幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について
123話目 報告(2)
そんな反応を貰っても報告は続くよどこまでも。ゴブリンらを殲滅しながら巣穴へと向かい、巣穴から出てきたところをウチの子二人が千切っては投げ千切っては投げの無双状態。何匹同時にかかってこようと物ともせずに危なげなく処理していったと語ってみる。
最早ここまで来て全く目立たないということは出来ないので、敢えてありのままの真実を、さも大袈裟に話を盛っているように見せかけることで逆にこの場を切り抜けてしまおうという考えだ。そして目論見通りに受付嬢は『ああ、そういうことか』と納得したような顔をしてからはこちらの報告に口を挟むことをしなかった。
これは帰りの旅の最中にライザから聞いた話からの推測なのだが、貴族の中にも変わり者だったり、落ちぶれて冒険者とならざるを得ない者もいたり、はたまた剣や魔法の修行の為にと冒険者になる者がいるらしい。
そしてある意味で数多くの貴族と接した経験のある俺は『見栄っ張りだから自分らの戦果を大袈裟に報告しようとするんじゃね?』と考え、まだギルドでは俺たちは姫とその付き人だと思われてるのを利用することを咄嗟に思いついたのだ。身振り手振り説明し、たまにリーディアに話を振ってみれば『ふむ、確かこんな感じだったか?』と、彼女はノリノリで動きを再現してくれた。無論、危ないので武器は持っていないが。
そこまで演出した甲斐もあり、受付嬢が俺たちを見る目は正にバカを見る目そのもの。リーディアの性格が知られていれば、彼女は嘘、大袈裟な話はしない……、というよりも出来ないと分かるのだろうが、クーデターが起こってからそれ程日が経たない内に彼女が帝国から離れたおかげで彼女の人となりは一般には知られていないのだろう。
「――そしてゴブリンの討伐終了直後、突如襲い掛かってきたキラーウルフを見事仕留めたという次第です」
そこまで話し終えて一礼をした時、周りから『おおー』だの『それで、どう戦ったんだー!』とかいう野次が飛んできた。俺の微に入り細を穿つ語りと、それに合わせたリーディアの動きが周囲の冒険者らの注意を引いたようで、俺の語りを『騙り』だと分かった上で続きが聞きたいらしい。多分、吟遊詩人が語る英雄譚とかと勘違いしているんだろう。まあそうなるように仕向けたのだが。
周りにいる冒険者諸君は続きが気になっているようだが、残念ながらキラーウルフ戦の詳細を語ることはできない。俺は申し訳なさそうに頭をポリポリと掻きながら釈明を行った。
「いやあ、実は無我夢中で戦っていたせいで詳細を全然憶えていないんですよぉ、この話はここからが肝心だっていうのは分かっているんですがねぇ、本当に申し訳ありません」
嘘は言っていない。むしろ本当に憶えていない。というかここまで一つも嘘は言っていないし、それどころかややマイルドに話したくらいだ。シャルの魔法に言及してないし、キラーウルフが一匹だけだったとも言っていない。リーディアの動きも彼女が空気を読んだおかげで、一般の冒険者でも目で追える程度のものであった。周りがどよめく度に鼻高々になる彼女は本当にチョロいです。
俺のおどけた返しを聞いた冒険者らはガハハと笑い、『次来る時までに続き考えとけよー!』と誰かが言って解散したのであった。さて、肝心の受付嬢はというと……。
「ご報告ありがとうございました。詳細はライザ様と確認を行いますので本日はお帰りになられて結構ですよ」
満面の営業スマイルを顔に張り付けての『はよ帰れ』宣言である。下手に真面目に対応するからずるずると面倒事に付き合わされる羽目になるのだ。敢えて何の役にも立たない、少なくともそう聞こえる報告の仕方をすれば細かいことを聞かれずに済むのだ。
今彼女の胸中には『何故ライザはこんないい加減な報告をするヤツらを残したのか』という思いと、『早くこんな面倒なことはさっさと終わらせたい』という思いで一杯のはずだ。そして俺も面倒事はライザに押し付けたいので彼女の思惑に乗っかって帰ることにする。
しかし、彼女と俺の思いはある一点に置いて致命的なまでに違っていたのだ。
「あ、これが討伐したキラーウルフの諸々の素材ですんで」
ひゃあ!我慢出来ねえ!爆弾投下だ!
