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量産型ヤンデレが量産されました

スプマリ

登校

 じめじめとした季節はとうに過ぎ去り、それまでの鬱憤を晴らすかの如く照り付けてきやがる太陽にこちらの鬱憤が溜まるような季節が訪れやがった。世間では寒冷化だの温暖化だのと騒いだりしているが正直俺にとってはそんなことはどうでもいい、重要なことじゃない。


 去年までの穢れを知らぬピュアボーイな俺であれば「夏休みだ! プールだ! 祭りだ!」と騒ぎ立てて積もった雪を前にした犬のように駆けまわっていただろう。


 だが、人生とは斯くも険しい物なのかと実感させるような騒動がこの短期間に立てつづけに起こった俺は「宿題だ! 部屋にこもるぞ! 一人で!」と悲痛に叫びたい気持ちで一杯である。


「雄太くん、どうしたの? そんな暗い顔して」
「ああいや、夏休みの宿題どうしようかなって思ってさ」


 そんな風に俺がどんよりとしているのを敏感に察知していらっしゃるのは彼女である如月榛名。大事なことなので二度いうが榛名こそが俺の彼女である。俺の右手を握って歩く彼女の笑顔は見る人の闇を全て散らす元気一杯の太陽であるといっても過言ではないが、俺に限っては逆に若干の影を齎す。そんな彼ら・・に対して思ったことを口に出しても碌な結果にはならない、もしくは全く意味が無いということをここ二ヶ月で嫌と言う程思い知ったため、思っていることとは真逆の事を口に出す。


「だーいじょぶだって! 期末テストだって皆で勉強して乗り切ったじゃんか!」
「ははっ、それもそうだな」


 そしてそんな俺を励まして元気づけようとしていらっしゃるのは親友…………断じて親友である田中太郎。俺の左手を握って歩く彼の笑顔は見る人の心の傷を全て癒す慈愛の光に満ちた月といっても過言では無く、榛名の笑顔とまるで対をなしているようだ。ついでに言えば榛名の性別とも対になっているのが最大の欠点か。しかし「だがそれがいい」と抜かす輩もいるため日本の業は深いと思い、言葉とは裏腹に俺の表情の影は増す。


「もう、そんなに疲れてるんだったらお兄ちゃんはもっと私に頼ってくれればいいのに」
「今だって十分すぎるくらい助かってるさ。これ以上は頼りすぎになるよ」


 何故か俺の腰に抱き付きながらそう言ってくるのは我が愚昧の高瀬文美。少し前までは俺の事を蛇蝎の如く嫌っている様子だったが、本人曰く俺が一人でいそしんでいることに腹を立てていただけとのことで、現在はそれはもう色々な意味で俺の事を世話しようとしていらっしゃる。彼女の顔は見えないが、恐らく見る人の心を完全に虜にしてしまうような「メス」の顔をしているのだろう。さっきの二人と落差が酷過ぎるって? 文美はそういう奴なんだよ!


 傍から見れば超美少女を3人侍らせながら登校する糞野郎にしか見えないが、それに対して批判的な目を向けてくる同級生や注意する教師は誰一人としていない。


 同級生に至ってはむしろ同情的な視線を向けてきたり感慨深いものを見るものであったりする。そう言った視線を向ける彼らは数か月前の惨状を見ていた人達であり「一体どうやってあの酷い状況から脱したのか」と尋ねたがっているのはなんとなく伝わるが、榛名と田中と文美の3人が「今までいがみ合っていたのにどういうことだよ」と言いたくなるような見事な連携を発揮し、そういった輩を男女問わず全て排除している。教師が注意してこないのは……恐らくあの馬鹿が何か手を回したのだろう。


 あの忌まわしき薬物事件が起こった時よりも表面上はマシになっている。三人がいがみ合う姿を見ることが無くなったおかげで俺の胃壁君が仕事をする必要は一切なくなった。しかしそんな表面上の事よりももっと根深いところで事態が深刻化している気がしてならないので俺は朝からこんなシケた面を晒しているのであった。




「はぁ……夏休みが憂鬱すぎる……」

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