幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について

スプマリ

108話目 森へ行こうランララン

「それで、あんな大口を叩いてどうするつもりなんだ? まさかあたしに頼ろうってわけじゃないだろうね」


 村長宅を出てしばらく歩くと、胡乱げな目をしたライザがそう俺に尋ねた。彼女とて俺が無策だとは思っていないようだが、肝心のその内容までは思い至らないようである。しかしそのことを責めるのは酷というものだ。


 この村にたどり着くまでの道中で彼女に教わった事の中に狙った獲物の仕留め方があるのだが、今回で言えばゴブリンを迎撃し、その後逃げたヤツを追跡もしくは足跡等の痕跡の発見、そして最後にねぐらの破壊という一連の流れとその注意点等がそれにあたる。


 なんというか、俺達の場合は力がある分全力で力押しをしてしまう為そういった正攻法のやり方に疎いのである。例えばどこかに潜入するのであれば自身を透明にしたり、認識の阻害を行ってもいいし、なんなら遠見の魔法なんてのをでっち上げて家に居ながら覗き見を出来るようにして潜入する必要を無くしても構わない。


 そういった俺達、主に俺とシャルのやり方をリーディアはともかくライザが想像できるはずもなく、彼女から教わった段取りでゴブリンの殲滅を行おうとすれば間違ってもちょちょいと達成できる訳が無い。独自の魔法による補助を行わないとすれば、俺達の驚異の身体能力や補給いらずであることを考慮しても良くて半日、場合によっては日をまたぐ可能性すらある。今は既に日が傾きかけているため、今から森に入ってゴブリンの殲滅を真面目にやろうとしたら、今夜襲撃があったら間に合わない可能性がある。


 ここまで言えば俺が何をするのか分かるだろう。いつも通り力押しをするのである。


「あー、その、なんだ、近くにどんな生き物がいるのかが俺には大体分かるんだよ」


 殊更に凄い魔法や剣術を披露するのではないため、シャルも出来る事を伏せればそれ程騒がれないのではないかと思い正直に答える事にする。しかしいきなりこんな事を言い出しても多分ライザは信じな……、案の定思いっきり顔を顰めやがった。その後、何かを振り切るように頭を左右に振ると俺の肩にぽんと手を置き優しく語りかけてきた。


「リョウ、悪い事は言わないから今からでも村長に謝りに行け。人はな、そんな特別な力を持っちゃいないんだ」
「そんなんじゃねーよバーカ!」


 厨二病とか妄想癖とかそんな類の思い込みだと思われたらしい。『分かった分かった。でもな、今回はあたしが教えた方法でやった方が良い』ってうるせーよ! 肩に置かれた手を振り払い予定に変更は無い事を伝えるが、ライザは助け船を求めるようにシャルとリーディアの方を向くが、当然ながら二人が俺を止めるようなことはしない。当てが外れたライザは最後の抵抗とばかりに『時間がかかりすぎるようなら引っ張ってでも連れ帰るからな』と条件をつけた。


 あんまりここでうだうだやってるとそれこそ本当に間に合わなくなるのでその条件を飲むことにする。まあそんな条件は無意味に等しいので問題は無い。俺達は早速とばかりに森へと向かうのであった。






 そして森に入って凡そ十分後、目の前には数体のゴブリンの死体が積み重なっていた。森に入ってから迷うことなくズンズンと進む俺を呼び止める声を何度か無視しつつ進み続けると、何体かのゴブリンがうろついているのを視界に捉えた。そうなればそいつらが真っ二つの死体に転職することは当然の帰結であり、その後も同じような事を追加で三度程繰り返す頃には俺を呼び止める声は聞こえなくなった。


「まさか本当に気配が分かるなんてな……」


 最初の一回まではまぐれだと思って信じていなかったが、それが四回ともなると流石に信じざるを得ないようで、俺の後をついてくるライザがぽつりと零す。そして彼女がこちらに向ける視線の質が若干変化し、その事にやや優越感を覚えもするが、別に彼女を見返す為に俺の手札を晒すことを決めたのではない。


 ゴブリンに困っている村人を一刻も早く助けたいという思いが全く無いとは言わないが、それも主な理由ではない。俺の特殊性の一端をライザに知られるリスクを飲んででも早期解決を望んだのは、何だか嫌な予感がするからだ。


 いやいや、馬鹿にしないでくれ。確かに俺の予感が百発百中であるなんて事は言わないが、大抵の場合は何か悪い事が起きるんだよ。深い眠りに就いていてもふと何かを感じて目を覚まし、その直後に死ぬような目に遭うことなんてしょっちゅうだった。無論その時とは比べ物にならない程強くなったという自負はあるが、こうして首筋にチリチリと嫌な感じを覚えたり鳥肌が止まらないならば、ある程度は警戒すべきだ。


 もしかしたら次の瞬間には体がはじけ飛ぶかもしれない、そう警戒しながらも体は森の中を素早く移動してゴブリンを狩り続ける。シャルとリーディアは問題無くゴブリンを刈れている事を当然と思っているのか特にこれといった表情を浮かべておらず、ライザは予測とは裏腹にゴブリンの殲滅が順調なことに気を良くして、今は俺の仕事ぶりを楽しそうに観察しているくらいだ。しかし予感の原因と思われる何かは一向に現れないため俺の顔は対照的にどんどんと険しくなっていく。


 予感は強まる一方で、それでも尚それが何なのかはわからないまま気配が一番多く集まる場所、ゴブリンの塒へとたどり着いたのであった。

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