去り際に瓶詰の血や毛皮をドサドサと置いて、すたこらさっさと退散した。後ろから『え? え?』と困惑する声が聞こえてきたが気にしてはいけない。ギルドを出て少しした辺りで受付嬢の叫び声が聞こえたような気がするが立ち止まってはいけない。
「師匠、あんなことしてよかったの?」
シャルが横からそんなことを聞いてきた。面倒事を呼び込みかねない行為に疑問を覚えたのだろう。だが俺は特に問題は無いと考えていた。
「大丈夫大丈夫、だって俺、多分もうここに来ねえし。森に引き籠れば問題無いって」
面倒事を俺らに押し付けようとしたライザに仕返しがしたくて、逆に押し付けてやりたくてやった。ついカッとなってやった。反省はしていない。数少ない冒険者のトップがあんなレベルだというのなら、魔の森にいる俺らにちょっかいをかけることすら不可能だろう。後のことはほったらかして魔の森に戻れば問題無い問題無い。
「リョウ殿、流石にそれは……」
「し、師匠、それ酷い……」
それを説明したら無責任っぷりに引かれてしまった。いや、でもさ、俺らが倒したキラーウルフは千年前のよりも体がかなり小さかったし、それに比例して滅茶苦茶弱いし薬効とかもクソみたいな性能になるっぽいしさ、ただの新人が倒すにはおかしいってだけで、ライザもいるしほったらかしても特に問題は無いって思ったんだよ。いや、まあ、うん、流石に考え無し過ぎたわ、うん、反省。
「あ、あー、そろそろドラ助も待ちくたびれてるだろうしさ! 早く帰ろう! な!」
俺がそんな露骨な話題反らしをすると、シャルは『しょうがないなあ』と困り顔になり『何かあったらちゃんと守ってね』と言い、リーディアはしばし空を仰ぎ、難しい顔をしながら『んー』と唸った後に『まあ大丈夫か!』と何かに納得した様子であった。
最早ここまで来て全く目立たないということは出来ないので、敢えてありのままの真実を、さも大袈裟に話を盛っているように見せかけることで逆にこの場を切り抜けてしまおうという考えだ。そして目論見通りに受付嬢は『ああ、そういうことか』と納得したような顔をしてからはこちらの報告に口を挟むことをしなかった。
これは帰りの旅の最中にライザから聞いた話からの推測なのだが、貴族の中にも変わり者だったり、落ちぶれて冒険者とならざるを得ない者もいたり、はたまた剣や魔法の修行の為にと冒険者になる者がいるらしい。
そしてある意味で数多くの貴族と接した経験のある俺は『見栄っ張りだから自分らの戦果を大袈裟に報告しようとするんじゃね?』と考え、まだギルドでは俺たちは姫とその付き人だと思われてるのを利用することを咄嗟に思いついたのだ。身振り手振り説明し、たまにリーディアに話を振ってみれば『ふむ、確かこんな感じだったか?』と、彼女はノリノリで動きを再現してくれた。無論、危ないので武器は持っていないが。
そこまで演出した甲斐もあり、受付嬢が俺たちを見る目は正にバカを見る目そのもの。リーディアの性格が知られていれば、彼女は嘘、大袈裟な話はしない……、というよりも出来ないと分かるのだろうが、クーデターが起こってからそれ程日が経たない内に彼女が帝国から離れたおかげで彼女の人となりは一般には知られていないのだろう。
「――そしてゴブリンの討伐終了直後、突如襲い掛かってきたキラーウルフを見事仕留めたという次第です」
そこまで話し終えて一礼をした時、周りから『おおー』だの『それで、どう戦ったんだー!』とかいう野次が飛んできた。俺の微に入り細を穿つ語りと、それに合わせたリーディアの動きが周囲の冒険者らの注意を引いたようで、俺の語りを『騙り』だと分かった上で続きが聞きたいらしい。多分、吟遊詩人が語る英雄譚とかと勘違いしているんだろう。まあそうなるように仕向けたのだが。
