ダークフォビア ~世界終焉奇譚
愛は拳よりも強し
目を瞑った。苦しみが和らぐ訳ではないにしても、せめてあの汚らわしい物体を見なければ……と。勿論、あの物体が何処に突っ込まれるかなんて承知しているが、それでも繋がっている瞬間を見ようとは思わない。目隠しがあるから瞑る意味は無いとも思われるが、これは気分的な問題なのと、あちらから外された場合にどうしようもないので、やはり瞑らせてもらう。そうでもしないと、気持ち悪すぎて吐いてしまいそうだから。
助けが来る筈もないこの場所で、リアはそんな決意を固めていたのだが、どうした事だろう。いつまで経っても気色悪い感触が体に触れない。
恐る恐る目を開くと、リアの目の前には一面の銀世界が広がっていた。ここは室内だと思っていたのだが、いつから永久凍土の特性を獲得したのか。何処からともなく舞い込んでくる吹雪に晒されて、こちらの体温も奪われる。服を着ている自分ですら末端の感覚が無くなった様な感覚を覚えているのだ。然るべき事実として、局部丸出しの男達は、その場に崩れて動かなくなっていた。
「…………あ?」
目の前にあった最高峰の愉しみを横取りされた様な、間抜けな声が響いた。マグナスもこの状況には理解を示しかねている様で、どれだけ時間が経っても何が起こったのかお互いに理解出来なかった。闘技場が実は欠陥構築だった、とかであれば話は分からなくも……いやいや。しかし、それだと意識を失っている間に冬が到来していた事になる。まさかそんな筈はあるまい。幾ら何でも眠り過ぎだ。
どうするべきかを悩んでいると、不意に手足の束縛が消失し、自由になった。遅まきながら気付いたが、目隠しは何処へ? 肌に触れていた筈なのに、霞の様に消え去ってしまった。
振り返れば、そこに答えがあった。
「リア、大丈夫?」
「お、お―――」
何故ここに居る。いや―――
どうしてここが分かった?
「お姉ちゃん!」
ミコトだった。その特徴的な服装は期間を経ても鮮明に思い出せる。シュタイン・クロイツを倒し終わった頃に、『闇衲』によって追い出されてしまった女性だ。自分は彼の扱い方をよく知る彼女の事を『お姉ちゃん』と呼ばせてもらっている。
「な、何でここに居るの?」
「何でって……アンタが呼んだんでしょ。その首飾りでさ」
「首飾り…………これの事?」
相変わらずの不愛想な顔付のまま、ミコトが頷いた。
「そう。それは私がアイツにあげた物。もしも危なくなった時、いつでも助けに来れるようにね。まさかこんな使われ方をされるとは思っていなかったけど、リア。状況を説明してもらえるかしら―――っと、ごめんなさい。ここでそれをすると、手足が凍死してしまいそうね。寒い?」
「うん……お姉ちゃん。抱っこしてッ」
「別にいいわよ」
大きく手を広げて受けの姿勢を取ると、ミコトの手がリアの脇の下から通り、軽々と矮躯が持ち上げられる。するとどうだろう、今まで無くなっていた末端の感覚がたちどころに元に戻り、直前まで感じていた恐怖心すら取り除かれていた。
「あんまり上手くないけど、そこは容赦して欲しいわね」
「ううん。すっごく温かい!」
特に胸。何よりもこの突き出した胸が温かい。彼女のスタイルの関係上、しっかりと抱き留められるにはこちらも彼女の背中に手を回して密着しなければならないのだが、そうするとどうしても、リアの顔は服の上からでも分かる彼女の巨乳に埋められてしまう。
同性同士だから気にする事もあるまいと安心する事無かれ、こうしていると、リアにはまた別の感情が芽生えてきた。それは彼女に対する殺意でも、感謝でも無く。自分自身に対する絶望だ。果たして自分の身体はここまで実りあるものに成長するのだろうか。
