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赤い記憶~リーナが魔王を倒して彼の隣を手に入れるまで~

鏡田りりか

第72話  魔王城攻略4

 また階段、かと思いきや、今度は階段はなく、長い廊下が続いていた。まあ、階段は疲れるし足が痛くなるからこっちの方がいい。戦わない私が言うのもどうかと思うんだけど、階段ばっかり登ってると戦いに支障が出る。
 窓から外を見てみるけれど、何も見えなかった。そう、なにも。ただただ暗い、いや、黒いだけ。時間から考えて、こんなに暗いはずないもん、何か、おかしい。よく考えてみれば、この城って一晩で出来てるし、突っ込みどころは結構あるな。
 と、ふと思い出したかのようにベルさんが口を開く。


「……、そういえば、最初だけだったね、驚かしてくるの」
「あ、そうですね」
「ミレは怖くても良かったんだけどなぁ?」
「え! 怖いのは嫌よ。リーナもそうでしょ?」


 まあ、あんまりよくはないよね。怖いの好きじゃないし。暗いところは、まだ慣れないし。
 まだ外を眺めていた私は、何か光る物を見つけて足を止める。後ろを歩いていたアンジェラさんが止まり切れずにぶつかる。


「す、すみません、リーナ様! 大丈夫ですか?」
「う、うん、大丈夫……。ねえ、あれ光ってるの、何かな」
「え? 光ってるの……?」


 じっと眺めていて、驚いた。どんどん大きくなっている。もしくは、近づいてる……?
 慌てて窓から離れた為、助かった。唐突に、窓ガラスが割れた。さっきまでの位置だったら、絶対刺さってた。危なかった。そうして、何かが入ってくる。


「痛、ガラス刺さった。御譲様はどれだけ凝るのですか……」
「え? え?」
「ごめんなさい、戦いましょうか、お客さま」


 今回は部屋じゃないんだ? 廊下で戦うんだ? てか、なんで窓破ってはいって来たの? 何故!
 まあいい。取り敢えず戦おうか。考えるのは後で良い。レアたちが気を取られるからね。
 入ってきた女の子は、銀髪をボブにし、桃色のリボンが付いたカチューシャをしている。服はリボン同じ色のワンピース。ニーハイソックスに、黒いパンプス。腰には剣がある。剣士か。瞳はやっぱり赤い色。


 やっぱ狭いから、みんなで戦うと危ないかな。此処はミレとアンジェラさん、ベルさんが戦う事にした。後は、場合によって補佐。ラザールお兄様の剣は狭いところで振り回すには大きすぎるし、ユリアの魔法は狭い場所で使うと味方を巻き込みかねないし、私はさっき戦ったから休憩しろと言われた。別に、私は戦ってないけどね。エティは回復だから、戦う、という表現で合ってるのか分からないから一応外すけど、怪我をしたらすぐに治癒魔法を掛けてくれる。
 私達戦わない組はさっき通った扉のすぐ傍まで下がる。少しでも多く戦場を多く取る為。狭いところで戦うと危ない。


「いざ」


 戦いは、銀髪の女の子の、静かな言葉から始まった。アンジェラさんとミレが同時に駆けだす。銀髪の子は、一拍遅れて駆けだした。あれは、わざと。タイミングがずれたと気付いた二人は、こくっと頷いて二手に分かれる。
 銀髪の子は、走ったまま壁へ。そのまま、壁に足をついて方向を変えると、アンジェラさんとミレを一瞬ずつ見た。そっと口角を上げると、地面を蹴って跳び上がる。が。


「え……?」


 銀髪の子は、宙に浮いたまま、降りて来なかった。まさか、空中浮遊をするとは……。思ってもみなかったけど、良く考えてみれば、そうでもしないとこの窓から入ってくる事って出来ないよね。あれだけ階段を上ったんだ、ちょっとジャンプして届くような高さじゃないはず。
 走っているとき、人は急には止まれない。アンジェラさんとミレは慌てたように目を開くけれど、止まれないのは止まれない。


「「わあああっ!」」


 壁にぶつかった。


「い、痛い! ああもう、なんなの、飛ぶとか!」
「まさかこんな事になるとは」


 銀髪の子は口元を隠してそっぽを向く。笑ってるな、あれ。流石に、ルージュの人を馬鹿にされたら黙ってられない。ベルさんを見ると、ニコッと笑って「どうぞ」と言われた。あ、いいんだ。
 そっとレアに視線を送ると、パァッと顔を輝かせた。戦い好きだからね。凄く嬉しそう。ついでにユルティも。反応は想像通り。
 楽しそうに駆けだした。レアは剣、ユルティは爪を構え、嬉々として走る様子は、悪魔にしか見えない。こんな状況じゃなければ、二人の笑顔、凄く可愛いのに。
 ん、でも、飛んでる敵相手にどうするの?


「リア、撃ち落として!」
「うん」
「えええっ! ちょ、待って下さい!」
「そりゃ!」
「やめてえええっ!」


 まさか、本当にやるとは。リアは何の躊躇も無く魔法を打ち。銀髪の子は床に落下した。凄い音したけど、大丈夫かな。敵だけど、心配しざるを得ない様な音だった。
 けれど、心配している暇はなかった。半泣きの状況でも、レアの剣とユルティの爪をきちんと弾いたのだ。二人は弾かれると思っていなかったのか、驚いたように大きく下がった。銀髪の女の子が立つのを待つ。
 やっぱり頭を打ったからか、数回よろけたけれど、ちゃんと立ち上がると、キッと鋭い瞳でこちらを睨んでくる。


