幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について

スプマリ

88話目 フランベルジュとか見たら絶対テンション上がるよね

 来た道を少し戻り、先程眺めていた工房が立ち並ぶ場所の中にその店はあった。この店に限った事ではないがどの店が何という名前の店なのか非常に分かり辛いため、下手をすれば目的の店が見つからないということもあるのではなかろうか。


 というのもドワーフの職人というのはどうにも自分の仕事以外には然程興味が無いらしく、どの店の看板も非常に雑なのだ。ただの板に店名を殴り書きして壁に立てかけていれば上等な方で、それが倒れたままになっていたり、そもそもその程度の看板すら無い店も珍しくなく、ちゃんとした看板を用意している店は全くのゼロという有様だ。


 看板が無い店が『ガンダスの武器屋』なのかどうか分からなかったため店の主人に尋ねてみたら『ああ?! ウチはガンダスの店じゃねえぞ! 冷やかしなら出ていけ!』と怒鳴られたので諦めて店の場所を知識魔法で調べたのだが、『そこまで怒るならちゃんと看板作れよ』と愚痴らずにはいられなかった。


 ともあれ例によって看板の無い『ガンダスの武器屋』を無事発見することが出来たため俺とシャルは店の中に入る。さて、さっきの店の対応からして入店時に愛想の良い挨拶がされる事など微塵も期待していなかったわけだが、店員らしき人物が一人も見当たらないというのはどういうことなのか。


 周りがうるさいので分かり辛いが、店の奥から鍛冶仕事の音と時々怒鳴り声が聞こえてくるので恐らくはそこで作業でもしているのだろう。しかし店先に誰も居ないとは不用心すぎやしないだろうか。仮に盗まれたとしても監視カメラやブザー等存在するはずもないこの世界で犯人を特定するのは非常に難しいはずだ。


 とはいえ俺達に盗む気は少しも無いので大人しく武器を眺めることにする。武器屋を名乗るだけあって店には大小様々な剣の他に矢やメイス等様々な武器が置いてあった。こういう武器というのはやはり男心をくすぐる魔力でも持っているのだろうか、実用的かどうか、性能的にはどうなのかという考えは頭からすっかり抜け落ちてしまい、シャルが居ることも忘れて夢中で武器を眺めてしまった。


 そして店の中を一週ぐるりと見て回ってからようやくシャルの事を思い出し、『あっ!』と小さく叫んでから振り返ると彼女は相変わらずニコニコと笑ってこちらを見ていた。すぐさま放っていた事を謝るが、笑ったまま『はしゃいでる師匠を見てて楽しかったから大丈夫です』と返されてしまう。彼女は嫌味でも何でもなくそう言っているため猶更申し訳ないです。


 恥ずかしさを誤魔化すために話題を変えようと思ったが、そろそろ二十分程は経つのではなかろうか? 不用心というレベルではないし、一度我に返ってしまったためこれ以上武器を見て待つというのも難しい。


 元々ドワーフの武器がどれくらいのレベルなのかというのを知りたくて来ただけなので、このまま帰ってしまっても特に問題は無い。だが装飾品と違って武器や防具は実際に使ってみなければその良し悪しが分からない俺ではこの店の商品の良し悪し等分からなかったので、そのまま帰るのも少しだけ癪である。


 こういう時こそ鑑定魔法等があれば便利なのだが、その代りの知識魔法ではその武器の良し悪しを端的に知ることは出来ない。持ちやすさ、硬度、切れ味等をゲームみたいに具体的に数値化することは出来ない以上、調べたければ買う必要がある。


「あれ? 兄ちゃん達お客さん?」


 ひとまず店の奥に声をかけるためにカウンターに近づこうとしたその時、カウンターの陰からさっきの店の女性、アイラにそっくりな人がそう言いながら現れた。

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