彼が巨乳好きなのは純然たる事実として、そうなると自分は、ミコト以上に大きくならなければ彼の好みに入らないという事ではないか。それは嫌だった。彼には自分だけを見て欲しいのに、ミコトの胸に敵う気がしない。所謂グラマラスな体型だが、こんなのに勝てる様な奴が居たら最早それは怪物の領域である。
悔しいのは間違いないが、そういうジェラシーを抜きにするとこの状態は非常に心地よい。なのでリアは、もっと顔をきつく埋めたくなるのだった。
「………………ぶはあ! はあ……はあ!」
息が出来なかったので、直ぐにやめる。丁度そこでリアは連れてきたメンバーの事を想い出し、周囲を見渡した。
……居ない。
「どうかしたの?」
「お姉ちゃん! 多分ここに囚われてるの、私だけじゃない! シルビアも居るし、他の人だって……!」
「……ああ。だったら安心して良いわよ」
「え?」
ミコトが腕を掲げて、何処とも知れぬ虚空に向けて指を鳴らした。その直後。
暖炉に投げ入れられた紙の如く景色が燃え盛り、裏側にあったもう一つの現実を引っ張り出される。驚いたのも束の間、リアは自分が、マグナスの鎮座する玉座の前から一歩も動いていない事を知った。傍らには、同じ様に状況の理解出来ていないシルビアが居る。先程と状況は何も変化していなかった。マグナスの傍らにはあの女性と『闇衲』。変わったのはミコトの存在の有無だけだった。 些細な変化ではあるものの、人が一人居ると居ないとでは話が違う。マグナスも暫く唖然としていた。
「だ…………誰だ、てめえ」
「どうでもいいでしょ。それでリア。改めて状況説明をお願いしたいんだけど」
状況説明と言われて複雑な言葉を使って適当な文章を作り上げられる程、リアに学は無い。自虐染みているが、別にそんな事をせずとも、適当な説明なんて指一本で十分なのだから。
「あの女が、私のパパを攫ったの!」
子供の特権、指差しである。幼い子供は言葉が拙いので、状況説明に良く指を用いるが、『闇衲』の娘ことリアは、齢にして十五未満の幼子だ。子供の特権を行使しても文句は言われない。ミコトは自分にとって数少ない『家族』だ。他人に対しては失礼でも、彼女に対しては何ら失礼に当たらない。
果たしてこちらの思惑は正しかった。それだけの言葉で、ミコトは全ての事情を察し、マグナスを睨みつける。
「……そういう事。事情はよく分かったわ。リア。アイツを一発ぶん殴りたいんだけど、代わりに殴っちゃっていいかしら」
「いいけど……でも今、パパが洗脳されちゃってるよ? 大丈夫?」
リアの身体が下ろされる。ミコトは片足を引いて深く腰を落とすと、そのまま両拳を握り込み、マグナスへ向けて照準した。解き放たれた覇気はマグナスの持つ威圧を軽く塗り替える強烈さを誇るが、その攻撃が当たらない事をリアは知っていた。刻創咒天は時間を自由自在に動かす魔術だ。それを超える速度など人間には引き出せない。止めようとしないのは、速度では論外でも威力で強引に当てられる可能性があるからだ。
「今からアンタの顔を狙う。きちんと避けなさいよ」
「……はッ! 女如きがフォビアやコウを突破出来ると思ってんのか? どうやって来たか知らねえが、強い言葉を使う奴程、俺の足元にも及ばねえ弱者だったりするんだよなあ!」
「…………そう。だったら都合が良いわね」
ミコトは挑発に乗る事もなく冷静に。虚空に拳を滑らせて、一撃を突き放った。
「弱者の側から強者を甚振れるなんて、この上ない下剋上じゃない」
刹那、彼女の全身が霞んだと同時にマグナスの顔面が玉座の背中にめり込み、背後の壁が木っ端微塵に崩壊した。女幹部の方は立ち尽くしたまま、今しがた起きた出来事を遅れながら把握に努めている。唯一反応出来たのは『闇衲』だけだったが、彼に向けての攻撃ではない以上、反応出来たとしてもする事が無かった。
