幼女と遊ぼうとしたら異世界に飛ばされた件について
5話目 奴隷からの解放
「魔法使い様、ありがとうございます」
俺の言葉を聞いて彼女は深々と頭を下げた。彼女としてはこれほどすんなりと保護してもらえるのは意外だったかもしれない。しかし俺には魔法があるため嘘を見抜くことくらい容易くできる。
俺に取り入るために森に手下を放ち、嘘の境遇を言わせて俺の同情を誘うのは基本的にお人好しな俺には有効な手段である。
しかしこの森に引きこもってからは他人を疑ってかかるようにしているので幸いなことに一度も引っかかったことはない。そういう奴に対しては『交渉したければお前が来い』という手紙と共に、上司の下へ転移魔法を用いて速達でお届けしてきた。
閑話休題。
目の前で頭を下げている彼女はそういった汚い人間ではないため保護することを決定したのである。
「それじゃあ、魔法使いが君を奴隷じゃなくしてあげよう」
「へ?」
劇に出演する役者のようにやや大げさな身振りと共にそう宣言する。俺のいきなりの言葉に困惑する彼女に構わず俺は彼女の背後に回る。そして俺は彼女の背中を見るために彼女の衣服をめくる。
「ひっ!」
「じっとしてて」
「は、はい……」
誰かに背中を見られること、触られることがトラウマとなっているのであろう、顔を青白くしながらがたがたと震えている。あまり長引かせると可哀想なので手早く済ませることにしよう。
彼女の背中には大きな印が残っている。それも一つだけではなく何個もあった。恐らく成長によって薄れたことでもう一度焼きごてをしたのもあるだろうが、心を折って服従させるためにしたのもあるのだろう。
背中は自身では見えないが、その痕を意識する度に彼女は奴隷となってしまったことを強く刷り込まれたのだろう。
チッ、と小さく舌打ちをする。俺はやっぱりこの世界は嫌いだ。少なくともこういった人権を無視した扱いを平気でする奴らが蔓延っている内は。
場所を確認した俺は敢えてそれに触りながら魔法を使う。治療をしているのだと彼女に意識させるために、俺が触った場所に違和感を覚えさせながら痕を消していく。
痕を触られるということに強い恐怖を感じているだろうが、今しばらく我慢して欲しい。今日この日、今この時彼女は奴隷から解放されたのだと強く意識してもらうために、唐突にではなく、彼女にわかるように治していく。
「終わったよ」
やがて治療は終わり、俺は彼女の背中から手を放すと共に二つの鏡を作り出した。
「見てごらん」
「……?」
俺の言葉にシャルは閉じていた目を開く。
「ああっ!」
当然であるが彼女の背中にはもう奴隷を示す痕など残っておらず、鏡には彼女の綺麗な肌しか映っていない。それが信じられないのか彼女は自分の背中をぺたぺたと触る。
痕が消えたということが飲み込めたのか、彼女はボロボロと泣き出した。
「痕が! 痕が無いの!」
「うん」
「凄く熱かったの! 痛かったの!」
「うん」
「もう消えないんだ、って! お前は一生奴隷なんだ、って!」
「うん」
そこまで言うと彼女はわあ、と声を上げた。俺は彼女を抱きしめて頭を撫でて泣き止むのを待つ。今、彼女は奴隷という身分より心から解放されたのだ。
しばらくの間泣き続けたためかシャルも落ち着いたようで、彼女のお腹が可愛らしく『くぅ』と鳴いた。顔を赤くする彼女の頭を一撫でして『それじゃ、ご飯にしようか』と告げる。
作ってから時間が経ってしまったためお粥が冷めてしまったが、魔法があるため問題はない。出来立て同様にまで温めなおす。
「あの、これは?」
「お粥、っていう料理だよ」
この世界に米は存在しないためお粥を知っているのは俺一人である。
「熱いから注意して食べるんだよ」
「うん!」
危うく『熱いから火傷しないように』と言いそうになった。多分『火傷』はNGワードだろうから気をつけなくては。
シャルはふー、ふー、と息を吹きかけてスプーンを口へと運ぶ。そしてそれを飲み込むと目を大きく見開き二口目を口に運んだ。他人に食わせたことがないため口に合うか不安だったが、この様子だと杞憂だったとわかる。
「美味しいです!」
「うん、良かった」
それから何度も『美味しい、美味しい』と言いながら、ポロポロと涙を零しながらお粥を食べる。まともな飯を食べさせてもらえなかったんだろうなあ。
食事を終えたため出来れば風呂に入れてやりたかったが、シャルの心身の疲れを考慮して早めに休ませることにした。
シャルを寝室へと連れていき俺のベッドへと寝かせるが、彼女はそれに異議を唱えた。
「あの、魔法使い様、私は床で寝ても平気です」
「駄目だ。子供はちゃんとベッドで寝なさい」
「でも……」
「シャルちゃんはもう奴隷じゃないんだ」
『奴隷ではない』という言葉を聞いて彼女は『あっ』という顔をすると涙ぐむ。
「風邪を引かないようにちゃんとベッドで寝るんだよ?」
「はい……」
「それじゃあ、俺はちょっと用事があるから先に寝るんだよ?」
「わかりました……」
「それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
やはり相当に疲れていたのであろう、しばらくすると彼女は完全に眠ってしまった。恐らく、少しばかり音が聞こえてきた程度では起きたりしないだろう。
それじゃあとってもとっても怖い魔法使いは用事を済ませるとしましょうか。