周りにいる冒険者諸君は続きが気になっているようだが、残念ながらキラーウルフ戦の詳細を語ることはできない。俺は申し訳なさそうに頭をポリポリと掻きながら釈明を行った。
「いやあ、実は無我夢中で戦っていたせいで詳細を全然憶えていないんですよぉ、この話はここからが肝心だっていうのは分かっているんですがねぇ、本当に申し訳ありません」
嘘は言っていない。むしろ本当に憶えていない。というかここまで一つも嘘は言っていないし、それどころかややマイルドに話したくらいだ。シャルの魔法に言及してないし、キラーウルフが一匹だけだったとも言っていない。リーディアの動きも彼女が空気を読んだおかげで、一般の冒険者でも目で追える程度のものであった。周りがどよめく度に鼻高々になる彼女は本当にチョロいです。
俺のおどけた返しを聞いた冒険者らはガハハと笑い、『次来る時までに続き考えとけよー!』と誰かが言って解散したのであった。さて、肝心の受付嬢はというと……。
「ご報告ありがとうございました。詳細はライザ様と確認を行いますので本日はお帰りになられて結構ですよ」
満面の営業スマイルを顔に張り付けての『はよ帰れ』宣言である。下手に真面目に対応するからずるずると面倒事に付き合わされる羽目になるのだ。敢えて何の役にも立たない、少なくともそう聞こえる報告の仕方をすれば細かいことを聞かれずに済むのだ。
今彼女の胸中には『何故ライザはこんないい加減な報告をするヤツらを残したのか』という思いと、『早くこんな面倒なことはさっさと終わらせたい』という思いで一杯のはずだ。そして俺も面倒事はライザに押し付けたいので彼女の思惑に乗っかって帰ることにする。
しかし、彼女と俺の思いはある一点に置いて致命的なまでに違っていたのだ。
「あ、これが討伐したキラーウルフの諸々の素材ですんで」
ひゃあ!我慢出来ねえ!爆弾投下だ!
去り際に瓶詰の血や毛皮をドサドサと置いて、すたこらさっさと退散した。後ろから『え? え?』と困惑する声が聞こえてきたが気にしてはいけない。ギルドを出て少しした辺りで受付嬢の叫び声が聞こえたような気がするが立ち止まってはいけない。
「師匠、あんなことしてよかったの?」
シャルが横からそんなことを聞いてきた。面倒事を呼び込みかねない行為に疑問を覚えたのだろう。だが俺は特に問題は無いと考えていた。
「大丈夫大丈夫、だって俺、多分もうここに来ねえし。森に引き籠れば問題無いって」
面倒事を俺らに押し付けようとしたライザに仕返しがしたくて、逆に押し付けてやりたくてやった。ついカッとなってやった。反省はしていない。数少ない冒険者のトップがあんなレベルだというのなら、魔の森にいる俺らにちょっかいをかけることすら不可能だろう。後のことはほったらかして魔の森に戻れば問題無い問題無い。
「リョウ殿、流石にそれは……」
「し、師匠、それ酷い……」
それを説明したら無責任っぷりに引かれてしまった。いや、でもさ、俺らが倒したキラーウルフは千年前のよりも体がかなり小さかったし、それに比例して滅茶苦茶弱いし薬効とかもクソみたいな性能になるっぽいしさ、ただの新人が倒すにはおかしいってだけで、ライザもいるしほったらかしても特に問題は無いって思ったんだよ。いや、まあ、うん、流石に考え無し過ぎたわ、うん、反省。
「あ、あー、そろそろドラ助も待ちくたびれてるだろうしさ! 早く帰ろう! な!」
俺がそんな露骨な話題反らしをすると、シャルは『しょうがないなあ』と困り顔になり『何かあったらちゃんと守ってね』と言い、リーディアはしばし空を仰ぎ、難しい顔をしながら『んー』と唸った後に『まあ大丈夫か!』と何かに納得した様子であった。
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