想像以上の破壊力にリアも呆然としてしまう。『闇衲』と仲が良い人物は馬鹿力でないといけないのだろうか。あまりにも非現実的な光景は、リアから一時的に殺意という名の牙を抜き去っていた。
「凄い……」
「有難う。ああ、安心してくれて良いわよ。加減しておいたからあの女は死んでない。アイツを倒すのは『娘』であるリア、アンタの役目だから。『闇衲』を奪われた借りを返さなきゃね」
「た、確かにそのつもりだったけど。パパはッ?」
「本気のアイツを相手に出来るとしたら私くらいなものよ。まあ本気と言っても、真の意味で本気という訳じゃないし、大して苦戦もしないでしょう。適当に終わったら、手を貸す事も吝かじゃないわ」
「……殺さないよね?」
あれだけの破壊力ある一撃を目撃してしまうと、不安になってしまう。これだけの威力が叩きだせるのなら、彼女であればうっかり殺してしまったとしても何ら不思議はないのだ。その危惧に欠片の冗談も無いと察したミコトは、不器用に微笑んで、リアの頭を撫でる。
「当たり前でしょ。私はアイツの事が大好きなんだから。女性でも男性でも、好きな人をこの手で殺すなんて、よっぽど歪んでなきゃやらないわよ」
「……信じていいの?」
「お姉ちゃんに任せなさい」
最後に頭を二回、ポンポンと叩き、ミコトは『闇衲』の目前に歩み出した。その背中を見た時、リアは自分がしなければならない事について思考を巡らせ、帰結。その為にも立ち上がった。
「シルビア、立てる?」
「…………リア?」
「パパの事はお姉ちゃんに任せるから、私達であの売女共を殺しましょう?」
子供の手に負えない事は、大人に任せればいい。そんな単純な事なのに、リアは今の今まで忘れていた。『娘』とは無力な存在であり、か弱い存在であり……守られるべき存在なのだと。そんな自分が一人で何もかも背負い込んで、傷つく必要なんて何処にもない。
任せられるのなら。
協力してくれるのなら。
それに頼ればいいだけの話。只それだけの話。リアは服の内側からナイフを取り出し、今―――奴隷王の前に立ちはだかる。
「……決着をつけましょうか。奴隷王マグナス」
助けが来る筈もないこの場所で、リアはそんな決意を固めていたのだが、どうした事だろう。いつまで経っても気色悪い感触が体に触れない。
恐る恐る目を開くと、リアの目の前には一面の銀世界が広がっていた。ここは室内だと思っていたのだが、いつから永久凍土の特性を獲得したのか。何処からともなく舞い込んでくる吹雪に晒されて、こちらの体温も奪われる。服を着ている自分ですら末端の感覚が無くなった様な感覚を覚えているのだ。然るべき事実として、局部丸出しの男達は、その場に崩れて動かなくなっていた。
「…………あ?」
目の前にあった最高峰の愉しみを横取りされた様な、間抜けな声が響いた。マグナスもこの状況には理解を示しかねている様で、どれだけ時間が経っても何が起こったのかお互いに理解出来なかった。闘技場が実は欠陥構築だった、とかであれば話は分からなくも……いやいや。しかし、それだと意識を失っている間に冬が到来していた事になる。まさかそんな筈はあるまい。幾ら何でも眠り過ぎだ。
どうするべきかを悩んでいると、不意に手足の束縛が消失し、自由になった。遅まきながら気付いたが、目隠しは何処へ? 肌に触れていた筈なのに、霞の様に消え去ってしまった。
振り返れば、そこに答えがあった。
「リア、大丈夫?」
「お、お―――」
何故ここに居る。いや―――
どうしてここが分かった?
