幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について

スプマリ

144話目 三秒クッキング

 周りに居るドラゴンの数を改めて数えてみるが、大体30匹前後といったところか。下手くそな挑発だったがそれなりに効果があったらしく、今のところ一匹も逃げる様子は無く、むしろ一丸となって襲い掛かろうとしている。

 まず三匹程が襲い掛かってきた。でかい図体の癖に一瞬にして距離を詰めるという恐ろしいまでの瞬発力だが、正面から馬鹿正直に爪を振ってくるあたり知能はあっても学習能力と言うものがないようだ、と思ったが視界の端にチラリとあるものが映ったことで考えを改める。コイツらの巨体で見えづらいが、奥の方のドラゴンがタメ・・をしているのが見えた。恐らく灼熱のブレスを吐いて焼き殺すつもりなのだろう。

 ドラゴンにとってブレスとは文字通りのブレスであり、その予備動作は一呼吸でしかない。もちろんその一呼吸が命取りの隙になるのだが、目の前のドラゴンが盾となり邪魔をするか、それとも陽動のつもりなのだろう。このままではブレスに仲間を巻き込む形になるが、ブレス程度ではドラゴンは死なないので俺だけを焼き殺せる。魔法も使わずにまともに喰らえば、極限まで鍛えているといっても流石にひとたまりもない。

 他のドラゴンは俺の後ろに回り込んで逃げ道を塞ごうとしており、数秒以内に完全に包囲されるだろう。されたところで問題はないが、ここは意表を突くことにする。

「フッ――!」

 地を割る勢いで踏み込み、目の前のドラゴンにカウンターの拳を叩き込む。自分たちが攻める側、という考えはそうそうに無くならないのか呆気ないほどにカウンターが決まると、その巨体は不自然なほどのくの字に折れ曲がり奥で構えていたドラゴンへと飛んでいく。

 ブレス役は慌てて伏せて躱そうが判断が鈍い。本当ならば躱さずに叩き落してでも俺にブレスをぶち込むべきだった。ヤツが伏せようと、その判断を下す前に俺は既に次の行動に移っていたのだから。

 殴りぬいた勢いを殺すことなく左手のドラゴンの後ろに回り込み、その尻尾を無造作に握りしめる。みしり、と嫌な音が聞こえた気がするが尻尾くらいなら粉砕骨折しても死ぬことはないだろうからノーカンノーカン。

 そして掴んだ尻尾をそのまま振り上げながら飛び上がる!

「おおおおおおおオオオオオオオ!!」
――――GAAAAAA!!

 俺の雄たけびとドラゴンの叫び声が合わさりまるで合体技でも出しているようだが実際はそんなことはない。そのまま槌を振り下ろすように、呆気に取られているヤツらを巻き込んで叩き潰す!

 ドゴォ、と鈍い音を立てて都合三体を地面に埋める事に成功した。まるで潰れたカエルのような状態なので死なない程度に回復魔法をかけておいてやる。さて、こちらが攻撃している間に相手も俺の包囲を済ませ、ついでにブレス役も再装填が済んだのか、視界を埋め尽くす勢いで炎を吐いてきた。そしてその炎すら見えなくなるくらいの密度で周囲のドラゴンも一斉に襲い掛かってきている。普通ならば死亡確定の場面、俺とてまともにやれば一発くらいは攻撃がかする可能性がある。しかし俺は使えるものは何でも使う主義でね、俺はまだ握ったままなんだぜ?

 先程槌として使ったドラゴンを、そのままジャイアントスイングの要領で振り回す。ブォン、と風を裂く音と共に、周りに居たドラゴンは憐れにも一匹残らず叩き飛ばされ戦闘不能に陥った。同質量の物体で凄まじい勢いで叩きつけられたのだから中身はぐちゃぐちゃになってそうだ。ちなみにジャイアントスイングしたドラゴンの中身はグチャグチャになっている。それでもなんとか生きているんだから回復魔法の力ってすげー! そしてそのままブレス役に向けて投げつける! 視界が塞がっているのはこちらだけでなくあちらも同じ。まさかブレスの中から同胞が飛んでくるとは思っていなかったようで、今度は避けることも出来ずに直撃してしまい車に轢かれたセミのような有様となる。

 これでもまだ半数程度しか倒せていないわけだが……、残りのドラゴンは動かずに、否、動けず・・・にいる。これほど無残に、それもほんの一瞬の間に殲滅されたショックで逃げることも、攻めることも出来ずに硬直してしまっている。それまでの勢いは嘘のように消え去っており、その眼にはハッキリとした恐怖が映り、精一杯の威嚇としてか細い唸り声をあげるばかりだ。


 ああ、これなら動きを封じられそうだ。



 激しい音は無かった。ただ、どすんと重い物が落ちたような音がしただけだった。しかし、有り得ないほどに増した重力によりドラゴンたちは地に伏せ指一本動かせずにいる。怯えて動けない姿から、地に伏して動けずにいる姿は簡単にイメージ出来たからこそ丁度良く魔法が発動できた。

「さて、それじゃあ話を聞いてもらおうか」

 聞いているかは知らないが、その場にいる全員に聞こえるように俺はそう宣言した。

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