幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について

スプマリ

番外3

 ギィ、と音を立ててギルドの扉を開ける。先程訪れた時と違い施設の中は冒険者で溢れ、ガヤガヤと酷く喧騒に満ちていた。そのような人ごみの中で自分の番を待つと考えるだけで男は気が滅入り、並ぶのを避けて壁際にでも突っ立っていたい衝動に駆られるが、並ばなければ今日明日の宿代と飯代すら心もとなくなってしまうため手近な列の最後尾に加わった。


 運良く彼よりも前の人物がもめ事を起こさなかったため、ほんの三十分程で彼の番まで回り、討伐の証として集めたウォーバニーの前歯を詰め込んだ袋を懐から取り出して登録証と共に机の上に置いた。


「魔物を討伐してきた。精算してくれ」


 こうして利用することは初めてであったため彼は他の連中の真似をしてみたが、どうやら間違った対応ではなかったようだ。受付は慣れた動きで袋の中身を確認すると、向こう側に置いてある金庫から金を取り出してきた。


「報酬の銀貨十枚です。ご確認ください」


 極めて事務的な言葉が言い放たれる。後で報酬が少ないだのと言いがかりをつけられない為なのだろう。男は銀貨を手に取ると顔にぐいと近づけて確認し、一枚一枚大事に懐に仕舞った。決して大金ではないが、これだけあれば半月程は不自由なく生活することが出来る。もちろん、冒険者として遠出するための道具を買いだせばこの程度ではまるで足りないが、今のところそのような予定は彼には無い。


「銀貨十枚、確かに受け取った」


 それだけ言うと男は逃げるようにギルドから立ち去る。多少なりとも金銭を得た今、不要な揉め事を避けるためにも自分のような者があの場にいるのは不味いと考えたからだ。本当であれば受付から何処か良い宿屋でも聞き出そうかと考えていたが、後がつっかえている中でそれをしてしまえばそれこそ不興を買いかねない。幸いにもまだ外は暗くはなっておらず人通りも多い。故に男はどこかで客引きをやっているだろうと当たりをつけて、ふらりと街へ繰り出した。






 肉の焼ける音や匂いに釣られそうになりつつ男は宿を探した。丁度腹も減っているので何か腹に入れたいところだったが、立ち食いをするには自分の体は少々具合が悪い。気になった店の位置を頭に入れつつ通りを歩いていると、ようやく客引きの声が聞こえてきた。


「おや兄さん、宿をお探しかい? ウチは素泊まりで銅貨三枚、ご飯は食堂で銅貨一枚! どうだい? 泊まっていくかい?」


 男は値段を聞こうと思い客引きをしていた女に近づいたが、どうやら勝手に客だと判断したらしく、聞いてもない事を捲し立ててきた。とはいえ、男にとってそれは都合の悪い事ではなかった。女の言った値段は相場通りと言えるし、予算の上でも何の問題も無い。これで宿や飯の質が悪ければぼったくりと言えるが、それは泊まってみなければ分からないだろう。加えて、そろそろ本格的に陽が落ちる頃であり、ここを逃せば宿を見つけられない可能性もある。


「とりあえず一晩頼む。それと晩飯と朝飯も」
「あいよ! 一名様ご案内!」


 パン、と両手を叩いたかと思うと女は男を宿まで引っ張っていく。


――――まあ、問題があれば別の宿を探せばいいか。


 女の言動に一抹の不安を覚え、そのような事を考えつつも男はされるがままに女についていったのであった。

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