幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について

スプマリ

70話目 某、城攻めは初めてじゃ

 交渉を行ってから数日後、魔の森を離れ王都を一望できる丘の上にシャルと共に立っていた。結論から言えば俺は帝国側の提案に乗って動くことにしたのだ。というのも情報収集の結果元々俺が居ない前提で王国を攻めるプランが立てられていることがわかり、提案に乗った方が色々と要求できる分得だと考えたのだ。


 また、調べた結果クーデターは本当に実行されていて、ボロスが本当に皇帝であることもわかり、俺の協力も特に必要ないことも合わせると、新政府のトップが俺の顔を見るためだけに超危険な場所に来たというわけで、破天荒というべきか命知らずというべきか。まあそんな人物でなくてはクーデターなど成功しなかったのだろうが。


「協力する代わりにエルフやドワーフの扱いの改善をしてくれ」


 そしてそうして調べた結果俺が要求したのは差別の撤廃だ。金や物品で欲しい物は無いので要求する意味が無く、受け入れられる可能性が高くて尚且つシャルに良い影響がありそうなのとしてこれを要求したのだ。


 帝国では、というよりも現政府では実力主義的な考えが主流なようで、彼らの使う武具もドワーフ製の質の高いものだ。それも奴隷として無理矢理に作らせたものではなく、対価を払って対等に取引をして得たものであった。


 このことからエルフが高い魔法適性を持つことと、彼ら向けの魔法の訓練方法を教えてやれば悪い扱いをされることがないはずと俺は踏んだのだ。このように差別が撤廃されやすい条件が揃っていたこともあり、この要求はすんなりと受け入れられた。また、それを目当てにエルフ狩りを行うようであれば何らかの報復をすると釘を刺したのでその心配も多分無いはずだ。


 ああ、余談だが報酬とは別にとある要求を行ったことも言っておこう。


 現在帝国の首都近くの街に王国軍の主力部隊が続々と集まっており、普通であれば各個撃破するためだったり敵を消耗させるために、そうでなくとも街を取り戻すために絶え間なく攻撃を行うべきだが、帝国は逆に完全に放置して部隊が完全に整うのを待っているのだ。


 そうして王国の主力が集まった時にあることを実行して殲滅をする作戦なのだが、これが俺にとって問題だったのだ。実はこの作戦の要こそあのキラーエイプであり、なんと帝国は長年の研究の結果群れの進行方向くらいは制御できるようになったのだ。その群れの大きさもかつて俺が殺しまくったあの群れと同程度の規模まで展開が可能であるので、街一つ、軍一つくらいは余裕で蹂躙することが可能なのだ。


 さて、ここまで言えばわかると思うが、ここ最近のキラーエイプの著しい知能低下、ひいては森が騒がしかったりシャルが殺されかけたりというのは間接的には帝国の仕業であることが分かり、一応被害は無かったとはいえ中々頭に来たのだ。


「そういうわけだから、頃合いを見計らってで構わないから研究結果の破棄と相応の誠意を見せてもらおうか。しなかった場合は魔の森をお前らのいる方向に向かって拡大させ続けてやる」


 この情報を得た時はそれこそカッとなって研究に関わった人物を葬ろうとしたが、別に殺したいほど憎いわけでも無く、殺す必要も無いので何とか踏みとどまりこれで妥協したのだ。『帝国の首都を潰す』と言っても良かったのだが、恐らく俺がそんなことしないのはバレるだろうから、実行できそうで尚且つ嫌がらせとして十分な内容を突きつけたのだ。


 ボロスの後ろにいた騎士は顔を青くしていたが、ボロス自身はその表情を崩すことなく『わかった。帝国の誠意を見せるしかあるまい』と言うだけにとどまった。そんなわけで帝国側の誠意とやらが一体どんなものなのか楽しみにしつつ王都攻めに参加しているのである。


「リョウ殿、軍の展開が終了致しました」


 俺がなんとなく王都を眺めていると後ろから声がかかる。彼は俺がここまで連れてきた軍を率いている将軍であり、彼らが王都の制圧を行う予定である。実は俺が要求されたのは彼らをここまで内密に連れてくることだけであり、王都攻めに加わる必要は無いのだ。


 どうも帝国側は俺の情報を調べる内に『少なくとも森の中の空間は自由に操れるんじゃねーの』と予想していたらしく、魔の森を安全に、迅速に軍を移動させることを協力として要請してきたのだ。そんな面倒なことをせずとも直接王都まで転移させることも可能なのだが、彼らには彼らの予定があるだろうからそれに従って移動させることにした。


「危ないから近づかないようにしててね」
「わかりました」


 本来ならばここで俺はお役御免であるのだが、王都にいる余剰戦力を釣り出す囮役を行うことにしたのだ。そいつらだけを今この瞬間に魔法で殺せるが、帝国側に対する示威行動も兼ねているためそれはしない。


「それじゃあ、派手に暴れてくれよ!」


 剣と魔法で戦えはするが、それじゃあ分かりやすい示威行動にはならないし釣り出すのに時間もかかる。そういうわけで俺がイメージするのはありがちな鉄の巨人、科学の結晶、空想の産物、巨大ロボ!


 俺の掛け声と共にどこからともなく高さ二十メートル程のロボットが出現し、そいつが接地した瞬間その巨体に見合ったズシリと重い音が辺りに響く。俺の後ろにいる将軍や軍の人にも軽く説明はしていたのだが、百聞は一見に如かずということか、驚きの声をあげる者が大勢居た。


 始めはゆっくりと王都に向かわせていたのだが、王都にいる兵士たちがそれに気づいたのか外壁の上からバリスタの矢や火の魔法が激しく飛んでくる。街中の様子を伺ってみるとどうやら民間人達は避難している最中のようであり、あと少しでそれも終わるだろう。


 ロボが壁に近づくにつれて攻撃は更に激しくなり、矢や魔法や岩やらが雨あられの如く降り注いでいる。しかしロボに一切傷は付いておらず、ダメージは全く無い。そうこうしている内にようやく民間人の避難が終わったようであり、それを確認した俺はそれまでと比較にならない速度でロボを外壁へ突撃させた。

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