「お姉ちゃん!」
ミコトだった。その特徴的な服装は期間を経ても鮮明に思い出せる。シュタイン・クロイツを倒し終わった頃に、『闇衲』によって追い出されてしまった女性だ。自分は彼の扱い方をよく知る彼女の事を『お姉ちゃん』と呼ばせてもらっている。
「な、何でここに居るの?」
「何でって……アンタが呼んだんでしょ。その首飾りでさ」
「首飾り…………これの事?」
相変わらずの不愛想な顔付のまま、ミコトが頷いた。
「そう。それは私がアイツにあげた物。もしも危なくなった時、いつでも助けに来れるようにね。まさかこんな使われ方をされるとは思っていなかったけど、リア。状況を説明してもらえるかしら―――っと、ごめんなさい。ここでそれをすると、手足が凍死してしまいそうね。寒い?」
「うん……お姉ちゃん。抱っこしてッ」
「別にいいわよ」
大きく手を広げて受けの姿勢を取ると、ミコトの手がリアの脇の下から通り、軽々と矮躯が持ち上げられる。するとどうだろう、今まで無くなっていた末端の感覚がたちどころに元に戻り、直前まで感じていた恐怖心すら取り除かれていた。
「あんまり上手くないけど、そこは容赦して欲しいわね」
「ううん。すっごく温かい!」
特に胸。何よりもこの突き出した胸が温かい。彼女のスタイルの関係上、しっかりと抱き留められるにはこちらも彼女の背中に手を回して密着しなければならないのだが、そうするとどうしても、リアの顔は服の上からでも分かる彼女の巨乳に埋められてしまう。
同性同士だから気にする事もあるまいと安心する事無かれ、こうしていると、リアにはまた別の感情が芽生えてきた。それは彼女に対する殺意でも、感謝でも無く。自分自身に対する絶望だ。果たして自分の身体はここまで実りあるものに成長するのだろうか。
彼が巨乳好きなのは純然たる事実として、そうなると自分は、ミコト以上に大きくならなければ彼の好みに入らないという事ではないか。それは嫌だった。彼には自分だけを見て欲しいのに、ミコトの胸に敵う気がしない。所謂グラマラスな体型だが、こんなのに勝てる様な奴が居たら最早それは怪物の領域である。
悔しいのは間違いないが、そういうジェラシーを抜きにするとこの状態は非常に心地よい。なのでリアは、もっと顔をきつく埋めたくなるのだった。
「………………ぶはあ! はあ……はあ!」
息が出来なかったので、直ぐにやめる。丁度そこでリアは連れてきたメンバーの事を想い出し、周囲を見渡した。
……居ない。
「どうかしたの?」
「お姉ちゃん! 多分ここに囚われてるの、私だけじゃない! シルビアも居るし、他の人だって……!」
「……ああ。だったら安心して良いわよ」
「え?」
ミコトが腕を掲げて、何処とも知れぬ虚空に向けて指を鳴らした。その直後。
暖炉に投げ入れられた紙の如く景色が燃え盛り、裏側にあったもう一つの現実を引っ張り出される。驚いたのも束の間、リアは自分が、マグナスの鎮座する玉座の前から一歩も動いていない事を知った。傍らには、同じ様に状況の理解出来ていないシルビアが居る。先程と状況は何も変化していなかった。マグナスの傍らにはあの女性と『闇衲』。変わったのはミコトの存在の有無だけだった。 些細な変化ではあるものの、人が一人居ると居ないとでは話が違う。マグナスも暫く唖然としていた。
「だ…………誰だ、てめえ」
「どうでもいいでしょ。それでリア。改めて状況説明をお願いしたいんだけど」
状況説明と言われて複雑な言葉を使って適当な文章を作り上げられる程、リアに学は無い。自虐染みているが、別にそんな事をせずとも、適当な説明なんて指一本で十分なのだから。
「あの女が、私のパパを攫ったの!」
子供の特権、指差しである。幼い子供は言葉が拙いので、状況説明に良く指を用いるが、『闇衲』の娘ことリアは、齢にして十五未満の幼子だ。子供の特権を行使しても文句は言われない。ミコトは自分にとって数少ない『家族』だ。他人に対しては失礼でも、彼女に対しては何ら失礼に当たらない。
