小説を書こうにもネタがない!だが高校生探偵に仕事は舞い込む

Arakikei

【ネタが出来そう?行方不明者と新たな事件】

___事件とは、警察がそれを認知して初めて事件として放映される。
噂から事件に発展する例は少なくない。
高校で流れている事件性のある噂はある程度認識しておいた方が良い。
いずれ起こりうる事件を前もって知っておける方法の一つである。


「___なんて言っているが、ただの自己解釈の一つなんだよなぁ....。」


一人ボヤキながらある場所へ向かう霧本は、携帯にメールが来てることに気付く。


「?茜里から?」


メールの内容は以下の通りだ。


『茂、言い忘れてたことがあったの。噂の行方不明者の名前は『崎森雛さきもりひな
クラスは1-4だったよ。後は自分で調べてね~。あ、今日泊まってくから。
PS:帰りプリン買ってきてね。』


....最後の一言は余計だったが、崎森雛か。確か何処かで聞いた気がする...。
部活かなんかだったかなぁ?ま、聞けば分かることだ。アイツの所に急ごう。


人の波のように流れる街道を横切り、人気が少ない路地裏に入る。
柄の悪い青年や少女がこちらを睨みつけるが気にせず奥へ進む。


路地裏を突っ切り、ちょっとした道へ出る。路地の抜け道の丁度
目の前に佇んでいる一軒家。
そこが俺に情報を提供してくれる情報屋『鷹田謙世たかだけんせい』の家だ。


少し古いインターホンを押す。中から男性の声が聞こえる。


『....合言葉は?』
「敵の足元を見て、己の足元をすくわれることなかれ...でいいか?」
『大丈夫だ。入るといい、茂君。』


ドアが開き、中から初老の男性が出てきた。


白髪交じりの艶のある黒髪、しわが目立ち始めた肌、深い海のように蒼く、
優しそうな雰囲気の中に歴戦の戦士を感じる強い瞳の男性だ。


男性はダンディズム溢れる声でこちらに話しかけてきた。


「ようこそ、こちらに来るのは久しぶりだね。どうだい、新しい学校は?」
「えぇ、面白い出来事が絶えませんよ。で、今回の用件なんですが。」
「分かっているよ。横張よこはり高校の行方不明者の件だね。」
「あぁ、ホントアンタの情報網はすごいな。」
「うちのサイトには色々転がってるから。」


彼はネット上で一番噂が集まるサイト『倶楽部・ルルイエ』の管理人なのだ。
彼のサイトには世界中の噂が集まる、その情報網は世界中に広がっているらしい。


彼は珈琲を淹れながら、俺に話を振ってくる。


「茂君、彼女の名前は知っているね?」
「崎森雛、横張高校の1年4組、しか知らないです。」
「だろうね。ほら、彼女の詳細な情報はこれを読んでね。」
「は、はぁ...。」


珈琲と一緒に渡された紙には次のようなことが記されていた。


氏名『崎森雛』所属高校『横張高校』学年1年4組 部活動『オーケストラ部』所属
担当ソロヴァイオリン
彼女はその幻想的な演奏で数々の賞を取っている。
『横張のセイレーン』という通り名を持っている。
友人関係は良好。いじめられていたというわけでもない。
だが、近頃の彼女は何かに怯えている様子だったらしい。


「....凄い経歴だな。で、行方不明になった場所と日時は?」
「5月14日、今から3日前の夕方6時くらいの中央公園付近らしいよ。」
「了解した。行ってくる。」
「うん、行ってらっしゃい。気を付けるんだよ。」
「分かってますよ。では...。」


鷹田さんの家から出て、中央公園の方へ向かう。
途中、公園への裏道が目に入る。


「...裏、道...?」


___裏道、本道でない裏通りの道。または、『正当ではないやり方』。


「....そうか、そういうことだったのか!」


ようやく合点がいった。何故彼女が消えたのか、その原因を。


「....大きすぎる期待と、それに耐えられない心。幼い精神と、応えたい意志。
....逃げたのか。皆からの期待から、望みから...。」


彼女の居場所は、この紙に書いてある。


『家族構成 母 妹 祖父母(現在は死去したが家は隣町にある。)』


彼女の居場所は、


『彼女はお爺ちゃんっこだったらしいよ。』


「...隣町だ。」


___事件は解決した。崎森雛は恐らく、隣町の祖父母の家にいる。
だが、この家には誰も住んでいない。
...何か嫌な予感がする。今日警棒を持ってきていたのは正解だったな。


「....とりあえずは隣町に行ってみないと分かんねぇな。....急ごう!」





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