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量産型ヤンデレが量産されました

スプマリ

掃除

 後ろから聞こえる吐息の音や抱かれるという行為が非常に心地よく思えてしまい、俺の中の大事な何かが終業しつつあることを感じながら終業式は終わりを告げる。


 終業式が終われば当然会場の掃除が俺達生徒の仕事になるわけだが、何故かその班分けで名前順、性別、誕生日順、席順という妥当な分け方を全て無視して俺、榛名、田中、文美が一つの班に纏められた。いや百歩譲って榛名と田中はいいとしても何故一年下の文美が当然のように一緒の班に居るんだよ。


「ふっふ~ん。愛の力が為せる技だよお兄ちゃん!」
「うるさい馬鹿!」


 得意げに胸を張りながらそう言う文美を張り倒したくなるが止めておこう。構えば構うだけこいつは喜ぶだけだ。


「雄太くん、私達と一緒なのがそんなに嫌なの?」


 俺の叫びを聞いた榛名が悲しげな表情をしてそう言ってくる。そう言われると弱い俺はしどろもどろになってしまう。


「いや、別にそういうわけじゃなくてだな」
「じゃあどういうことなの?」


 問い詰めてくる榛名の顔が怖い。あれ? さっきまでの悲しげな表情は?


「流石に不自然すぎるだろ? 絶対こんなのおかしいって」
「大丈夫だよ雄太くん。先生たちも周りのみんなも私たちのことを応援してくれてるだけだって!」


 「ねー!」と声を合わせて言う榛名と文美。そんなわけない。絶対そんなわけない。千歩譲って周りの生徒は応援しているにしても先生までそんなことをするわけがない。


 今三人と一緒の班になっているのは断じて愛の力の結果などではなく権力や暴力などの結果に違いない。俺にはわかる。


 こんな時の癒しは田中だ。そう思い俺は田中の方を見やるがあいつは凄まじくテキパキと掃除をしており、一人で五人分くらいは働いている。


 掃除なんてもっとダラダラやるもんだろ! お前去年とか掃除の時間は俺と雑談ばっかで掃除なんて全然してなかったじゃん!


 というかあれか、あいつが終業式に無茶苦茶やったことの代償が俺達3人の時間を作ることなのか。そこまでして俺の臭いを独占したかったのかあいつは……。


 俺の体臭はあいつにとってそんなに価値のあるものなのかと頭を悩ませていると文美が左から抱き付いてくる。腰のあたりに。


「はー、それにしてもお兄ちゃんとあんな長い時間離れるの辛かったー」


 長い時間ってあんた、たったの数時間じゃないですか。そうツッコミを入れようとする俺に、今度は右から榛名が抱き付いてくる。


「文美ちゃんだけずるいよー」
「心配しないでよお姉ちゃん。お兄ちゃんを独占はしないから」
「おー、文美ちゃんは良い子だねー。よしよし」


 榛名はそう言って文美の頭を撫でる。二人の間に俺を挟んだまま。


「ちょ、二人とも離れてよ! 他の奴らが見てるって!」
「平気だよお兄ちゃん。誰も気付いてなんかないって」


 「ほら」と言って文美が周りを見る。するとさっきまでこっちを見ていた奴らが一斉に顔を背ける。誰も気づいてないんじゃなくて誰もが気付いてるけど何も言えないだけじゃないか!


「ふむ、誰も気づいていないということはずっとこのままでも問題は無いということじゃないかね文美クン」
「おー! お姉ちゃんあったま良いー! さんせーい!」


 名案を閃いたとばかりにドヤ顔で榛名がそう言い、顔を輝かせてそれに賛成する文美。閃いたんじゃなくて計画通りの間違いじゃないのかね君たち。


「ちょっと待って! お願いだからそれはやめて! 俺の社会的立場がアウトになるから!」
「安心して、お兄ちゃん。私達がずっとお世話するからそんな心配いらないよ?」
「そうそう、雄太くん。私達がずっと一緒に居るから心配しないで?」


 俺の必死の願いは聞き入れられなかったどころか、何か色々と危険な発言をうっとりとした顔で言われてしまう。


 は、早く! 早く掃除を終わらせてくれ!


 結局二人の攻勢に俺が勝てる訳も無く、出来ることは時間が早く過ぎるのをただ祈ることだけであった。

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