果たしてこちらの思惑は正しかった。それだけの言葉で、ミコトは全ての事情を察し、マグナスを睨みつける。
「……そういう事。事情はよく分かったわ。リア。アイツを一発ぶん殴りたいんだけど、代わりに殴っちゃっていいかしら」
「いいけど……でも今、パパが洗脳されちゃってるよ? 大丈夫?」
リアの身体が下ろされる。ミコトは片足を引いて深く腰を落とすと、そのまま両拳を握り込み、マグナスへ向けて照準した。解き放たれた覇気はマグナスの持つ威圧を軽く塗り替える強烈さを誇るが、その攻撃が当たらない事をリアは知っていた。刻創咒天は時間を自由自在に動かす魔術だ。それを超える速度など人間には引き出せない。止めようとしないのは、速度では論外でも威力で強引に当てられる可能性があるからだ。
「今からアンタの顔を狙う。きちんと避けなさいよ」
「……はッ! 女如きがフォビアやコウを突破出来ると思ってんのか? どうやって来たか知らねえが、強い言葉を使う奴程、俺の足元にも及ばねえ弱者だったりするんだよなあ!」
「…………そう。だったら都合が良いわね」
ミコトは挑発に乗る事もなく冷静に。虚空に拳を滑らせて、一撃を突き放った。
「弱者の側から強者を甚振れるなんて、この上ない下剋上じゃない」
刹那、彼女の全身が霞んだと同時にマグナスの顔面が玉座の背中にめり込み、背後の壁が木っ端微塵に崩壊した。女幹部の方は立ち尽くしたまま、今しがた起きた出来事を遅れながら把握に努めている。唯一反応出来たのは『闇衲』だけだったが、彼に向けての攻撃ではない以上、反応出来たとしてもする事が無かった。
想像以上の破壊力にリアも呆然としてしまう。『闇衲』と仲が良い人物は馬鹿力でないといけないのだろうか。あまりにも非現実的な光景は、リアから一時的に殺意という名の牙を抜き去っていた。
「凄い……」
「有難う。ああ、安心してくれて良いわよ。加減しておいたからあの女は死んでない。アイツを倒すのは『娘』であるリア、アンタの役目だから。『闇衲』を奪われた借りを返さなきゃね」
「た、確かにそのつもりだったけど。パパはッ?」
「本気のアイツを相手に出来るとしたら私くらいなものよ。まあ本気と言っても、真の意味で本気という訳じゃないし、大して苦戦もしないでしょう。適当に終わったら、手を貸す事も吝かじゃないわ」
「……殺さないよね?」
あれだけの破壊力ある一撃を目撃してしまうと、不安になってしまう。これだけの威力が叩きだせるのなら、彼女であればうっかり殺してしまったとしても何ら不思議はないのだ。その危惧に欠片の冗談も無いと察したミコトは、不器用に微笑んで、リアの頭を撫でる。
「当たり前でしょ。私はアイツの事が大好きなんだから。女性でも男性でも、好きな人をこの手で殺すなんて、よっぽど歪んでなきゃやらないわよ」
「……信じていいの?」
「お姉ちゃんに任せなさい」
最後に頭を二回、ポンポンと叩き、ミコトは『闇衲』の目前に歩み出した。その背中を見た時、リアは自分がしなければならない事について思考を巡らせ、帰結。その為にも立ち上がった。
「シルビア、立てる?」
「…………リア?」
「パパの事はお姉ちゃんに任せるから、私達であの売女共を殺しましょう?」
子供の手に負えない事は、大人に任せればいい。そんな単純な事なのに、リアは今の今まで忘れていた。『娘』とは無力な存在であり、か弱い存在であり……守られるべき存在なのだと。そんな自分が一人で何もかも背負い込んで、傷つく必要なんて何処にもない。
任せられるのなら。
協力してくれるのなら。
それに頼ればいいだけの話。只それだけの話。リアは服の内側からナイフを取り出し、今―――奴隷王の前に立ちはだかる。
「……決着をつけましょうか。奴隷王マグナス」
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