「むぅぅぅ、許しません!」


 レアとユルティは顔を見合わせると、後ろに下がる。ミレとアンジェラさんが走って来ていた。
 銀髪の子は移動しようとしたけれど、にこっと笑顔のベルさんに捕まった。いつの間にか、彼女の後ろに立っていたのだ。彼女の顔から血の気が引く。
 ベルさんはそっと、彼女の背中を押す。其処に居るのは、剣を構えた二人、ミレとアンジェラさん。


「い、いやあああっ!」


 二人は剣を鞘に仕舞うと、私達の近くまで歩いて来た。「行こう」、というので、頷いて廊下を歩く。
 彼女の亡骸の近くを通る時。白い肌が赤く染まってるのを見て、少しだけ胸が痛んだ。「ごめんね」。心の中で、謝ってみたけれど、そんな事をしても仕方ないよね。


 扉を開く。と、美味しそうな香りが漂った。ミリアムがニコッと笑う。


「よく此処まで居らっしゃいました。今日は此処までです、ごゆっくりお休み下さい」


 よく見てみれば、真ん中のテーブルに食事が準備されていて、その左右には沢山の扉がある。個室が準備されてるらしい。けど、この城の構造どうなってるの……。
 あと、一つ不思議な事。椅子の数がぴったりだ。十一脚。これ、おかしいと思わない? 私、使い魔の数、変わってるよ。リアの分は想定していたとして、じゃあ、ユルティは? 全部、見られてる、のか。
 取り敢えず椅子に座る。やっぱり毒物は検出されない。本当に何がしたいのやら……。自分と同じ条件で戦おうとしてる、のかな? 変に真面目だな。


「……、美味しい」


 ふと目線を動かしてみると、ユルティが嬉しそうにナイフとフォークを扱っていた。そういえば、ネージュの時は一緒に食事、なんて出来なかったし、こういうの、初めてだね。の割には馴れてるけど。
 よく考えてみれば、リアも一緒に食事するのは初めてかも。魔力使うから、普段は一緒に居ないし。こっちは使い慣れてない感じがして危なっかしいな。
 レアは相変わらず、普通の時は淑女だから、とても綺麗な動き。指の先まで気を抜いていないというか、そんな感じ。
 ミアは随分楽しそう。なんでって、多分大好きなお姉ちゃんが三人も居るし、私の隣に座っているからだろう。無邪気で子供っぽいのに、こういう動きは綺麗だ。実は結構長い間生きてるみたいだしね。
 気が付けば、使い魔たちはみんな私の方を見ていた。


(……、なに?)
「いや、食べないのかな、って」
(あ、ごめん)


 食事の手が止まっていました。
 慌てて再開する。使い魔以外のみんなを見てみる。ラザールお兄様とミレ、ユリアは貴族、アンジェラさんとエティはメイドだから、当然動きは洗礼されてる。ベルさんもみんなと一緒にいるからかな、綺麗。私は……、どうだろう?


「だから、ご主人さま。手が止まってる。普通に綺麗だから、大丈夫」
(あ、ごめん)






 部屋は全部で七つあった。一つずつ割り振って、部屋に入る。
 部屋には洗面所や、お風呂まで付いてたから、服を脱いで入る。意外に広い。やっぱり、どうなってるのか不思議で仕方ない。
 シャワーを浴びていると、急に扉が開いた。慌てて振り返ると、其処にはミアとレア。


「わあああっ! ちょ、なに!」
「いやぁ? ご主人さまと一緒に入りたいな、と思って」
「ね? 良いでしょう?」


 どうせ使い魔しかいないし、って鍵閉めなかったの。失敗した。
 二人はそのまま入ってくると、シャンプーを手にとって私の髪を洗い始める。ちょっと、なんなの……。
 レアがシャワーを手にとって私の髪を洗い流していく。あ、なんか気持ち良い。その間にミアが自分の髪を洗う。レアはそっと目を細めてミアの髪も流す。
 其処まではまあ良いけど。ボディーソープを取った二人が怖い。なんでそんなに笑ってるの……? ねえ、ちょっと、ま、待ってって!


「ちょ、ちょっとおおっ!」






 溜息を吐いて湯船に浸かる。すぐそばではミアとレアがお互いを洗い合っている。可愛い、けど。何も私を巻き込まなくてもいいのに。


「ご主人さま、どうしたの?」
(どうしたも何も……。洗ってくれなくてもよかったんだけど)
「触ってみたかったんだもん!」
(ミアの馬鹿っ! ああ、嘘だよ、本気で泣かないで)
「なんてねー、泣いてないよ」
(な、に……ッ!)


 嘘泣きだって? 私、本当に騙されちゃった。どれだけ演技が上手いんだ……。レアじゃないんだから。そう持ってレアを見ると、レアも泡を流していた手を止め、此方を見る。目が合うと、ちょっとだけ首を傾げて笑みを浮かべる。


(もう……。ほら、ミア、おいで)
「わぁい!」
(……、レアは待って)
「えええっ! なんでですかぁ!」
(ミアに変な事吹き込んだんじゃないでしょうねぇ?)
「まさか。ミアに私が誘われたんです」
(ん、じゃあいいよ)


 そんな嬉しそうな顔するんだもん。その顔を知ってるの。もう、断れるわけ、ないじゃん。だって、嬉しそうな顔を見たら、私も嬉しくなる。


「あったかいですね」
(うん。今日、痛かったでしょ? 大丈夫?)
「ええ。リーナ様の為なら、いくらでも頑張れます!」
(ふふ、ありがとう。ミアも、大変だったよね、ありがとう)
「ううん! 大好きなご主人さまの為だもん!」


 本当に、この子たちと一緒にいて幸せ。私、召喚魔術師サマナーになれて良かったな。
 私のまわり、いい人ばかり。みんなの幸せ、守らなきゃ。その為には。私が、しっかりしないと。
 本当の事、全部知ってるの、私だけだから。

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