小説を書こうにもネタがない!だが高校生探偵に仕事は舞い込む

Arakikei

【これはネタなのか?被害者と犯人像と過去の記憶】

__水瀬さんとの話し合いから数日後、俺は本庁の方へ出向いていた。


今回は警察の方から事件への協力を打診された。
本庁では前に見せてもらった資料より、さらに詳細な情報を知ることが出来た。


まず、今までの被害者の詳細な資料だ。


一人目『三井翔歌みついしょうか』 年齢20歳 昭南大学2年生


発見場所は源城市の中央公園付近の雑木林。
遺体の状態は、喉元を鋭利な刃物で掻き切られており、腹部は切開されていた。
近くに男性の死体もあり、事件との関連性を調べている。




二人目『舞木静もうぎしずか』 年齢19歳 アルバイト


発見場所は源城市の芥子公園の雑木林。
遺体の状態は、喉を鋭利な刃物で掻き切られており、
腹部は切開され子宮と膀胱が持ち去られていた。




三人目『田辺陽菜たなべひな』 年齢22歳 ウェブデザイナー


発見場所は源城市の道程公園の雑木林。
遺体の状態は、同じように喉を掻き切られており、腹部も切り開かれていた。
だが、この事件だけは、犯人の姿を捉えることが出来た貴重な案件だ。




四人目『栄田曜子さかえだようこ』 年齢21歳 OL


発見場所は宮野市の噺公園の雑木林。
遺体の状態は、同じように喉を掻き切られており、
腹部を切開され左の腎臓と子宮を持ち去れていた。




そして五人目『篠崎加奈子しのざきかなこ』 年齢25歳 舞台女優


発見場所は源城市の団子公園の雑木林。
遺体の状態は今までの事件の中で一番酷い状態で、皮膚や内臓を含めほぼ完全に
バラバラという最も残酷な殺され方をしている。




「___此処までが、我々警察が調べ上げた結果だ。」


そう、厳かな口調で告げる警官は『華村秋乃はなむらあきの』さん。階級は警部。
水瀬さんとは同期で、女性警官ながら様々な事件を解決した経歴を持っている。
本庁でも結構やり手な刑事さんだ。




「情報提供、ありがとうございます。...それで、此処なんですが...。」
「何だ?」
「はい。此処の、3人目の、田辺陽菜さん資料なんですけど、
犯人の姿を捉えることが出来たって...。」
「あぁ、近くにあった監視カメラに後姿がぼんやりと映っていたんだ。」
「その映像を見せていただくことは出来ますか?」
「...分かった。今すぐ準備しよう。」
「ありがとうございます!」




担当の刑事さんが見せてくれた映像には、深夜の公園が映っている。


映像には街灯が中央に映っており、そこの影に三人目の被害者である
田辺陽菜の遺体が映り込んでおり、その隣に誰かが立っている。




「...この人ですか?」
「あぁ、恐らくだが、この映っている青年が犯人だろうね。」
「.....俺とそんなに年も変わらないのに、随分大胆ですね...。」


街灯に照らされた彼の姿は、血にまみれた獣そのものだった。


彼が右手に持っている血に濡れたナイフには、見覚えがあった。


「.....このナイフは...まさか...!」
「何かあったのか?」
「...えぇ、少し......。」




ナイフが映っている所をアップにしてもらう。
犯人と思しき青年が持っているナイフの柄部分、そこにはロシア語で
ある言葉が刻んであった。


(прощальныйプラッシニァリー)


意味は、『別れ』。このロゴに、俺は見覚えがあった。
そう、このロゴは『柴木総理大臣暗殺事件』の時に使われていた
武器に刻まれていたのと同じロゴだった。


まさかと思って画像を拡大したんだが、本当にそうだったとはねぇ......。




「...刑事さん。この模様、知っていますか?」
「模様?どれだ?」
「...これですよ、これ。ナイフの柄の所にあるロシア語ですよ。」
「ロシア、語?これがロシア語なんだ...へぇ....?」
「...(おいおい、この刑事こんなことも分かってねぇのか?
日本で起こった最恐最悪の大事件だぞ?警察学校で習わねぇのかよ!)」




『柴木総理大臣暗殺事件』は、世界的なテログループ『прощальный』が
当時の総理大臣『柴木秀晴』の公衆演説の場で引き起こした日本でも
学校の現社や歴史の教科書に載るほどの大事件だ。


それの犯行グループのことぐらい教えとけよ警察学校。
てか、その首謀者を特定した本人の前でよくそんなこと言えたもんだ...。




「...刑事さん、他に確かな情報はありますか?」
「情報?......あ、そういえば前に君が解決した監禁事件の被害者の女の子が
病院の前にある公園で変な人物を見たって...。」
「それは本当ですかっ!?」
「あ、あぁ......カウンセリングで向かっていた同僚の証言だ。信用してもいい。」
「分かりました。今すぐ確認してきます!」
「ちょ、ちょっと!」
「病院へ連絡を取っておいてください!」
「ちょっと!...もう、せっかちな子なんだから.....。」


秋乃は、霧本が出ていった後、部屋の掛け時計を眺めてこういった。


「......彼女の病院は隣町にあるってのに、今からじゃ間に合わないわよ...。」




現在の時刻、22時32分......。


『霧本茂』と『四羽竜也』の会合まで......。


『あと数時間』

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