげるよ。車を準備しておいてあげる。けど、時間がね。明日で良いかな」
「・・・。心配だけど、でも、良いです」
「じゃあ、今日は泊まって」
『はい』
俺たちは部屋に入り、宝箱の中身を分配していく。様々な薬を見て、エレナは顔を輝かせた。
「これって・・・! あ、これも、もしかして! わぁ、凄い!」
「楽しそうでなによりです・・・。これ、いりますか?」
「はい!」
そうやって、薬の類はエレナのものとなった。
他の装飾品なども分ける。いらないものは売ればお金になるだろう。
分け終わると、丁度夕食の時間だった。俺たちは部屋を出て移動を開始する。
「明日も頑張りましょう」
「うん! もちろんだよ」
「頑張ろうな」
「楽しみだね」
何だ、修学旅行、結構楽しいな。リリィを見ると、ニコッと笑った。ね、といった感じだろうか。
もう、このメンバーでいられるのも少しなんだな・・・。そう思うと、なんだかさびしい感じがした。
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