幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について

スプマリ

118話目 帰還

「帰ったらお仕置きだからね、師匠」
「はい、わかりました」


 ライザに散々に叱られた後だったおかげか、シャルからのお叱りの言葉はその場はそれ一言だけで済んだ。しかし一先ずそれで一件落着という雰囲気になったため、先ほどから手持無沙汰にしていたリーディアが『それでは村に報告に行こう!』と言い出し、ライザもそれに賛同してしまったため迅速に動かざるを得なくなった。


「リョウ! 何やってんだい!」
「ちょ、ちょっと待って、足が……!」


 『こんな場所にいられるか! 俺は自分の村に戻るぞ!』とばかりに急いで出発しようとするライザとは対照的に、足の痺れが全く抜けていない俺はヨロヨロと生まれたての仔鹿のように立ち上がるので精いっぱいである。その原因を作ったのはライザなので厳しく責め立てられるようなことはなかったが、痺れが抜けるまでフラフラと頼りない足取りで歩く俺に対して何度となく批難がましい視線が送られることとなった。


 本当は魔法で痺れを取りたかったんだよ……! でも隣でまだ怒ってるシャルが監視しているせいで魔法が使えなかったんだよ……! 一度だけ彼女の目を盗んで痺れを抜こうとしたんだけど、素早く察知されて足を叩かれたんだよ……!


 魔法を打ち消されるとばかり思っていたので、叩かれた瞬間『あひぃ!』なんて声をあげてしまった。我ながら気色悪い声だったので、前方を歩いていたリーディアとライザから何かばっちぃ物でも見る目で見られました。ちくせう。


 それと、ゴブリンの死体をいくつか持ち帰り、キラーウルフの死体は魔法で収納することにした。キラーウルフの死体の山が一瞬にして消えるという有り得ない光景を目にしたライザは大層驚いていたし、収納魔法を使えるという余計な情報を与えてしまったと思ってはいるが、ゴブリン程度ならともかくキラーウルフの死体の山をそのまま放置するのは何かよからぬことが起こりかねないので仕方のない処置である。


 ん? それを使ったならいっそ転移もすれば良かったじゃないかって? いやあ、流石にそれを教えるわけにはいかないし、何よりシャルが許してくれるとは思えなかったし……。


 そんな感じで酷い目に遭いはしたが、化け物と遭遇したりするなどといったアクシデントは発生せず、何事も怒らないまま森を抜けて村の近くまで戻ることができた。恐らくだが、今回潰したゴブリンの集団とキラーウルフの群れが粗方の化け物を始末していたのだろう。


 日が沈む前に森から抜け出して村の近くまで戻ることが出来た。後は村長に報告をするだけなのだが……、一つ問題があった。正確に言えば二つなのだが、一番の問題は村長にどこまで話すかという問題だ。百歩譲ってゴブリンの大群が潜んでいた事までは話したとしても、まさかキラーウルフの大群までも近くに縄張りを築こうとしていた事を話すわけにはいくまい。


「まあ村長には巣の事までは話さないでいいだろ。ギルドには巣とキラーウルフの……、一匹のはぐれが出たって報告はするがな」


 自分一人で決めるには面倒な話だったので三人に相談した結果、ライザによってそう締められる。巣の情報を完全に隠すのは流石に良心が咎めたのでギルドに報告することに異議はない。そして巣が出来たとなればギルドはその原因を調査することになり、その原因はすでに取り除かれているため完全に無駄な作業をすることになる。更に下手をすれば何も知らない調査員がキラーウルフと遭遇する恐れもあるため、それならば誤魔化しの利く範囲で素直に話した方がマシという結論になったのである。


 村長を騙すようで悪いが……、そこは一級冒険者が判断したからと責任を転嫁させてもらおうそうしよう。


 こうして一つ目の問題は片付いたがもう一つの問題、どうやってゴブリンを退治したことを信じさせるかという問題が残ってしまった。ライザに聞いてみたところ、普通は襲撃してきたゴブリンを村人たちの前で撃退してみせ、その翌日にでも残党を狩ってその死体を見せることで信用させるらしい。


 …………死体をいくつか持ち狩りはしたが、この場合はゴブリンの死体の山を見せに行くべきなのだろうか。

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