小説を書こうにもネタがない!だが高校生探偵に仕事は舞い込む

Arakikei

【ネタになりますか?目覚めたら知らない天井と天才少女】

___...痛ぇ、脇腹が取り敢えず痛ぇ...
あの野郎、刺すだけじゃなく思いっ切り抉りやがったから
治すのにもかなりの時間がいるな。暫くは入院か......。


......ん?入院?俺、何時病院に着いたんだ?確か昨日はアイツに会って、
戦って、そんで......あ!そういえばあの時の女性は!?
アイツに腹掻っ捌かれて、木に横たわってた女性は!?どうなったんだ!?


あの時は痛みでそのまま意識を失くしたが、
もしかして誰かが俺のことを見つけて救急車を呼んでくれたのかもしれない。


......いや、それはどうなのだろう?もしかしたら俺はもう死んでいて
此処は冥土なのかもしれない。真っ暗だし、何も見えないし、何も感じない。
ホントに此処が冥土なら、納得できるし説明がつく。


そっか、俺は死んじまったのか......。


一人闇の中で悶々と考えている霧本に、上の方から声が聞こえた。




『___とさん__もとさん!きりもとさん!霧本さん!!』




......声?誰だ、茜里?いや違う...。


この声は、確か.....。




「霧本さん!大丈夫ですか!?」
「____知らない天井......。」
「え?」
「いや、何でもない。で、君は?」




目を開けた先にいたのは、心配そうに俺の顔を覗き込んでいた一人の少女だった。


いきなりの君は誰発言に少しムッとした表情になったが、
直ぐに笑顔になって答えた。




「も~、忘れちゃったんですかぁ?崎森ですよ。崎森雛です。横張高校の。」
「横張?崎森?......あ!あん時の事件の女の子か!」
「やっと思い出したんですかぁ?お久しぶりです!あの時はちゃんとした
お礼が出来なくてすみませんでした。」




礼儀正しく頭を下げてお礼をする少女を見ながら、少し記憶を探る。




「いいや、当然のことをしたまでさ。
(さて、昨日秋乃さん聞いた情報によると......。ん、昨日?)雛さん。」
「何ですか?」
「俺、どんくらい寝てたの?」
「えぇ~っと...3日くらいですねぇ。」
「3日か...随分寝てたな......。それともう一つ、君は何で此処に居るんだ?」




理由を聞かれた少女は少し胸を張ると、如何にもといった感じになり、




「私があなたを見つけて通報したからです!」




ムフンといった感じに手を腰に当てて言った。




「へぇ、君が...それはありがとう......ん?君が!?どうして!?」




あんな深夜に人が歩いているはずも無い。なら俺を見つけることなんて不可能だ。
それに......




「それに、あんな血まみれの所を常人が見て昏倒するなって言う方が難しい。
それをどうやって?それにあの時近くにいた女の人は!?」
「い、いっぺんに質問しないでください!分からなくなっちゃいますから!!」
「す、すまない......少し、混乱してるんだ。許してくれ......。」




俺は、少し思考が落ち着いてから彼女の話を聞くことにした。




「___すまなかった。もう大丈夫だ。話を聞かせてくれるか?」
「分かりました。では、私が霧本さんのことを見つけた経緯から。」




私が霧本さんを見つけたのは、私が入院していた病室の窓からでした。
その日はちょっとしたカウンセリングと念の為の検査入院の日だったんです。


あの事件から暫くいたけど、やっぱり病院にはなれなくて、
病室のベッドから月を眺めている時でした。


何の音もしない深夜、ふと窓の外から人の声が聞こえてきたんです。




「____タが____えて、何_____しているのかは知らんが、
__偵として、_____として、__ンタを止めることが、今の俺の仕事だ!」




途切れ途切れで何を言っているのかはよく分かりませんでしたが、
どこかで聞いたことのある声だったのが気になった私は、声が聞こえた
病院前の公園を見ていたんです。


暫くの間、ずっと公園を見ていたんですが、それからは何も聞こえることもなく
もうそろそろ寝ようかなと思い始めた時でした。


ドサッ


何かが倒れた音が聞こえて、急いで窓の外を見たら、貴方が倒れていたんです。




「その後直ぐにナースコールをして、看護師さんに状況を説明して、
緊急手術で4時間の手術を経て、霧本さんは今此処に居るんです。」
「そう、だったのか...ありがとう。」
「いいえこちらこそ。あの時霧本さんが助けに来てくれなかったら
今の私は此処に居ませんでしたから。」




あの事件は色々大変だったが、何とか新作のネタにはなったから良かったものの、
今回のはネタになるのか?難しすぎるだろ......。


探偵が殺されかける物語とか誰が読むって言うんだ...。


あ!そうだった!




「雛ちゃん!」
「は、はい!?」
「俺と一緒に倒れてた女の人は?生きてるか?」
「あ、はい。少し危なかったらしいですが、
何とか一命を取り留めて今は集中治療室にいます。」
「...そっか......よかった...。」




あの状態で放置していたら確実に死んでいたし、目の前が病院で、
それも公園が雛ちゃんの病室の窓の目の前にあったのが本当に幸運だった。
ありがとう神様。


......と、状況証拠による思考を展開したが、どうしたものか。
あのジャック・ザ・リッパー。名前でも聞いておくんだったな。
せめてどこに住んでたとか、何処出身だったとか、
日本にいつ入ってきたのかとか聞いておけば良かった......。


...この事件のことも色々ぼかせばネタになるか......。


最近は小説のネタに困ることも多くなったし、今回は初心にかえって
推理小説でも書いてみようかな。




その後、病室のドアをぶち壊す勢いで入ってきた茜里と、入ってくるなり
飛び蹴りを食らわせてきた秋乃さんとそれを必死に止めていた護さん。
差し入れにコーヒーを持ってきてくれた兼世さんと、
一部カオスなお見舞いが来ていたが、漸くゆっくりとした執筆時間を
得ることが出来た。これで次回作のネタは決まりだな。



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