俺の言葉を聞いて彼女は深々と頭を下げた。彼女としてはこれほどすんなりと保護してもらえるのは意外だったかもしれない。しかし俺には魔法があるため嘘を見抜くことくらい容易くできる。
俺に取り入るために森に手下を放ち、嘘の境遇を言わせて俺の同情を誘うのは基本的にお人好しな俺には有効な手段である。
しかしこの森に引きこもってからは他人を疑ってかかるようにしているので幸いなことに一度も引っかかったことはない。そういう奴に対しては『交渉したければお前が来い』という手紙と共に、上司の下へ転移魔法を用いて速達でお届けしてきた。
閑話休題。
目の前で頭を下げている彼女はそういった汚い人間ではないため保護することを決定したのである。
「それじゃあ、魔法使いが君を奴隷じゃなくしてあげよう」
「へ?」
劇に出演する役者のようにやや大げさな身振りと共にそう宣言する。俺のいきなりの言葉に困惑する彼女に構わず俺は彼女の背後に回る。そして俺は彼女の背中を見るために彼女の衣服をめくる。
「ひっ!」
「じっとしてて」
「は、はい……」
誰かに背中を見られること、触られることがトラウマとなっているのであろう、顔を青白くしながらがたがたと震えている。あまり長引かせると可哀想なので手早く済ませることにしよう。
彼女の背中には大きな印が残っている。それも一つだけではなく何個もあった。恐らく成長によって薄れたことでもう一度焼きごてをしたのもあるだろうが、心を折って服従させるためにしたのもあるのだろう。
背中は自身では見えないが、その痕を意識する度に彼女は奴隷となってしまったことを強く刷り込まれたのだろう。
チッ、と小さく舌打ちをする。俺はやっぱりこの世界は嫌いだ。少なくともこういった人権を無視した扱いを平気でする奴らが蔓延っている内は。
場所を確認した俺は敢えてそれに触りながら魔法を使う。治療をしているのだと彼女に意識させるために、俺が触った場所に違和感を覚えさせながら痕を消していく。
痕を触られるということに強い恐怖を感じているだろうが、今しばらく我慢して欲しい。今日この日、今この時彼女は奴隷から解放されたのだと強く意識してもらうために、唐突にではなく、彼女にわかるように治していく。
「終わったよ」
やがて治療は終わり、俺は彼女の背中から手を放すと共に二つの鏡を作り出した。
「見てごらん」
「……?」
俺の言葉にシャルは閉じていた目を開く。
「ああっ!」
当然であるが彼女の背中にはもう奴隷を示す痕など残っておらず、鏡には彼女の綺麗な肌しか映っていない。それが信じられないのか彼女は自分の背中をぺたぺたと触る。
痕が消えたということが飲み込めたのか、彼女はボロボロと泣き出した。
「痕が! 痕が無いの!」
「うん」
「凄く熱かったの! 痛かったの!」
「うん」
「もう消えないんだ、って! お前は一生奴隷なんだ、って!」
「うん」
そこまで言うと彼女はわあ、と声を上げた。俺は彼女を抱きしめて頭を撫でて泣き止むのを待つ。今、彼女は奴隷という身分より心から解放されたのだ。
しばらくの間泣き続けたためかシャルも落ち着いたようで、彼女のお腹が可愛らしく『くぅ』と鳴いた。顔を赤くする彼女の頭を一撫でして『それじゃ、ご飯にしようか』と告げる。
作ってから時間が経ってしまったためお粥が冷めてしまったが、魔法があるため問題はない。出来立て同様にまで温めなおす。
「あの、これは?」
「お粥、っていう料理だよ」
この世界に米は存在しないためお粥を知っているのは俺一人である。
「熱いから注意して食べるんだよ」
「うん!」
危うく『熱いから火傷しないように』と言いそうになった。多分『火傷』はNGワードだろうから気をつけなくては。
シャルはふー、ふー、と息を吹きかけてスプーンを口へと運ぶ。そしてそれを飲み込むと目を大きく見開き二口目を口に運んだ。他人に食わせたことがないため口に合うか不安だったが、この様子だと杞憂だったとわかる。
「美味しいです!」
「うん、良かった」
それから何度も『美味しい、美味しい』と言いながら、ポロポロと涙を零しながらお粥を食べる。まともな飯を食べさせてもらえなかったんだろうなあ。
食事を終えたため出来れば風呂に入れてやりたかったが、シャルの心身の疲れを考慮して早めに休ませることにした。
シャルを寝室へと連れていき俺のベッドへと寝かせるが、彼女はそれに異議を唱えた。
「あの、魔法使い様、私は床で寝ても平気です」
「駄目だ。子供はちゃんとベッドで寝なさい」
「でも……」
「シャルちゃんはもう奴隷じゃないんだ」
『奴隷ではない』という言葉を聞いて彼女は『あっ』という顔をすると涙ぐむ。
「風邪を引かないようにちゃんとベッドで寝るんだよ?」
「はい……」
「それじゃあ、俺はちょっと用事があるから先に寝るんだよ?」
「わかりました……」
「それじゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい」
やはり相当に疲れていたのであろう、しばらくすると彼女は完全に眠ってしまった。恐らく、少しばかり音が聞こえてきた程度では起きたりしないだろう。
それじゃあとってもとっても怖い魔法使いは用事を済ませるとしましょうか。
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