幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について

スプマリ

126話目 拗ねちゃま

「ししょお~、ドラ助が拗ねちゃってこっちを向いてくれないよ~」


 自分だけでは手に負えないと感じたのか、そんな情けない声でシャルが俺にヘルプを求める。
確かにドラ助は拗ねてしまってはいるが……。


「いやぁ、多分このまま構ってやってりゃいいんじゃね?」


 やや無責任とも思えるような台詞を吐いたが、根拠が無いわけでもない。そもそも本気で怒っているなら俺らのことなど完全に無視してどこかへ行ってしまっているはずであり、わざわざ分かりやすくアピールする必要など無い。俺の言葉が聞こえたのかドラ助が『キッ』とこちらを睨んできたが、それ自白してるようなもんだからな?


 それに対して俺はじっ、と見つめ返すとドラ助にツカツカと歩み寄った。俺の行動が予想外だったのか、こやつはビクリと体を強張らせて警戒態勢を取った。いやまあ、普段であれば鼻で笑うか口に出して馬鹿にして、後は知らんと家に引っ込んでいるから不審なのは分かるがね? 俺にも一応良心ってのはあるのよ?


「ほっといて悪かった。すまん、許してくれ」
「…………」


 嘘偽りなく心からの謝罪を行い、頭を下げたまま返事を待つ。


 さっき扉を見て気づいたんだが、何かが爪で引っ掻いたような真新しい傷があったわけですよ。ついでに庭側の壁にも似たような跡があったわけで、何らかの生き物が引っ掻いたであろうことは容易に想像がつく。勿論、この森で我が家に近づくような生き物はドラ助だけな訳で、そうなるとコイツが寂しさのあまり壁を引っ掻きながら鳴き声を上げて中に呼びかけたりしている姿が目に浮かぶのですよ。


『キュルルルルルー……』


 カリカリと扉を引っ掻きながらそんな鳴き声を上げ、背中を丸め、壁に縋りつき、いつ帰るか分からない家主を待つ。犬とトカゲの中間的生物のドラ助がそうしている姿は心を痛めるに余りある。果たして人間換算することに意味があるのかは分からないが、一万年以上の寿命を持つ中の、まだ千年も生きていないこいつにとって一人放置される寂しさが如何程の物であったか。


 誰も喋らないまま時間が過ぎる。実際には十数秒にも満たない時間だっただろうが、かなりの間待った様にも思え、やがて俺の顔がペロリと舐められた。顔を上げると『しょうがねえなあ』と控えめに『グルルルル』とドラ助が喉を鳴らしており、どうやら許してくれたらしい。それを二人も感じたのかほっと息を吐いて改めてドラ助に謝りご飯を取り出し、腹を鳴らしたドラ助がそれにパクつき始める。


 亜空間内の料理を食べつくす勢いで食べてるけど、こいつもしかして待ってる間狩りとかしてなかったのか? 飼い主が居なければ犬は餌が取れずに死んでしまうと聞いたことがあるが、こいつもかなり危ないんじゃないか? 一人そんな風に考え込んでいる間も猛烈な勢いで食事は進み、その勢いがやや衰えた辺りでシャルは箱を一つ取り出した。


「ドラ助にお土産があるの! これ!」


 小箱、と言うには大きすぎるそれを開けるとそこにはやや装飾過剰な、しかし決して下品ではなく、中央にあしらわれている宝石の輝きを引き立たせている、大きさからしてドラ助にしかつけられないアクセサリーが鎮座していた。そういったものにあまり興味が無い俺ですら思わず『ほう』と息を漏らしてしまう、見事としか言いようのない代物しろものである。…………何かやらかす前に汚れとか傷とかが付かないように魔法をかけておこう。


 リーディアが箱からそれを取り出してドラ助の首輪にそれをつけようとしたが、何故かドラ助は『ひょい』と首を持ち上げてそれを躱してしまう。『まさかまた拗ねさせてしまったか』と疑問符を浮かべる二人をよそに、そのままそっくりその首を俺に向けて下してきた。


「なんだぁお前、俺につけて欲しいってか?」
「グアアア」


 俺の言葉を肯定するように、クイと顎を持ち上げて催促してくる。


「良いではないか、リョウ殿」


 そう言ってニコニコと笑顔を浮かべたリーディアが俺の手にくだんのアクセサリーを渡してきた。うぬぬぬ、こういうことをするのは中々こっぱずかしいんだぞ……。

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