幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について
64話目 来客
「師匠、どうしたの?」
毎日のように、ではなく文字通り毎日一日中我が家に入り浸るドラ助の相手をしているシャルが、俺の雰囲気が剣呑なものに変わったことに気付き問いかける。尚、本来こういったものに敏感なはずのドラ助がシャルの投げたフリスビーに夢中になっていて全く気付いていないのはいつものことなので驚くに値しない。
「どうやら客が来たようだ」
「客、ですか?」
客とはいっても、招かれざる客だけどな。
前に客が来てから大体百年くらい経ち、そろそろ誰か来たりするんじゃないかなーとか思っていたので、そいつらがここに来ること自体は別に意外でも何でもないのだが、何故このタイミングなのかが気になる。
深い意味は無いのかもしれないが、王国で良いように使われたシャルがここに戻ってきた直後にここに来るのは何かあるように思えてならない。全く無関係であるならば構わない。いつも通りのやり取りをしていつも通り丁重に自国に戻ってもらうだけだ。だがもしも王国、もしくは帝国やらがシャルを引き渡すように要求をしに来たならば……。その時は覚悟を決めて全面戦争するしかあるまい。シャル一人が傷つくか、見知らぬ万人と俺が苦しむか、どちらを選ぶかは考えるまでも無い。
さて、なんかこう結界的な魔法でごにょごにょして、そいつらがただの冒険者ではなく俺に用のある身分が高い奴らとわかった訳だが、相手方の様子がどうもおかしい。今までであればこういった輩は俺を威圧するためか、それとも捕えるためか軍を引き連れてここに来ることがほとんどであった。あらかじめ軍を森の前に待機させておき、交渉が決裂したら、はたまた決裂する前から彼らを使い俺を捕まえるつもりでいたのだろう。
だが今回来たこいつらはどう見ても軍らしきものを待機させておらず、かといって軍をそのまま引き連れてここに向かっているわけでもなく、たったの十数人で行動しているのだ。まさかとは思うが俺やシャルの暗殺や不意打ちでも狙っているのだろうか? 仮に彼らが森に潜んでその機会を伺うようになっても別に俺らに問題は無いが、非常に不愉快である。
暇つぶしする必要も無く、出来ればシャルは面会謝絶にしたいので今回の来客はスルーすることも選択肢に入るが……、主導権を握るためにもいつも通りこちらに呼び寄せることにしよう。
「シャル、念のために部屋で隠れてて」
何がどうなるかわからないので、出来れば彼女は安全圏にいて欲しいのだが……。
「師匠の傍にいるのが一番安全だと思う」
俺のそんな過保護な思いをお見通しなシャルは逆に俺の傍にいようとする。いやまあ確かにそうだろうけどさ、こう、気分的な問題でちょっと離れていた方が安全な気がするじゃん。
「駄目?」
「わかった、離れるなよ?」
上目遣いで、目を潤ませて、寄りかかりながら、そう問われて断れない奴おりゅ? おりゅ。シャルは『うん!』と元気よく返事をすると俺の左腕にガッチリと抱き着いてきた。離れるなとは言ったけどこれはちょっと近すぎやしませんかね。
「それじゃあドラ助、部屋で大人しくしててね!」
「グアア!」
そして俺に抱き着いたままシャルはドラ助を巣へと追いやる。『こうも毎日入り浸るんだったらもう専用の犬小屋ならぬトカゲ小屋でも作った方がいいんじゃね?』と考えた俺は新しい空き地と小屋を家の近くに作ってしまったのだ。
小屋に向かってのっしのっしと歩いていく威厳もへったくれも無い背中を見送り、シャルと共に玄関の前に立った俺は我が家と客人のいる場所を魔法で繋げるのであった。
毎日のように、ではなく文字通り毎日一日中我が家に入り浸るドラ助の相手をしているシャルが、俺の雰囲気が剣呑なものに変わったことに気付き問いかける。尚、本来こういったものに敏感なはずのドラ助がシャルの投げたフリスビーに夢中になっていて全く気付いていないのはいつものことなので驚くに値しない。
「どうやら客が来たようだ」
「客、ですか?」
客とはいっても、招かれざる客だけどな。
前に客が来てから大体百年くらい経ち、そろそろ誰か来たりするんじゃないかなーとか思っていたので、そいつらがここに来ること自体は別に意外でも何でもないのだが、何故このタイミングなのかが気になる。
深い意味は無いのかもしれないが、王国で良いように使われたシャルがここに戻ってきた直後にここに来るのは何かあるように思えてならない。全く無関係であるならば構わない。いつも通りのやり取りをしていつも通り丁重に自国に戻ってもらうだけだ。だがもしも王国、もしくは帝国やらがシャルを引き渡すように要求をしに来たならば……。その時は覚悟を決めて全面戦争するしかあるまい。シャル一人が傷つくか、見知らぬ万人と俺が苦しむか、どちらを選ぶかは考えるまでも無い。
さて、なんかこう結界的な魔法でごにょごにょして、そいつらがただの冒険者ではなく俺に用のある身分が高い奴らとわかった訳だが、相手方の様子がどうもおかしい。今までであればこういった輩は俺を威圧するためか、それとも捕えるためか軍を引き連れてここに来ることがほとんどであった。あらかじめ軍を森の前に待機させておき、交渉が決裂したら、はたまた決裂する前から彼らを使い俺を捕まえるつもりでいたのだろう。
だが今回来たこいつらはどう見ても軍らしきものを待機させておらず、かといって軍をそのまま引き連れてここに向かっているわけでもなく、たったの十数人で行動しているのだ。まさかとは思うが俺やシャルの暗殺や不意打ちでも狙っているのだろうか? 仮に彼らが森に潜んでその機会を伺うようになっても別に俺らに問題は無いが、非常に不愉快である。
暇つぶしする必要も無く、出来ればシャルは面会謝絶にしたいので今回の来客はスルーすることも選択肢に入るが……、主導権を握るためにもいつも通りこちらに呼び寄せることにしよう。
「シャル、念のために部屋で隠れてて」
何がどうなるかわからないので、出来れば彼女は安全圏にいて欲しいのだが……。
「師匠の傍にいるのが一番安全だと思う」
俺のそんな過保護な思いをお見通しなシャルは逆に俺の傍にいようとする。いやまあ確かにそうだろうけどさ、こう、気分的な問題でちょっと離れていた方が安全な気がするじゃん。
「駄目?」
「わかった、離れるなよ?」
上目遣いで、目を潤ませて、寄りかかりながら、そう問われて断れない奴おりゅ? おりゅ。シャルは『うん!』と元気よく返事をすると俺の左腕にガッチリと抱き着いてきた。離れるなとは言ったけどこれはちょっと近すぎやしませんかね。
「それじゃあドラ助、部屋で大人しくしててね!」
「グアア!」
そして俺に抱き着いたままシャルはドラ助を巣へと追いやる。『こうも毎日入り浸るんだったらもう専用の犬小屋ならぬトカゲ小屋でも作った方がいいんじゃね?』と考えた俺は新しい空き地と小屋を家の近くに作ってしまったのだ。
小屋に向かってのっしのっしと歩いていく威厳もへったくれも無い背中を見送り、シャルと共に玄関の前に立った俺は我が家と客人のいる場所を魔法で繋げるのであった。
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