幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について

スプマリ

132話目 テレビなら多分声がつくヤツ

 トボトボと現場に赴きいつも寝っ転がっている定位置に着くと、遠慮がちにこちらに視線を寄越す。クイと顎をしゃくってさっさとやるように促すと、既に諦めているガイシャは大人しくこちらの指示に従った。

 ヤツは何を思ったか頭を激しく振り続け、おもむろに周囲を見渡した。何やってるんだ、と思ったが、先日の騒動を思い出すと確かヤツは歯に物が挟まった不快感から同じように頭を振っていた。つまり、今の行動も歯に何か引っかかっているということ言いたいのだろう。

 きょろきょろと辺りを見回した後、前足の爪を己の口の中に突っ込み始めた。多分、あの時に使った特製の爪楊枝が見当たらなかったから爪でなんとかしようとしたのだろう。しかし案の定自分の爪ではどうしようもなかったのか、ちらちらとこちらを見つつも複製した剣に近寄った。

 もうこの時点で色々と察してしまった。二人も察したようで、シャルはまだ『うわぁ』と言いつつ引いている程度で済んでいるが、リーディアに至っては顔を真っ青にして『ああ、嘘だろう、そんなはずは……』とうわ言のように……、というよりうわ言を発している始末だ。

 そしてバカドラ助はこんな時だけ無駄に器用さを発揮して、前足の二本の爪で柄を挟んだかと思うと、やや躊躇いがちに口に突っ込んだ。だが俺には分かる。実際の犯行時はコイツ何の躊躇もなく口に突っ込んだはずだ。『丁度良い棒があるやんけ、突っ込んだろ!』とばかりに意気揚々と突っ込んだはずだ。

 リーディアは涙目になりながら呻き声をあげているが更に追い打ちが掛かる。使い終わった高級爪楊枝を、あろうことかバリボリと咀嚼したではないか。俺はどっかに投げ捨てたんだろうと予想していたが、現実はより非情であった。

 ごくん、といい音を鳴らした後満足げにゲップをしているが、多分これは演技ではなく素だ。シャルは頬を引きつらせ、リーディアはゲップと同時にショックのあまり倒れてしまった。白目剥いて泡吹いて気絶していらっしゃるぞ。

 ガイシャの協力的な、そして衝撃的な再現のおかげでリーディアの剣が何処に行ったのか、行ってしまったのかを嫌になるほど知ることが出来たわけだが、それと同時に彼女の剣は回収不可能になった事も分かってしまった。

「とりあえずお前、一週間朝飯抜きな」
「お昼御飯もなしだよ」

 適当な罰を思いつかなかったのでコイツにとって一番キツいだろう飯抜きにしたら、普段はドラ助の擁護に回るシャルですら便乗してきた。残念でもないし当然である。
 俺らからの宣告を受けたドラ助はおなじみの抗議の声もあげず、トボトボと犬小屋へと黙って歩いていくが、時折チラリとこっちを見てきた。コイツあんまり反省してねえな。

「二週間に延期な」
「ギュオアアアアアアア!?」

 残念でもないし当然である。

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