幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について
63話目 殴りに行こうか
「よし、滅ぼそう。うん、汚物は消毒するに限る」
シャルの説明を聞いた俺の第一声はそれであった。いや、なんというかね、君らの所業さ、千年前よりも悪化していないかい? 見た目も豚のようであるらしいし、千年前の豚共の系譜だったりするんじゃなかろうか。シャルがどうしてあんな場所に倒れていたのか、まあ最後の辺りは本人も意識が朦朧としていて詳しいことは聞けなかったが、彼女がどんな扱いを受け、彼女の両親がどんな最期を迎えたのかを聞いた俺はおもむろに席を立つ。
「ま、待って! 師匠!」
「大丈夫だよシャル。王国のやつらは一人残さず消し去るから」
一気に殺ると後悔させてやることすら出来ないので調整は難しいが、それでもなんとか後悔させつつ殺ることは出来るはずだ。
「そういうことじゃなくて、師匠が今までそうしなかった理由があるはずだよね?」
「うぐ……」
中々痛い所を突いてくるじゃないの。特に千年前に俺が王国に狙われた際に何故直接滅ぼさなかったと言えば、俺みたいな統治能力の無い人間が支配者層を殺すことで余計な死者が出るのを嫌ったからだ。殺すだけ殺して統治しないのであれば確実に混乱が起きて死者が出ることになり、それ故に滅ぼすことを躊躇したのだ。まあ俺が滅ぼさなくても周辺国家から滅ぼされたようだがそれはそれ。俺自身が関わったわけではないので知った話ではない。
当然今の王都を物理的に消滅させれば溜飲は下がるが、確実に混乱が生じて俺に心労がかかるだろう。だが、俺自身の心の弱さのせいでシャルをここまで傷つけてしまったのだ。またしてもそれを理由にして行動を起こさない訳にはいかない。
「それに、お父さんもお母さんもそうして欲しいとは思ってないと思うから……」
先程の言葉だけでは俺は止まらないと感じたのか、シャルは更に言葉を続けた。うぐぐ……!
「でも、シャルはそれでいいのか? 俺がそんなことされたら何回殺しても足りないくらいなんだが……」
そう問いかけるが、シャルは顔を少しだけ下げると小さく首を横に振る。
「もう、いいの。師匠と一緒にいられれば、それだけでいいの」
諦めと、満足が混じったような不思議な声音でそう答える。その言葉に圧された俺は何も答えることが出来ず、どうすべきなのか改めて自問してしまう。先程までは勢いのままに殺りに行こうとしていたが、一度勢いを殺されてしまうといつもの俺へと逆戻りしてしまった。
そうして俺が何も言えずにいると聞きなれた羽音が聞こえてくる。シャルはそれにいち早く反応すると庭に続く扉を開くと羽音の主へと駆け寄った。
「ドラ助ー! 久しぶりー!」
「グアアアアアア!」
シャルが呼びかけたことによりドラ助はシャルに気付き、地面に着くなりその四本の足をダバダバと動かしてシャルに駆け寄る。こうしてみるとやはり本当にただのトカゲであり、何故俺は昨日までこんな奴に感謝の念を抱いていたのかと疑念を覚えてしまう。
やがて一人と一匹が衝突し、事情を知らなければあわや大惨事かと思うかもしれないがそうはならない。ドラゴンと比べてあまりに小さすぎるはずの少女がドラゴンの前足を持ってぐるぐると振り回すというあまりにシュールな光景が代わりに広がり、なんだかんだでいつもの空気に戻ってしまった。
機会を失ってしまった俺が王国への報復を口にすることが出来ず、どうにもモヤモヤとしたものを抱えつつも数日が経過した時、転機が、正に転機が訪れたのだ。
シャルの説明を聞いた俺の第一声はそれであった。いや、なんというかね、君らの所業さ、千年前よりも悪化していないかい? 見た目も豚のようであるらしいし、千年前の豚共の系譜だったりするんじゃなかろうか。シャルがどうしてあんな場所に倒れていたのか、まあ最後の辺りは本人も意識が朦朧としていて詳しいことは聞けなかったが、彼女がどんな扱いを受け、彼女の両親がどんな最期を迎えたのかを聞いた俺はおもむろに席を立つ。
「ま、待って! 師匠!」
「大丈夫だよシャル。王国のやつらは一人残さず消し去るから」
一気に殺ると後悔させてやることすら出来ないので調整は難しいが、それでもなんとか後悔させつつ殺ることは出来るはずだ。
「そういうことじゃなくて、師匠が今までそうしなかった理由があるはずだよね?」
「うぐ……」
中々痛い所を突いてくるじゃないの。特に千年前に俺が王国に狙われた際に何故直接滅ぼさなかったと言えば、俺みたいな統治能力の無い人間が支配者層を殺すことで余計な死者が出るのを嫌ったからだ。殺すだけ殺して統治しないのであれば確実に混乱が起きて死者が出ることになり、それ故に滅ぼすことを躊躇したのだ。まあ俺が滅ぼさなくても周辺国家から滅ぼされたようだがそれはそれ。俺自身が関わったわけではないので知った話ではない。
当然今の王都を物理的に消滅させれば溜飲は下がるが、確実に混乱が生じて俺に心労がかかるだろう。だが、俺自身の心の弱さのせいでシャルをここまで傷つけてしまったのだ。またしてもそれを理由にして行動を起こさない訳にはいかない。
「それに、お父さんもお母さんもそうして欲しいとは思ってないと思うから……」
先程の言葉だけでは俺は止まらないと感じたのか、シャルは更に言葉を続けた。うぐぐ……!
「でも、シャルはそれでいいのか? 俺がそんなことされたら何回殺しても足りないくらいなんだが……」
そう問いかけるが、シャルは顔を少しだけ下げると小さく首を横に振る。
「もう、いいの。師匠と一緒にいられれば、それだけでいいの」
諦めと、満足が混じったような不思議な声音でそう答える。その言葉に圧された俺は何も答えることが出来ず、どうすべきなのか改めて自問してしまう。先程までは勢いのままに殺りに行こうとしていたが、一度勢いを殺されてしまうといつもの俺へと逆戻りしてしまった。
そうして俺が何も言えずにいると聞きなれた羽音が聞こえてくる。シャルはそれにいち早く反応すると庭に続く扉を開くと羽音の主へと駆け寄った。
「ドラ助ー! 久しぶりー!」
「グアアアアアア!」
シャルが呼びかけたことによりドラ助はシャルに気付き、地面に着くなりその四本の足をダバダバと動かしてシャルに駆け寄る。こうしてみるとやはり本当にただのトカゲであり、何故俺は昨日までこんな奴に感謝の念を抱いていたのかと疑念を覚えてしまう。
やがて一人と一匹が衝突し、事情を知らなければあわや大惨事かと思うかもしれないがそうはならない。ドラゴンと比べてあまりに小さすぎるはずの少女がドラゴンの前足を持ってぐるぐると振り回すというあまりにシュールな光景が代わりに広がり、なんだかんだでいつもの空気に戻ってしまった。
機会を失ってしまった俺が王国への報復を口にすることが出来ず、どうにもモヤモヤとしたものを抱えつつも数日が経過した時、転機が、正に転機が訪れたのだ。
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